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第73回 信頼の処刑

信頼は身を窶(やつ)して平民の様にし、仁和寺にいる後白河上皇の元へ忍んでいきました。
「上皇様!」信頼は眉目秀麗の顔で、寝所の時の様に甘えて見せました。
「上皇様のお力で私めの命だけはお救いを・・・またお尽くししますゆえ・・・」この言葉に後白河上皇は心が動きました。

しかし隠しおおせる筈もなく、やがて信頼は平家軍に引き渡されました。
後白河上皇は寵臣の命乞いに出ました。家貞が清盛に進言しました。
「決して許してはなりませんよ。殿は情に脆(もろ)いところがおありになりますので・・・」
「分かった」と清盛は言い、上皇に「だめでございます」と拒否する使いを送ると、上皇はあっさりと引き下がりました。
二条天皇側近の経宗や惟方も、自分らが信西降ろしのために信頼を利用した事が分かると後々まずいため、信頼死刑を勧めました。口封じでした。
こうして信頼は、信西の死から半月で、自らも処刑される事になったのです。

しかし六条河原で信頼は縄で縛られながらも泣き叫び走り回りました。
「信頼殿、観念されよ」体を押さえられても首を動かしもがきました。
「仕方ない、頭を押えよ」屈強な武士が信頼の頭を押えて髻(もとどり)をつかみ、もう一人の武士がごしごしと首を斬り落とし始めました。(これは『平治物語絵巻』に描かれています)
「ぎゃあ・・・」27歳の信頼の絶叫が聞えたのでした。(続く)

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