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【レビュー・ブログ】らしく無さを武器にする 2019年J1リーグ第31節 鹿島アントラーズ×川崎フロンターレ

今節も振り返りやっていきます。

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スタメン

スタメン

【前半:噛み合う配置とズラしたい守備基準】

4-4-2をベースにした並びで戦う両チームは、ボール保持側がその並びを崩さないと守備がハマりやすい環境が作られてしまう。並びが噛み合うということは各局面で1対1が作られやすいということ。いつも川崎×鹿島の試合は球際の攻防が激しくなりやすいのは、並びが関係しているところもあると思う。
今回も例に違わず両チーム共に球際の攻防が激しい様相で、その局面での勝利がチームの勢いに比例するような印象だった。

噛み合わせ

川崎ボールで始まったゲームだが試合の入りは鹿島のボール保持から。
鹿島のビルドアップはCHとCBが後ろで持って外→外と繋いで前線に届ける。自陣深くからのビルドアップでは4-4-2の並びを崩さずにボールを進めていく。

それに対して川崎はブロックを組んでの守備で応戦。前に出てプレッシャーをかけない為に鹿島のCBに自由を与えるが、SBなど1列前にボールが出たら捕まえて鹿島の攻撃を塞ぐ。
鹿島にSB→SHにボールを届けられてしまうと、SHに対応する為にSBが釣り出されその裏のスペースを前線の伊藤や土居に使われて自陣深いところで攻撃の起点を作られてしまう。

SBの裏

仮にこれによって鹿島に押し込まれてしまうと、川崎の持ち味であるショートカウンターを仕掛けるには不向きな状況になることを意味するので、SHに出るところで制限をかけたいのだろうという印象を受けた。

サイドに蓋をされているものの川崎が最終ラインに強く寄せるわけではないので、先に書いた通り最後列はボールを持つ余裕があった。そこから前線へのミドルレンジのパス、もしくは間で待つ2列目にパスを届けて前進することで川崎の守備を下げさせると配置が変わる。両SHは内に絞りSBが高い位置に入り後方に2CH+2CBの4人(+時々土居)が中央に残って、そこを起点にボールを配給していく。

鹿島可変

川崎も鹿島の攻撃を中央で跳ね返しや、強度の高い中盤の守備でボールを取り返す。
川崎がマイボールにしてからの攻撃の組み立ては、鹿島が形を変えないのとは対照的にCHが1列降りて最後方に3人並び(3バック化)ボールを持ちやすい状況を作るお馴染みの形。主に3バックとなった両端からボールを前へ進ませようと試みる。

それに対する鹿島の守備は川崎同様に4-4-2の形を崩さないでブロックを作って構える。ビルドアップ時3バックになる相手に対して「2トップ+ボールサイドのSH」や「FW1人+両SH」の3人で同数で前から制限をかけるチームは多いけど、鹿島はSHの守備基準は川崎SBに定まっていて相手に合わせて形を変えるつもりはない様子だった。

パス回しの速さもあってだが、CBがボールを持つ余裕があり他の選手が鹿島に捕まっていることからCBが持ち上がって鹿島の守備をズラそうとする。
山村が持ち込んで→車屋へ左斜め前方のサイドチェンジを出した8分の動きが正にそのシーンで、CBがドリブルしたところに食いついたらその穴へボールを供給し、そうならなければ下図のように展開していく。

川崎CBチャレンジ

CBにプレッシャーがかかっていない状況でビルドアップをする場合に、そのまま持ち上がっていくことでそれを受ける守備はそのCBに寄せるか自分の消すべきエリアに残るかで2択を迫ることが出来る。勿論CBが上がること自体リスクがあるものなので上がり続けることは出来ないのだけど、川崎CBがこのボール運びをするのはあまり見られないものだった。

10分を過ぎて鹿島はビルドアップ時の配置を変える。
CBが大きく開き真ん中に永木が降りて3バック化。そして開いたCBが持ち上がって守備を動かそうとしていた。これも川崎がやった動きと同じことで、噛み合う配置から自分たちが動くことで相手の守備基準をズラそうという動きだった。上記が決まりきった形というわけではないが、よく見られる形はこれだった。

お互いに地上戦ではボールを前進させたり、足元で繋いでいけないときは上を通して前線に届けてこぼれ球勝負をするなど、中盤でボールを奪い合う激しい展開。序盤の時間帯を過ぎても展開は変わらない。

川崎は山村・谷口から前線へのフィードを織り交ぜつつCBの持ち上がりでズラそうぜ。なボール運び。
なるべく4-4の守備を維持する構えの鹿島なので大外に立つ守田が空いてる状態だったのだけど、そこで安易に外に預けず中にチャレンジした攻撃でMF-DFの間のゾーンに侵入し鹿島の守備を下げさせる。
押し込んだ時はオーバーロード気味に攻撃を仕掛けて突破を狙い、失敗したら即座奪回の為のプレスを敢行。成功する場面もあったが、鹿島もかわしてカウンターかポゼッションへ移行する。

鹿島のセットオフェンスはシルバ、セルジーニョ、白崎が川崎中盤4人の間に立ち、大外にSBを配置。
その中央3人の近くで土居もプレーすることで局地的に数的優位を作り出し、間に立つ3人が上下に動いて川崎の中盤ラインに穴を作ろうとする。

中央に人を割いて川崎の守備を真ん中に集めたら大外にいるSBへ展開。主に右サイドを中心に攻撃をしていたと思う。SB.SH.CH.FWの4人で相手の間に立って守備を動かし、サイドから中央へクロスを入れていく。
中の競り合いにおいてオンプレーでは川崎が優位だったと思うが、セットプレーとなると鹿島に分があるスタッツ。CKを取れればOKというところもあったのかもしれない。

前半も終盤になってから攻勢に出たのは鹿島で、ここまで右サイド寄りの攻撃を繰り返してきた鹿島だったが左サイドからの攻撃を見せ始める。
特に左SBの町田が攻撃参加をするようになり鹿島の攻撃に勢いを与えたと思う。特に前半ロスタイムでの町田が起点となった崩しは自分好みであった。笑

前半両チーム通じての最大のチャンスは川崎のミスから鹿島に訪れる。
相手のクロスをキャッチしてスローで近くの味方につけた新井だったが、川崎はビルドアップに詰まってしまいこぼれ球を伊藤にシュートされあわや失点といったシーンだった。このシーンをキッカケに勢いをつけて攻撃に出てくる鹿島を押し戻したい川崎は家長が中央でボールをキープして時間を得る。

この日1トップの小林を含め鹿島の強度の高い守備に対して前線は劣勢気味であった。その中で優勢に闘える家長が中央でキープして時間を作れたのは光明であったが、それでも鹿島の勢いを塞きとめることは出来ず鹿島が押し込む展開のまま前半は終了。

【後半:あとは決めるだけを制したのは】

前半の勢いのまま後半開始から主導権を握る鹿島。
中央でのデュエルを制して川崎を押し込み、左右にボールを展開して大外のSBから早めにクロスを入れてエリア内で勝負をするなど、川崎を殴り続けてどうにかゴールを割りたい鹿島は、裏をついてのセルジーニョの決定機を始め後半開始15分未満で3回もDFラインを突破してチャンスを作り続ける。

特に右SHのセルジーニョが内に入ることで2トップと近い位置でプレーしてそこの関係性でチャンスを作る。SHが真ん中に入っていくことで川崎は中央で数的不利になるために劣勢を強いられていたのも中央での攻防で後手に回った要因だったように思う。

川崎は56分に脇坂に代えて長谷川を投入。阿部を右SH、家長をトップ下に移動させて長谷川を定位置の左SHに配置する。長谷川に対面の内田を抑えるように伝えたのか早めに捕まえにいくが、CHの2人がサイドに流れることで鹿島右サイドでの優位を保ち川崎の守備をかわしてボールを前進させるなど川崎に押し返す隙を与えなかったが、ゴールを奪うには至らない。

チャンスを逃し続けると逆に・・・なんて言葉もある通りこの試合最初のゴールは主導権を握っていた鹿島ではなく、ピンチをしのぎ続けた川崎に生まれる。
新井が素早く前線に送ったボールから鹿島陣地に侵入しポゼッション。大島を中心とした攻撃で守備を崩すまで後一歩というところで内田のナイスDFに防がれるが、川崎がらしい攻撃を展開。そしてその後のセットプレーで山村が恩返し弾を決めてリードを奪った。

先制された鹿島は攻勢を継続するが、川崎はリードしたことで余裕が生まれたのか自陣深くでこぼれ球を拾ったところからの鹿島の強度の強い守備を華麗にかわして鹿島陣内へと侵入し、ボールを持つ時間を得られるようになった。田中、大島コンビが鹿島の逆を突き空いているスペースへボールを供給できたのは大きかった。

そして次のゴールも川崎。セットプレーのこぼれ球を阿部がキープしてプレスを回避→守田にはたいて裏に走る小林にフィードを送り盤面をひっくり返す。シュートはポストに当たるも長谷川が詰めて追加点。サブイボが立つカウンターでリードを広げることに成功。一番気持ちいいゴールかもしれない。

2点ビハインドの鹿島は内田に代えて相馬を投入し左SHに配置。それに伴って永木を右SB、レオシルバをアンカー気味に降ろして白崎と土居がその前に並ぶ感じになってたように見えた。
この交代に伴って、元々は左サイドは町田が攻撃に絡むようになっていたが相馬のドリブル突破にシフト。怪我明けだったのは知らなかった。
右サイドは内田が居なくなったが、プレスキックに定評のある永木がサイドにいることでSBからのアーリークロス攻撃の脅威は下がらないと思っていたが、右からのクロスはその後遠藤が交代で入るまで殆ど見られなかった。
この原因はエリア内に侵入する選手が減ったことだと思う。土居が下がり目になったこと逆サイドの相馬もクロスに合わせるタイプではないので中央には上田1人と前線の人数が減ったことで攻撃の形が変わることとなったのだと思う。

川崎は小林に代えて知念。鹿島は白崎に代えて遠藤を入れてセルジーニョを中央に移動させ、遠藤からのクロスで反撃を試みるが、ゴールは奪えず試合は終了。
川崎は過密日程を全勝で締めくくり、鹿島には優勝争いにおいてダメージのある黒星を与えた。

【感想①:らしく無さを結果に繋げる】

鹿島は主導権を握れた前半最後と後半最初の時間で決められなかったことが悔やまれる。
あれだけ一方的な展開でありながら試合を制することができなかったのは鹿島らしく無いなと感じた。
ただゲームの主導権を握っていたのは確かで、後半の先制されるまでの時間帯の攻勢と守備の強さは脅威であり、特に内田は嫌らしかった。
優勝争いでは一歩後退となった鹿島だが、2位の横浜は川崎と、更に首位になった東京対横浜のカードなど上位対決が残っておりまだまだチャンスはある状況だ。

川崎は広島戦に続いてらしく無い戦いで結果を出し、首位に競り勝ち過密日程を全勝。勝負強さと言ってしまうとありきたりなのだけど、ルヴァンカップ決勝を制してから明らかにチームが変わった印象を受けている。
戦い方においてもそうだし、戦術的な事ではないけど俺たちは強い!みたいな自信を持ってプレーが出来ているんじゃないだろうか。
今季前半から終盤の失点で勝ち点を落としてきたチームだが、それを繰り返してきた事で失ったのは勝ち点だけでなく自信だったのかもしれない。
ルヴァン決勝でもラストプレーで失点をしたのだけど、何かそれを克服したかのような。チームとして一皮向けた感じを受けたこの3連戦であった。
この今までの川崎らしく無い戦いが武器となるのだろうか

【感想②:GKから始まる攻撃】

最後に、今節の先制点の起点となった新井についても触れておきたい。
鹿島の攻勢が続く中、土居の裏抜けを素早い飛び出しで防ぎ、その後のプレーでクロスをキャッチしてからフィードを出すまでの一連の動きはスムーズだった。
先制点以外の場面でも素早く前線に蹴り込むことで、鹿島の多くの選手を置き去りにし、川崎のカウンターチャンスに繋げ、今までの川崎には見られない攻撃を展開。これもある意味らしく無さである。
神戸や大分、横浜などで見られるようなGKが後方のボール回しに参加することで、そこかは攻撃を始めるチームが増えてきたが、今節の新井のような攻撃の始め方も現代的だなと感じた。
一点気になったのは前半終盤に鹿島のチャンスにつながってしまったスロー。
後半のように早い切り替えをしたことで相手を複数人置き去りにしてカウンターチャンスを得られるのであれば大歓迎だけど、味方につけた結果詰まって前に運べないとなるとボールよりも後ろにいた相手選手たちも戻ってくるので、ボールの周辺は敵味方が狭いエリアで入り乱れる状況になってしまう。
新井は前に行ける!と感じて出したけど、フィールドプレーヤーはちょっと厳しい!という認識の相違なのであれば擦り合わせが必要である。前節の広島戦でも見られた気がする。
後半になってそういう危険を孕んだスローは無かったと思うのでハーフタイムで擦り合わせられたのかなと思っているけどね!
終盤になって新しい武器が見えてきた川崎。今シーズン見られる機会も残りわずかとなったけど、来シーズンに繋げて欲しいと思う。

試合とは関係ないけど、神奈川ダービーのチケットを取りそびれてしまったので、余ったりどうしても行けなくなった人で構わない。メインスタンドで2枚誰か恵んではもらえないだろうか笑
今回はこの辺で。それでは。



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