ランダム化比較試験に関する試験データを再分析すると、研究結果が覆る!?
医学誌に投稿される論文(研究の成果)は、一定の倫理基準や規範的な行動指針に従わなければなりません。
世界の主要な医学雑誌の編集者によって構成される医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、1979年に「生物医学雑誌に対する統一投稿規定(Uniform Requirements for Manuscripts Submitted to Biomedical Journals)」というガイドラインを定めており、2013年には「ICMJE Recommendations」へと、その名称を変更ました (ICMJE.2024)。
ICMJEはまた、医学研究の透明性と信頼性を高めるために、臨床試験データの共有に関するステートメントを設定しています。このステートメントは、研究成果に対する再現性の向上や新しい知見の発見などを目的として策定されたものです。
このようなステートメントが策定された背景として、インフルエンザ感染症に対するオセルタミビルの有効性および安全性に対する懸念を挙げることができます。
オセルタミビルの効果については、製薬会社が臨床試験データの一部を公開していなかったため、利益相反のない独立した研究者による再現性の検証が困難になりました。
Doshiらは、製薬会社が自分たちにとって都合の良い研究データのみを選択的に公開している可能性を指摘しています(Doshi P, et al. 2012;PMID: 22505850)。
今回の記事では、オセルタミビルに関する臨床試験データの問題を整理したうえで、臨床試験データの再解析にもとづく研究結果の再現性、また臨床試験データの共有実態について、文献的な考察をしてみたいと思います。
オセルタミビルの臨床試験における研究データの透明性
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