チェコ買い付け日記2023⑰「ヴィシェフラド城と墓参り」
Martinさん、Viktorさんと別れてからもう少しヴィシェフラド城を散策します。この日もとても暑く、涼しい日陰を探して歩きます。
教会の鐘の音が鳴り始め、その音を追っていくと墓地に出ました。
墓地を取り囲む回廊が美しく、天井の絵に見惚れます。日本で思う墓地や死の概念が違うのだろうなと思います。
あっさりと見て入ってきた入り口と違うところから墓地を出ようとすると、案内板が立っていました。どうやら有名な人が多数眠っている場所だったよう。どれどれと見ていると、なんとカレル・チャペックとヨゼフ・チャペックの名前があります。これはそのまま帰るわけにはいきません。他人の墓にあまり興味はないのですが、本を売らせていただいている以上は感謝を伝えなければなりません。
ちなみにこの墓地にはドヴォルザークやスメタナも埋葬されています。たまたま見つけたスメタナのお墓にはまだ新しいリースが供えられ、彼がチェコで愛されていることがよくわかりました。
案内板を頼りにチャペック兄弟を探します。弟のカレルのお墓はすぐに見つかりました。上は三角屋根の教会のようなざらりとした石の形で、下にはつるつるした黒い石で本とリボンの形のオブジェ。刻まれたフォントもすてきです。
兄のヨゼフのお墓を探すのは少し時間がかかりました。それは周りの多くののものと変わりない、何の変哲もないお墓だったこともあります。
ヨゼフは強制収容所で亡くなっています。ナチスへの批判的な態度によって目をつけられていたチャペック兄弟。ナチスがチェコスロバキアに侵攻してきてヨゼフは逮捕され、強制収容所に送られました。弟のカレルは前年のクリスマスに亡くなっていました。
ヨゼフは強制収容所で亡くなったと書きましたが、実際にはそう言われているだけで、ヨゼフの遺体は見つかっていないし、いつ亡くなったという正確な記録もないようです。だからお墓に刻まれた日付は誕生日の1987年3月23日と、亡くなったであろう1945年4月だけです。
ヨゼフの絵はシュールで、ユーモアがあって、おおらかで、のんびりしていて、きっちりしていなくて、でも子どもや動物の表情が表れていて、大好きな作家のうちの一人です。
ヨゼフのお墓に植えられた薔薇がきれいでした。
チャペック兄弟の墓参りをしたからには、今回の旅でヨゼフ・ラダの墓参りをしないわけにはいきません。