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第155回 後白河法皇の院宣

馬を時々休ませながらも疾駆させ、文覚は3日で福原新都に着きました。そして遠縁の藤原光能(みつよし)という7つ年上の男の邸を捜し当てました。光能は後白河院の近臣をしています。光能は久しぶりに会う煤けた文覚に驚きながらも秘事をうちあけられると今度は光能の方が高陽してきました。
「わしとて平家のためにこの度、官位をすべて剥奪され、無官の身となった。法皇様とて籠の御所にお閉じ込めじゃ。しかし法皇様はきっと平家追討の院宣を下されるであろう。待っておれ」
夕刻ながら、光能は法皇が軟禁されている海の近くの御所に向かいました。
「嵐がくれば危ない所ではないか。自分らは高台におって」
光能は院の近臣なので警護の者も入れてくれました。
光能はひそひそ声で法皇に奏上しました。
「何、平治の乱のあの頼朝か」
姉の上西門院に仕える頭の大きな美少年を法皇は思い出しました。
「あらから二十年か。今度は頼朝が朕を助けてくれるのじゃな。して誰が伊豆まで届けてくれるのじゃ?」
「文覚でございます」
「文覚?これはまた面白きこと!」
法皇は、かつて今様を聴いていたのに寺の援助をしつこく奏上してきた文覚を、邪魔したとして流罪にした事を思い出しました。(続く)

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