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【コラム】なぜ5%?統計学的仮説検定における有意水準について

 先日、EBMの研修会で、論文結果に示されている統計指標の解釈について質問を頂きました。この研修会で取り上げたテーマ論文は「Circulation. 2024 Jun 14. Online ahead of print. PMID: 38873793」です。
 
 この論文は、心臓病に対するn-3系不飽和脂肪酸(イコサペント酸エチル製剤)の有効性を検証するために実施されたランダム化比較試験の結果を報告したものです。
 心臓病の経験がある日本人2506人が対象となりました。被験者は、標準的な治療に加えてイコサペント酸エチル(1800㎎/日)を投与する群と、標準的な治療のみを実施する群にランダム化され、心臓病の発症リスクが比較されています。
 
 中央値で5.0年にわたる追跡調査の結果、一次アウトカムの発症はイコサペント酸エチルを投与した群で9.1%、標準的な治療を実施した群で12.6%であり、両群で統計学的に有意な差を認めませんでした(ハザード比0.79[95%信頼区間0.62〜1.00])
 
 頂いた質問の内容は、「95%信頼区間の上限は1.00となっているけれども、仮に心臓病の発症者が標準的な治療を実施した群で数人多かったら、統計学的に有意な差は出そうな気がする……。95%信頼区間が1という状態を、有意な差がないと解釈して良いのでしょうか。偶然の影響で1を下回ることは十分にあり得ると思うのですが……」というようなものでした。
 
 統計学的有意や95%信頼区間については、過去の【コラム】で解説しています。今回の【コラム】では、有意水準が5%に設定される理由や、95%信頼区間と偶然の影響との関連性を解説します。

【参考】エビデンスにおける統計情報の読み方・考え方【後編】-統計学的有意とはどういうことか?

【参考】【コラム】エビデンスに示されている統計指標を使いこなす!-95%信頼区間の意味と考え方

有意水準(P値)はなぜ5%なのか?

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