複数の研究を扱うこと:メタ分析とそのピットフォール
ある薬の有効性を検証するためには、一般的にランダム化比較試験が行われる。しかし、大規模な症例数を集めて徹底した盲検化を行い、しっかりと追跡をおこなった質の高い研究だったとしても、その結果のみで薬剤効果を決定づけることは難しい。
逆に言えば、介入によって著明な効果が明らかに期待できるのであれば、わざわざ大規模なランダム化比較試験など実施するまでもないということである。例えば、パラシュートの装着がもたらす死亡リスク低下効果のように。大規模臨床試験といえば、質の高いランダム化比較試験を連想させるが、それだけ大規模な症例を集めなければ検出できないほど小さな薬剤効果を検討していることに他ならない。この記事ではエゼチミブの有効性を例にあげメタ分析とそのピットフォールについて解説する。
無症候性大動脈弁狭窄症患者 1873 例を対象に心血管イベントを検討したエゼチミブのランダム化比較試験が2008年に報告されている。中央値で 52.2 ヵ月の追跡した結果、心血管イベントはシンバスタチン/エゼチミブ群と、プラセボ群との間に有意な差を認めなかった(ハザード比 1.00[95%信頼区間0.84~1.18])。統計的有意な差がないだけに、このランダム化比較試験の結果だけを眺めていても、エゼチミブの有効性は良く分からない。では他の研究ではどうなっているのだろうか。
エゼチミブのランダム化比較試験を時系列で追う
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