読まされ図書室 「読書感想文」
読まされ…?
なるほど、推薦者から投げかけられた本というボールを受けとめて、返球する小林聡美さんのエッセイ集、という面白い本。
小林聡美さんといえば、丘の上のかわいいキッチンカーで美味しそうなパンを出してくれるCMでおなじみの、ロハスでナチュラルなイメージ。映画やドラマでも、どこからが台詞で、どこからがアドリブなのかわからないほどの、自然体の演技が印象的。淡々と世界観を作ってしまう素敵な女優さんで、「やっぱり猫が好き」のころから好きです。
その聡美さんへ本を推薦する面子もまた。
フードスタイリスト飯島奈美さん、俳人 宇多喜代子さん、シンガーソングライター井上陽水さん、イラストレーターさかざきちはるさん などなど個性的で幅広い方々。
作家の群ようこさん、酒井順子さん、よしもとばななさん などからも。
そして、無茶ぶり?かと思うような推薦本のラインナップ、料理、きのこ、虫、神徒像、股間、トムさん…じゃんじゃん異質なものが放り込まれるのである。自分ではきっと、一生手に取ることのなかったような世界を、半ば強引に「読まされ」る。
素晴らしいのは、その1冊1冊に小林聡美さんが独特な距離感で、シニカルに返すのです。推薦された本に対しても、推薦人に対しても。決して、寄り添いすぎず、染まりきらず、跳ね除けすぎず、小林聡美の中に消化されるものとそうでないものはあるにせよ、きちんと味わっているのです。
この本では、よしもとばななさんとのスペシャル対談もしている。
よしもとばななさんの本も、私は中学生くらいから読んでいた。馴染み深い作家さんで、スピリチュアルなエピソードのエッセイだとか、オリエンタルなラテンな高温多湿な(ごくごく個人的なイメージですが)作品が好きです。
よしもとばななさんと小林聡美さんの対談は、まるでエビとアボカドのように、出どころが違うのに妙にマッチしていました。
久しぶりに、本を読みながらクスクスと笑い、飼い猫が擦り寄ってくるのを邪魔にせず、ときおり可愛らしいイラストにほっこりしながら読みました。
何より、私の心をグッと掴んで離さなかったものは、その装丁です。表紙を開き、見返しをめくると、図書館の貸出カードが扉となっているのです。カードには、推薦人たちの名前が…
あぁ、もう。
なんだか小林聡美さんの映画観たくなって、「かもめ食堂」をNetflixに探す。