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第29回 再び1938年12月19日。
ベルリン郊外の実験室で、オットー・ハーンはひと月前の楽しかったリーゼとの再会を思い出して、
「今も一緒だったら、この発見を喜べたのに」としみじみ思いました。ウランに中性子を投下したら変化したのです。しかしハーンは解せませんでした。
「だけど分からない事がある。なぜ重いウランが変化して軽いバリウムになるのだろう?」
中性子を吸収したウランは更に重くなる筈でした。それが軽いバリウムが検出されたのです。更に別の軽い元素もあるようでした。(後日、それはクリプトンと判明しました)ハーンが呟くと、側にいたシュトラウスマンが、
「いつもの様にマイトナー先生にお聞きになったら?きっと的確な判断をして下さいますよ!」
若いシュトラウスマンは、数年前、ドイツ人ではあるけれど反ナチの態度を取って失職し、ハーンとリーゼのグループに入れてくれたのです。しかし3人の中で実際はいつもリーダーはリーゼ・マイトナーでした。今回のウランの研究もリーゼが先に提案した事でした。
「そうだな」と言って、ハーンは早速、クリスマス前後はストックホルム郊外のクングエルブにいるというリーゼに実験の過程を手紙に書いて送りました。(続く)