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薄利多売というビジネスモデルの限界(サワイグループホールディングス株式会社2024年3月期第1四半期 決算)

 2023年8月9日付で、サワイグループホールディングス株式会社の2024年3月期 第1四半期決算が発表されました。
 
 売上収益は52,989百万円と、前年同期比9.9%の増収でしたが、営業利益4,603百万円と前年同期比で4.5%の減収、税引前四半期利益4,613百万円で、前年同期比で4.2%の減収、親会社の所有者に帰属する四半期利益は3,518百万円で、前年同期比4.2%の減収となりました。

【図1】2024年3月期第1四半期の連結業績(2023年4月1日~2023年6月30日)(決算短信より)

 なお、上記経営成績について、決算短信では以下のようにコメントされています。

「2018年4月に通常の薬価改定、2019年10月には消費税率の引上げに伴う臨時の薬価改定、2020年4月に通常の薬価改定、2021年4月には初めてとなる中間年の薬価改定、2022年4月に通常の薬価改定、そして、2023年4月には中間年の薬価改定が実施され、昨今は毎年薬価改定が行われる状況となっており、当社グループを取り巻く収益環境は一層厳しいものとなっております」

 損益計算書から営業利益を計算すると、前年同期が10%だったのに対して、今期は8.7%と収益性が低下しています。またコア営業利益についても、169百万円の減益となっています【図2】。特に、米国事業の収益性が悪化しているようです。

【図2】コア営業利益の増減要因(2024年3月期第1四半期 決算説明資料

 ただ、日本事業だけをみても、評価損・廃棄損による738百万円の減販管費増による931百万円の減で、1684百万円の売上総利益増が相殺されている状態です。評価損は薬価改定による影響、販管費増は原料・エネルギー価格の高騰の影響が強いものと考えられ、この状況は長期的に継続するものと思われます。

 同社の売上総利益の増加ペースでは、評価損と販管費増による減益を回収しきれず、長期的な利益成長は望めません。売上高の増収は医療現場の旺盛な需要を考えれば必然ではありますが、営業利益の減益は薄利多売というビジネスモデルの限界を示唆しているように思います。端的には、製品価格(薬価)が安いということの傍証です。以下の記事も参考になりましたら幸いです。


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