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明日のことは考えないことにした夜
名古屋の街の夜は、キラキラしていた。
Cartier、Dior、LUIS VUITTON、オシャレなショーウィンドウの前を歩きながら、心も華やぐみたいに、けれどもふく風が冷たく、二人くっついて歩く。
「そこを左で、右行って、左。」
と、スマホ片手に道案内をしてくれる長女に私はただただ従って歩く。
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なかなか予約がとれないというお店が、せっかく予約できたのに、一緒に行くはずの友達が体調不良で来られなくなってしまい、代わりに私がご指名を受けたのだ。外飲みなんていつぶりだろう。
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お通しは炙って食べる舞茸やお揚げやしいたけ
おろしポン酢で。
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のりたまはポテトサラダにかける用。
生ビールがうんまいっ!
生ビールが、うんまいっ!!(大事なので二回)
長女よ、なによりもビールが飲めるようになったことが母はとても嬉しいよ。
盛り合わせは、かなりお酒が進みそうな濃い味つけで、グイグイ飲んでしまいそうで危なかった。
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タケヲグラスがかわいすぎる。
フランス行きたいね〜、からのヨーロッパツアーとかを検索しながら、大学の友達の話を聴いたり、私の友達の話をしたり、男の話をしたり。
ラストオーダー(1時間半制限)になってもまだ8時前で、2軒目行こって、長女がサクサク調べて(自分でやったジェルネイルの爪をカチカチさせて)近くの良さげなBARへ。
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まだ早い時間だけどやっていて、女性のバーテンダーさんが「お好きな席どうぞ〜」と通してくれた。かわいいビンが所狭しとズラリと並び、暗い店内にミラーボールが時々キラキラッとして、窓からは裏通りを歩く人たちを上から見下ろせる。まだ浅い夜。
クラフトジンを豊富に取り揃えたお店。
バーテンダーのくじらさんに、
「昔、トムコリンズとか飲んでて、そんな感じのがいいな〜」
と言うと、いくつか瓶をピックアップしてくれた。
「これはドイツのクラフトジンで…」
と説明をしてくれながら蓋を開け、香りを嗅がせてくれる。
「気になったものでお作りしますよ」
と、まるでアロマセラピストみたいな要領で、ジン&トニックを作ってくれる。
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久しぶりのジンが嬉しくて、美味しくて、BARで飲むこのシチュエーションに、いつぶりだろうくらい胸が弾んで夜に溶け込んでいくのがわかる。
くじらさんはとても話しやすくて、親子なんですよって言ったら、目をまん丸くしてのけぞっていた。長女の一つ席を挟んで隣にいた若そうな男の子とも馴染みっぽくて、和やかなカウンター席にすっかり居心地がよくなってしまう。
「今日、国家試験受けてきたんですよ」
というその男の子は、聞くと長女と同じ歳で、試験が終わってホッとしたくて、行きつけのBARに飲みにきたところだった。
行きつけのBAR!
なんていい響き。素敵!
長女も働き始めたら、絶対に行きつけのBARを作りたい!と鼻の穴を広げていた。
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theジンっていうスッキリ具合
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昆布のダシっぽい和な風味がふわりと。
長女のは柚子のほんのり甘め。
外国から、国内各地から、いろんなクラフトジンが集められていて、それぞれに本当に香りや風味が違って面白い。ソーダを合わせたり、トニックだったり、ソニックだったりでもまた味わいが違って、甘めやスッキリめに仕立ててくれる。
長女もアールグレイ系や、エルダーフラワーっぽい甘みのものを試していて、二人で飲み比べては
「わぁー!」
「本当だー!」(本当かよ。)
とか言いながら、時間を忘れて楽しんでいた。
そしてとうとう、
「電車、大丈夫だっけ?」
「あ、じゃあ、あと一杯飲んだら帰ろう。」
というくらい夜も更けてしまっていた。
知らない間に、国家試験の男の子は長女の隣の席にいて、「音楽は何聴くの?」からのスマホ画面を一緒に見る距離まで詰め、私がトイレ行ってる間にちゃっかりインスタ交換を済ませていた。
あぁそういう飲みの交流が懐かしい。
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スコットランドだったかな…もうだいぶ酔っていた。
駅まで歩く道はめちゃくちゃ寒くて、酔いは回ってるのに寒すぎて、二人腕を組んで駅へ急いだ。
夜遊びのワクワクで、キャッキャッ言いながら、でも結局寒い寒いしか言ってなくて、酒臭い二人はナナちゃんに手を振って帰った。
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就活がんばってね〜!
ガタンゴトンとしばらく揺られ、地元駅に降りると、とっぷりと夜中で。家までの帰り道が寒すぎて、途中のコンビニでヘパリーゼを買って、ドーピングして、二人で震えながら、励まし合いながら帰った。
「寒ーい!でもめっちゃ楽しかったー!」
「ママって、やっぱ、そうだよね。」
「なにが?」
「こういうことしたい人だよねっ!」
「ねーーっ!!」
そう、私は本当は、こういう遊びも大好きだ。
明日のことは考えないことにする夜も、
たまにはあっていい。
おまけ
くじらさん、誰かに感じが似てるんだよなぁって思ってたけど、わかった。指原莉乃ちゃんだ。
そりゃ、話しやすいはずだ。