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猫と坂、そして文学と映画と……。

 小学生のころ、図書館で働く人のお給料が、いったいどこから出ているのか不思議だった。図書館は本を売るわけではないし、貸し出す本も全て無料だったから、それはとても不思議なことだった。

 小学校の高学年、いつだったか忘れたけれど、公務員という概念を知った。図書館で働く人も公務員というんだ……って思った。だから、僕は小学校の卒業文集で、「将来の夢」に公務員と書いた。

 公務員にどんな夢を抱いていたか知らないが、なんとなく公務員という言葉を使いたかったんだろうって、そう思う。そんな卒業文集だったが、小学校2年生の時に転校してきた子の文章が、あまりにも秀逸だったのことを覚えている。

 そこには、こんなことが書いてあった。低学年のころ、姉と喧嘩を良くした。高学年のころ、転校生だと言ったら、周りに驚かれた。イカそうめんが食べられるようになった。

 そんな内容だった。むろん、原稿用紙1枚分のボリュームだったはずなので、こんな短文の羅列ではない。現在と過去がグルグルまわるような描写に僕はめまいがした。

 過去と現在が交錯する街、広島。訪れたのは1年ぶりだった。きっと、誰もが多かれ少なかれアドルフ・アイヒマンだった時代の名残。

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 いつもお世話になっている友人に尾道を案内していただいた。尾道は、写真を始めた頃から、いつか行ってみたいと思っていた憧れの地でもあった。

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 尾道水道っていうんだ。これは川のようで川でない。本州と向島を隔てる……それは海峡のようなもの。列車は海沿い付近を走る。市街はそのまま山の斜面に連なり、猫と坂、そして文学と映画と……。いったいどこに繋がっているのかなって、想像すると子どもの頃を思い出す。

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 そういえば、イカそうめんが食べられるようになったあの子は、転校の初日から僕の隣の机だった。住んでいた家も、僕の実家から歩いて1分くらいの距離だったから、しばらくは一緒に帰っていた。僕の実家がある東京の板橋区は坂道が多い。尾道ほどじゃないけれど。

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 ところどころに垣間見る古の風景。どんなことを願い、何を思ってこの地を訪れるのだろうなんて考えながら風景を切り取ってみる。

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 結局、ねこに会うことはできなかったけれど、きっとどこかのひだまりで、路地裏を歩く僕たちを眺めていたに違いない。

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 小学生の頃と決定的に異なるのは、イカそうめんではなく、ビールが飲めるということ。心温まる素敵な時間をありがとう。

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