第11回 続・誠意と奇跡
取材に関する忘れられない出来事をもう1つだけ🙏
『伊勢物語誕生』を執筆中の2007年辺り、私は物語に登場する場所を1つずつ訪ねていました。
その中に安祥寺(あんしょうじ)という在原業平が法要をした寺があるのですが、何故かずっと閉門しています。
津島佑子さんという太宰治氏の娘さんで作家の方が訪ねた折、70くらいの女の方に門前払いをされた事が彼女の著書に載っています。
ある春の平日に休みが取れたので私は家内と遅いけれど醍醐の桜を見に行きました。するとすぐ近くに安祥寺があります。
私は門を見る積りだけだったのですが、黒い門の前に立ち、白いベルを見ると、ダメ元で押してみました。
中から70くらいの女の人が出てきて、ああこの人だなと思いました。
女の方は不機嫌そうに、何のご用ですか?と聞きます。私は、少し中を見せて頂きたくてと言うと、どちらからお見えですか?と聞きます。
私は、兵庫県からですと言って、しまった!と思いました!バカ正直にそんな近い所を言ってしまって、もうダメだ!と思って目を伏せました。
しばらくして、少しお待ち下さいと彼女は言います。木戸が半開きだったので、中を少し見るとやはり70くらいの男の人が弁当を食べてて相談しています。
やがて彼女は戻って来て、先程とは全く違うにこやかな表情で、「どうぞ」と言うのです。(この話続く)