精霊流し 三連連唱歌の調べ[10](短調編)
[09] 精霊流し☆☆☆☆(さだまさし、グレープ)
歌い出しは、「氷雨」「想い出まくら」のパターンとは拍の偶奇が入れ替わった、弱拍拍頭単連唱。それを受ける後のフレーズは音価が倍に引き延ばされたいわゆる「二拍三連」となり、続くサビも主として「二拍三連」で通されるため、曲全体はなだらかで流麗に進みます。──だからでしょうか、昔の私には歌い出ししばらくが単位音価2個分を1拍とする3拍子のようにも聞こえ、迷って父に尋ねると、私の言う意味をすぐに理解した上で「…ほう、でもまあこれは三連符やろう」と答えが返ってきたのをよく覚えています。──そういう中、節目の3箇所にすっと差し込まれる「(テープレコー)ダーからこぼれています」「(こー)んやも一人で着ます」「(知ー)らずにはしゃぎまわって」の多連唱には思わず胸を揺すられませんか。愛する人を失ってこみ上げる悲しみを何とか抑えようと「早口」で吐露するかのようです。
さて、「三連連唱」という本稿の主題を脇に置いても「精霊流し」が日本歌謡史上屈指の名曲の一つであることは論を待たないでしょう。ヴァイオリンによる短い前奏が、沁みるような音の衣を纏って聞き手の耳から心に触れていく…。サビの「そしてあなたの」のシンプルな属七和音のアルペジオの上昇が、こんなにも美しさと悲しさを備えた旋律になろうとは…。この2つだけをとっても、さだまさし以外には成し得ない創作だと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=4QEgGwZRIK8
☆☆☆☆(拍頭連唱歌、切分連唱歌)
拍頭単連唱または拍頭複連唱を多く含むもの。
長さ10以上の連唱を含むもの。
切分連唱や切分準連唱を多く含むもの。
↑写真は採譜例です。「原譜」(があるとしてそれ)は不明なままの、あくまで一例です。歌なので本来は符尾を非連桁にすべきですし、拍子も採譜としての可能性の一つに過ぎません。また、適宜オクターブ単位で移動させている場合もあります。その辺りご了承下さい頂きたく…。
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