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中国ロックへの愛

いきなりこんなことをいうのもどうかとおもうが、中国ロックが好きだ。
あのころのみんなはもう年老いて、巨大なステージで昔の歌をうたっているようだが、総体的に見れば、衰退しているもののようである。
いや、あのころは凄かった。あの「めざましテレビ」が、なぜか中国の奥地を取材しており、そこにある小学校の売店にリポーターが入っていた。そしてそこの壁に、小さな白黒の肖像画のようなものが貼ってあった。それをめざとくみつけたリポーターは、「あ、ここにアイドルのポスターが貼ってあります!」といった。カメラがズームアップすると、そこにはまぎれもなく、「朴樹」という文字が確認された。
「プー・シューだ! プー・シューだ!」
わたしはおもわず小さく叫んでいた。
「アイドル、か……」
当たらずといえども遠からずというだけで済まされないものがそこにはあった。
かれのデビューアルバムは、天才作編曲家のギタリスト、張亜東(チャン・ヤートン)がプロデュースし、またプレイもし、そしていまや三時間超えのドキュメンタリーもつくられ、音楽之神と称されるに至っている竇唯(ドウ・ウェイ)がドラムスを担当する曲もあるなど、極めて重要なものとなっているのである――フェイ・ウォン(王菲)も自分のライヴで歌っていたね。気があうわ――。
いや、当時の情況は、出てくる人間出てくる人間全員が、強烈な才能を持っているという、大変に特異なものであった。何故か。そしていまはどうか。これもやはり何かの予兆としてわたしたちには感じられるのではないだろうか。しかし、夢野久作が「狂人は笑う」で書いたように、中国人をなめてはならない。

(前略)……支那人の中には魔法使いみたような奴が多いのですからね。……(中略)面白い国だなあ支那という国は……。
アッハッハッハッハッハッハッ……。

さいごにひとつ書いておきたい。
あるとき、故キース・エマーソンが大阪に来ると新聞で見て、喜んで行ってきたのはよかったのだが、虫の知らせでネットをみたら、その翌日か翌々日かぐらいに、張亜東も大阪に来ていたということがわかったのである。フェイ・ウォンの初来日武道館公演以来じゃないのかと。ひどい。こんな重なり方ってありますか。初めてわたしが腹の底の底からリスペクトするギタリスト、張亜東。お互い年取ったなあ。

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山田守望
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