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銀行の収支における金利上昇の影響
日銀の金融政策変更に伴う金利上昇は、銀行の収益性に大きな影響を与える可能性があります。ただし、その影響は銀行によって大きく異なる可能性があります。
また、日本経済の現状を見ると、人口減少や低金利環境の長期化などにより、銀行業界を取り巻く事業環境は厳しい状況が続いています。競争激化による収益性の圧迫や、資金需要の低迷など、構造的な課題もあるでしょう。そのような中で、僕が銀行株を全力で買い増したことは、前回の記事でご紹介した通りです。
今回の記事では、僕が保有している銀行株のうち、セブン銀行を除いた9行の決算資料から垣間見える政策金利上昇の影響について分析します。
以下は、各行の決算資料から、日銀の金融政策変更に関連した経営成績への影響に関する記述を抜粋したものです。
トモニHD:市場金利が0.1%上昇した場合の1年後の円貨貸出金利息増加額:+約24億円
しずおかFG: 政策金利:0.25%短期、プライムレート:+0.15%、国債10年利回り:0.8%円貨資金利益への影響;1年後の資金利益:+53億
コンコルディアFG: 2025年3月末に政策金利が0.50%に引き上げとなった場合:1年後の業務粗利益:+約170億円
千葉銀行:2024年7月 政策金利 0.25%:1年後のROE効果+0.48%
みずほFG: 日銀金融政策変更による想定影響:24年度 業務計画への影響額:
+450億円程度
三菱UFJFG:政策金利、市場金利: 一律+0.15%のパラレルシフト円金利上昇による年間影響額:+850億
北洋銀行:2025年3月期 期間収益への影響: 政策金利0.50% ■国債10年金利 1.20% ■市場金利(3ヶ月TIBOR) 0.70% (追随率70%) ■預金金利は市場金利上昇を踏まえた引き上げ:+31億円
ふくおかFG:円金利関連の資金利益影響額(年間)追加で政策金利が+10bps上昇した場合のシミュレーション;3年後の資金利益増加額 +70億円程度
山梨中央銀行:金利上昇によるトップラインへの影響;政策金利が50bp(25bp×2回)上昇した場合の資金利益増加額:年間約10億円
各行の資料において、シミュレーションセッティングや、経営指標が異なるため、一概に比較できませんけども、日銀の金融政策変更に伴う金利上昇は、銀行によって収益性が改善傾向が示唆されます。ただし、貸出と投資のポートフォリオ、ALM、コスト管理など、各行の経営戦略次第で金利上昇の影響は大きく変わってくると考えられます。
ふくおかFGでは、 金利上昇により調達コストが増加するものの、貸出金残高の積み上げと利回りの上昇により、預貸金利息は増加すると予想されています。 また、中長期金利の上昇を捉えた資金取引などにより、市場・ALM部門の収益も増加すると見込んでいます。
千葉銀行では、事業性貸出金利息は、市場金利の上昇に伴い増加すると試算しており、固定金利貸出については、固定期日到来前後の金利上昇への追随率が想定を上回ると見込んでいます。実際、市場連動貸出については、市場レートの上昇と連動して貸出金利が上昇しています。
一方、三菱UFJフィナンシャル・グループでは、アジア地域におけるリテール、日系・非日系取引、出資先事業の強化・拡充・効率化と成長投資を継続していく戦略であり、国内金利上昇の影響は限定的かもしれません。
決算資料において、収益性が改善する可能性が高い銀行としては、ふくおかFG、千葉銀行、山梨中央銀行、北洋銀行が挙げられます。これらの銀行は、金利上昇により資金の調達コストは増加するものの、貸出金利の上昇や債券投資の妙味向上により、全体としての収益性改善が期待できそうです。
三菱UFJフィナンシャル・グループ、静岡銀行、みずほフィナンシャルグループ、コンコルディア・フィナンシャルグループ、トモニホールディングスなどは、金利上昇による収益への影響が限定的な印象もあります。これらの銀行では、住宅ローンなどの固定金利資産の比率が高かったり、コストコントロールに注力していたりと、金利上昇の恩恵を受けにくい特性が垣間見えます。
銀行によってビジネス構造に差があり、端的な結論を導くことは困難ですが、貸出金と投資ポートフォリオ、ALM、コスト管理など、各行の経営戦略次第で金利上昇の影響は大きく変わってくると考えられます。