
新薬導入のジレンマ!?英国における医療費配分の見えざる代償
公的な医療制度は、新薬のコスト(薬剤費用)をどのように負担するかという意味で、常に難しい選択を迫られています。
英国においては、国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence:NICE)によって新薬の導入が推奨されます。新薬導入の推奨がなされると、新しい治療薬の恩恵を受ける患者が増える一方で、新薬に対する医療支出が増大し、他の医療サービスに対する予算の割り当てが減少します。
新薬の導入における機会費用のは、限られた医療資源を再配分することに他なりません。
NICEは、新薬の費用対効果を分析し、公衆衛生にもたらす影響を評価する役割を担っています。しかし、新薬の費用対効果は、単に薬そのものの効果だけでなく、他の医療サービスに対する機会費用も考慮する必要があります。
むろん、日本においても、高額な新薬が承認されることになれば、医療費の高騰は避けられず、限られた医療財源を前提とするのであれば、他の医療サービスの保険給付をやめるか、あるいは医療従事者の報酬を減らすしかありません。
今回の記事では、新薬の導入に関するNICEの推奨が、英国の公衆衛生にどのような影響を及ぼしたのかを検討した最新の研究を整理します。また、新薬の導入に伴う医療費増加と、医療費増加によって失われた健康上の利益、すなわち機会費用について考察します。
持続的に高騰する新薬の薬剤コスト
ここから先は
4,178字
/
5画像
この記事のみ
¥
300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?