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いつかは誰にでも(佐野元春/SOMEDAY)

佐野元春を知ったのは19歳の時だった。「約束の橋」という曲が人気ドラマの主題歌になったという事で、周囲の友人たちがこぞって聴き始めたのがきっかけである。それ以前は名前は知っていたものの、自分よりは世代が上の人たちが聴いている大人のシンガーという印象しか持っていなかったのであるが、アルバムを聴き漁っていけばいくほどその魅力に惹き付けられていったのである。

それから彼の代表曲である「SOMEDAY」に辿り着くまではそう時間は掛からなかった。

誰しもがいつかは信じている愛に辿り着けると歌うこの曲だが、その中でも「いつかは誰でも愛の謎が解けてひとりきりじゃいられなくなる」というフレーズが19歳の僕には刺さって頭から離れなかった。

19歳の未来は希望に溢れている。その時に思い描く未来はたくさんあるし、何者にでもなれる気がしていた。

一方で19歳は圧倒的に人生経験が未熟だ。若すぎて何だかわからない事ばかりで思い通りにいかない現実に打ちのめされる日々を味わう時代でもあった。年月が過ぎ去ると共に、大抵の人は皆、窓辺にもたれて夢のひとつひとつを消していく事になったのではないだろうか。僕もまたそんな気持ちで年月を重ねていった。

そして長い年月を経て50歳に差し掛かった頃、再びSOMEDAYを聴いてみるとまた違った感じ方を覚えるのである。

50歳にもなって何かを為し遂げよう、何かを叶えようなどと考えてももう遅いだろうと思っていた。そんな歳にもなって夢を持つなんて手遅れだろうと思っていた。

50歳で聴くSOMEDAYは19歳とはまた違う意味で魂が揺さぶられる思いが沸き上がってくる。

曲中の若すぎて何だかわからなかった事がリアルに感じるこの頃とはまさしく50歳に差し掛かった今である。

渋沢栄一が残したと云われる格言で40歳や50歳などはなたれ小僧で60歳や70歳でようやく働き盛りなんて言葉も残されている。

そして60歳になろうが70歳になろうが健康でさえあれば、恋愛感情が枯れるなんて事もどうやらなさそうである。

僕のSOMEDAY(いつか)はまだこれからかもしれない。そんな気持ちを抱かせてくれるのである。今から何かを為し遂げようなんて手遅れだという人がいるかもしれない。

だがそんなネガティブな声などは口笛で応えてやろう。真心が掴めるその時は必ず来るのだ。

10代で出会った佐野元春さんだって変わらず健在だ。時間はあの時から止まっているのであろうかという錯覚に陥る事も時々ある。

人は目の前がどんなつらい状況に陥ったとしても、未来に希望を抱いているからこそ生きていける。例え微かな光であったとしてもそれを絶やさずに灯し続ける事だ。

SOMEDAYを聴いたなら、その胸に誓うべき何かをきっと見つける事ができると僕は信じている。



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