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東京ラヂエーター製造(7235)2024年3月期決算:簡易レビュー

 東京ラヂエーター製造(7235)2024年3月期決算を発表しました。連結業績は、売上高334億円営業利益14億円(営業利益率4.2%)経常利益15億円当期純利益17億円です。
 同日に発表された2025年3月期の連結業績予想によれば、売上高予想330億円(1.2%減)営業利益14億円(0.2%減)経常利益15億円(3.2%減)当期純利益11億円(34.6%減)でした。

 2024年3月期決算は、業績が文字通りV字回復でしたね。一方、来期の見通しは当期純利益で34.6%減となっており、直観的には厳しい業績予想です。ただし、2023年3月期の経営成績には経常利益と当期純利益の乖離に注意が必要です。
 
 24年3月期の経営成績において、各段階利益の状況に違和感はありませんか?営業利益よりも経常利益が大きくさらに当期純利益の方が大きいのです。為替の影響もあるかもしれませんが、経常利益と当期純利益と乖離は説明がつきませんよね。

損益計算書を見てみますと、経常利益と当期純利益の乖離は、主に以下の要因がもたらしています。

❶特別利益:受取補償金3億4千万
❷特別利益:投資有価証券売却益8千万
❸法人税等調整額:3億4千万

 前期は特別クレーム損失が9億2千万円計上されており、これが収益を大きく圧迫していましたね。当期は特別クレーム損失がない分、前期と比べて利益額が増加、固定資産の除却損はあれど、特別利益で3億5千万円、さらに法人税調整額3億4千万円が当期純利益を押し上げています。
 
 東京ラヂエーター製造は、前期が大幅な赤字であり、多額の繰越欠損金が発生したと考えられること、繰延税金資産が5700万円から6600万円に増加しており、税金の前払が発生していることなどの理由から、法人税の減額が発生したと推測されます。
 
 つまり、2024年3月期の当期純利益は特殊要因に起因しており、2025年3月期からは法人税の減額が発生せず、特別利益の影響も小さいと予測されます。それゆえ、2025年3月期の会社予想を評価する上では経常利益が重要であり、当期純利益を比較すべきではありません。基本的には業績は横ばいであると考えられます。
 
 東京ラヂエーター製造のPERは6倍以下であり、利益成長は株価に織り込まれていません。。その意味では次期の利益予想は横ばいですから、本来的には株価水準は是正されても良いように思います。また、2025年3月期は3円の増配も発表しており、配当利回りの観点からも株価の上昇余地はあるように思います。
 
 一方、東京ラヂエーター製造の株価パフォーマンスに大きな影響を与えているのがマレリホールディングスの存在です。同社は東京地裁へ民事再生法の適用を申請しており、事業再建の只中にあります。そして、東京ラヂエーター製造は、かつてマレリの子会社だったのです。
 
 マレリによる事業再建の過程で、東京ラヂエーター製造の株式は売却され続けており、保有割合が40%を超えていた2023年2月から、2024年4月には8%まで低下しています
むろん、東京ラヂエーター製造の株価が上昇すれば、マレリによる株式売却の圧力が強まると推測され、株価上昇が抑えられてきたのかもしれません(勝手な予測ですけど)。
 ただ、マレリが保有する東京ラヂエーター製造の株式も残り8%です。売却が完全に完了すれば、株価上昇の余地も生まれるのではないか、などと楽観的に考えています。

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