なんだか筋肉痛ぽいのですが、薬(スタチン)のせいですか?
スタチン系薬剤の重大な副作用として、横紋筋融解症やミオパチーは有名だと思います。初めてスタチン系薬剤が処方された患者に対して、「筋肉の痛み、手足に力が入らない、おしっこの色が濃くなる……などの症状が出ましたら、すぐに薬局か医療機関に連絡してくださいね」と、お話する機会は少なくないでしょう。
ただ、ここで少々厄介なのが副作用のプラセボ的な効果です。つまり、スタチン系薬剤による横紋筋融解症について情報提供を行うと、患者さんが副作用を心配するあまり、たとえプラセボのような薬理学的に不活性な成分を服用したとしても、筋肉痛様の症状を感じてしまうことがあるのです。こうした副作用におけるプラセボ効果的な何かをノセボ効果と呼びます。
実は、スタチン系薬剤の服用後に生じた筋肉関連障害の多くはノセボ効果である、という指摘が複数の文献報告でなされています【1】~【5】。今回はスタチン系薬剤の筋肉関連障害について、服薬説明に役立つエビデンスを紹介します。
ドラセボ効果!?
繰り返しになりますが、ノセボ効果とは有害事象が発生する不安からプラセボのような薬理学的に不活性な物質を服用していても、有害事象が発生してしまう効果のことを指します。つまり、プラセボ効果の有害事象バージョンのことです。
ノセボ効果の大きさを厳密に見積もるためには、プラセボ服用群と無治療群を比較したランダム化比較試験を実施し、有害事象の発生頻度を比べれば良いことになります。しかし、実際に行われる多くの臨床試験において、プラセボと無治療が比較されることはありません。したがって、既存の研究データからノセボ効果を厳密に見積もることは困難です。
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