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【基盤のエラーの対処法】2020年J1リーグ第27節 鹿島アントラーズ×川崎フロンターレ

スタメン

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当日朝の一報で、遂に我が軍もコロナによって初の開催延期かと思われたけれど、クラブスタッフの方々の尽力によって無事にキックオフを迎えられた。
陽性が発覚した選手が少しでも早く回復し、日常に戻れますように。

鹿島は濃厚接触者含めて7名が欠場。
スクランブル状態でのキックオフとなったが、ベンチ含めて実力者ばかり。層が厚いチームである。

【前半:攻め切れずいなし切れず】 

キックオフ直後から鹿島はCB犬飼→左SB山本へのフィードで左サイドへ展開。川崎相手の定石である内に絞ってくるWG裏を突く動きを見せる。
また、空中戦に強い上田・エヴェラウドを目がけたロングボールを送るなど、鹿島は川崎にとって嫌なやり方で攻撃を仕掛けてきた。

しかし序盤は川崎が優勢。
川崎IHが対峙する鹿島CHを動かして、守備ブロック内に侵入する流れを作る。

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鹿島の2CHは川崎IHの動きに敏感に付いていく。
上図のようにIHが降りる際も寄せられる範囲まで出ていく為、鹿島の中盤にギャップが生まれる。そこにCFダミアンが入って起点を作ろうと試みる。

さぁ崩そう。とスイッチが入るところが、ライン間にパスが入った際はDFが飛び出して潰しに来る為、決定機には繋がらない。鹿島にとっては織り込み済みの事案。

とは言え、アンカーの田中から中央を割られるのは危険。前線の上田と土居は田中へのコースを消すことで川崎のボール回しをサイドへ誘導。
そこから始まるサイド攻撃は、左サイドを三笘・登里・憲剛の3人で突破する。

パスコースを消された田中がCBの間に降りて谷口・登里の立ち位置を押し上げる。谷口→三笘のコースを作り前進。内側で三笘と並走する憲剛がボールを流しつつ中を向いて逆サイドへ展開した5分のシーンは、憲剛のボールの受け方と受けた後のスピードが秀逸だった。

右サイドでは山根から降りるダミアンへの縦パスが何度か見られたが、上述の通りダミアンにはDFがラインを飛び出して対応される。特に左CBの奈良はダミアンを執拗にアプローチし、三竿もスライドして挟み込み封殺。
FC東京戦で機能したダミアンのポストプレーは抑え込まれてしまう。

ユニットによって優位を作りつつも崩しきれない川崎であったが鹿島のミスから先制。アラーノのバックパスが脇坂に渡りカウンターからゴールを奪う。鹿島の迎撃守備に苦労していた中での先制は大きなアドバンテージになった。


先制点が入ってからは鹿島がボールを持ち始める。その要因は、前線の上田とエヴェラウドが前で収めるorイーブンに持ち込めていた事、SBが大外で余裕を持てる機会を作れていた事。

川崎は攻撃→守備の切り替えで前線と中盤が囲う速さと、CBでの回収率の高さによりポゼッションの時間を確保するチーム。
その1つであるCBの回収率を下げる施策として上田とエヴェラウドの競り合いに持ち込み、川崎からボールを取り上げる狙い。川崎は強みを出すための基盤になる部分を叩かれることになる。

前線の上田とエヴェラウドは空中戦に強く川崎2CBは苦戦。イーブンボールが増えた中でそれを鹿島が回収に成功し、ラインを上げてポゼッションへと移行出来たことが、鹿島がボールを持つ時間が増えた要因だと思う。


川崎も押し込まれないように必死に抵抗。
ラインを下げてスペースを消すことで鹿島の攻撃を凌ぎ、回収してからは速いパス回しで鹿島の即時奪回を回避するか、早めにダミアンに渡して収めることで時間を確保する方法で圧力から逃れることも出来ていた。

ただ、鹿島もプレス回避のパス回しはDFが飛び出して迎撃。ダミアンはキープできる場面もあったが、パスが合わない。もしくは押し上げてもすぐにロストしてしまい自陣に戻る機会は多かったと思う。

そうなると鹿島CBがオープンでボールを持てるようになる。飲水タイム直前の犬飼→上田や29分の奈良→エヴェラウドのシーンになどはそれによるところだろう。

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飲水タイム後の鹿島は、
エヴェラウドの立ち位置が少し変わる。

左SHとして出場していたエヴァラウドだが対峙する山根、脇坂・田中の間に立ちフリー起点に。図のシーンはレオシルバが1列降りたことで前のめりになった脇坂の裏にスペースが出来ており、川崎の中盤を背走させることに成功する。

SBの山本もエヴェラウドをフォローできる高さに上がっており、左サイドへ展開して攻撃を作る。これは飲水タイムで左サイドの選手を中心に最後まで指示していたことなのだと思う。川崎としては配置で後手に回されることになった。

山本の立ち位置が上がったことで、家長が戻ってケア出来ない距離になったことも左サイドの守備を難しくしたと思う。もともと内に絞っていく守り方をするので家長の出た裏にスペースは出来るのだけど、脇坂のスライドで留めて家長のプレスバックで挟み込むことで水漏れを防いでいたのが出来なくなった為。
※上図とは別のシーン。

それでも川崎にとって助かったのは、前進に成功した鹿島左サイドからクロスを入れられなかったこと。飲水タイム前の上田のヘディングなど空中戦で苦しまされたゲームだったので、シンプルにクロスを入れられたらしんどかったと思う。

もし永戸が出場で来ていたとしたらサイドを深く抉らなくてもエリア内に正確なクロスが供給されていたはず。左CBの奈良も右利きであることから右サイドの犬飼のようにクロスを入れられず、それをやるのであれば右サイドに迂回する必要があった。

鹿島は押し込みながらも攻めきれず、川崎も鹿島の圧力をいなし切れずでスコアは動かず1-0のまま前半を終了する。


【後半:攻守のキーマンを抑える】

後半開始で鹿島はアラーノ→名古へ交代。
4-3-1-2へ配置を変更する。
3は左から名古・三竿・レオシルバの並び。
1が土居。2が上田とエヴェラウド。
土居がアンカー番。
3で縦横をケアしつつ2人は中央に残るような形。

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前半飲水タイム以降、エヴェラウドを中心とした左サイド攻撃は前進という点で機能しており、あとはチャンスを作る部分をどうするかというテコ入れが必要ではあった。

守備面では、CHがズラされたところを使われていたけれど、その後の対応に問題はなかったように思っていた。しかし、サーゴ監督としては気にしていたというところか。

自陣に引いた場合に土居を降ろして4人の中盤をキープしつつもトップ下を残したのは、土居にアンカー田中のケアの継続と、2トップ空中戦のこぼれ球を拾うタスクを任せたかったからか。そのタスクを任せるならアラーノではなく土居だったのかどうかは分からない。

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3CHになることで嚙合わせ上、川崎のSBは前に出られるスペースが出来る。サイド攻撃のキーマンである川崎の両SBに時間とスペースを与えるのはリスキーだが、彼らを引き込むことで2トップが流れるスペースを作る狙いだったのかもしれない。

鹿島の配置変更によってスペースが生まれたことで展開が速くなる。トランジションにおいて今季の川崎は強さを発揮してきており、それを牽引してきた三笘を中心とした攻撃へとシフトしていく。

ただしその分野においては鹿島も得意。
上田がジェジエウに対してスピード負けせずに深くまで運びカウンターを完結させた62分のように、迫力のある攻撃を展開した。

直後に両チームともに選手交代。
川崎は憲剛→大島。
鹿島は小泉・レオシルバ→遠藤・廣瀬。
鹿島は遠藤がトップ下。土居が左。名古が右。
と中盤の並びを入れ替える。

前半にクロス供給の点での課題があった鹿島だったが、広瀬が入ったことで右サイドからのシンプルにクロスを入れるようになる。鹿島は左サイドで作って右に展開した先にSBが待ち構えているのは前半からやっていた形だったが、そこは登里の警戒が強くカットされ続けていた。

71分のエヴェラウドが折り返したヘディングのシーン以外、鹿島は右サイドへ展開すると登里に塞がれていたはず。登里は攻撃だけでなく守備でもこの試合のキーマンだったと言える。

その後も廣瀬に届けるシーンが2度あったが登里が対応。それを見てか遠藤が廣瀬のサポートに出て行ったことで登里が動かされてクロスを入れられてしまった。
それが同点ゴールに結びついている。


川崎は下田・長谷川の投入で
ギアを上げて2点目を取りに行く。

同点にされる前からエリア内ではシュートを打てておらず、ミドルシュートで攻撃を終えるシーンが散見された。カウンターを嫌ってかどうかは分からないが、崩すシーンを作れず。久しぶりに復帰した長谷川は最後の仕上げを期待されていたと思うが、良い形でボールを届けられなかった。

幾度かのカウンターチャンスを得るも川崎は刺しきれず、鹿島は押しきれずで1-1で試合は終了。痛み分けという結果となった。

【最後に:基盤のエラーの対処法】

川崎は先制するまでは一方的ではないにしろ、優勢に試合を進められていたと思う。守備ブロック内への侵入からシュートまで到達するシーンは作れており、決定機まではあと一歩という印象だった。

鹿島の対策は川崎というチームの基盤を壊すものだった。7月の前回対戦では押し込まれ続けたが、なんとか凌ぎきっての薄氷の勝利。ラインを下げたときに前回対戦の記憶が蘇ったが、その時よりは抵抗ができたと思う。

鹿島が得意な展開に持ち込まれた中で、ダミアンで時間を作ったり早いパス回しで回避するシーンがあったことは収穫だと思う。基盤にエラーを起こされた時の対処法は出来つつあると感じている。


攻撃面では、セットした際に裏を使うシーンが少ないのが気になるところ。ダミアンがスタメンであればDFラインの前でポストを使うのは当然なのだけれど、対峙するDFにとっては選択肢が少なければ守りやすいのは当然。
奈良は前に出る色が強かった分、目線をそらすような動きをしたかった。
FC東京戦でもそれがPKに繋がったと思っている。

守備面では、いつもよりはプレスの強度が低かったように感じるが、鹿島相手に前に出てDFを晒すほうがリスクと考えたのかもしれないが、ダミアンの消耗を考慮していたのだろうか。だとしたら、ダミアンは頑張りすぎだったと思うけれど...

そしてプレスと言えば気になるのは家長。
奪い返した後の攻撃に比重を置いたのであれば良いと思うので、全てのシーンにおいて戻るなんてことは言わない。戻らないには戻らないなりの理由があれば良いのだ。

ただ、そうなると得点に絡むプレーはして欲しかったところ。ボールロストも目立っていたので攻撃面での貢献度を重視すると物足りなさは感じる。試合毎に許容範囲は変わるはずで、今回はそれをはみ出してしまったような印象を持った。パフォーマンスに波がない選手なんていないんだけど!


100点満点の試合なんてないんだから、気になったところばかりを挙げても仕方ない。
個人的に良かったと思うのは登里の守備での貢献。
文中でも取り上げたことだけど、特に前半の鹿島は左サイドで作って右に展開したかったと思うが、それを防ぎ続けた。

大外に張る対面のSBへの警戒を怠らず、パスカットから攻撃に繋げるプレーは流石だった。失点のところは遠藤のサポートもありやられてしまったが、それを除けば対応は素晴らしかったと思う。攻撃面での貢献も目立った試合だが、今節は守備面に目を向けたい。

今回はこの辺で。それでは。

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