チェコ買い付け日記2024⑬最終回「美しい郵便局とチェコの商売気について」

プラハの中央郵便局から日本へ向けて荷物を送り終えた後。郵便局の２階になにかあるぞ、ということになりました。
いつもは送り終えたらお終いで、「あ〜終わった！」と、さっさと外へ出ていたのですが、同行していた友人が、私が発送の手続きをしている間に局内を探検し、２階に上がれることを発見したのでした。

前にも書いているけれど、プラハの中央郵便局はうっとりするほどすてきな場所です。郵便窓口の大きなフロアは３階までの吹き抜けになっていて、その２・３階部分の壁には植物や人物がびっしりと描かれています。今までは待ち時間に下から眺めているだけだった絵を、階段を上がると間近に見ることができます。さらに上から眺める郵便局の広々とした空間も面白い。
美術館やレストランだけでなく、郵便局という事務的で機能性が求められる場所でも、こうやって日常を忘れるような美しい空間を使っていることに、アートを大事にしようというチェコの根底にある価値観が感じられます。
あと、ポスターやサインがベタベタ貼られて空間が台無しになっていないのも好きなポイントです。

２階はギャラリーになっていました。その時やっていたのは３人のアーティストによる展示。版画やペイントなど手法はそれぞれだけれど、色使いや雰囲気などがなんとなく似ていてかっこよく、とても好きな展示でした。
今まで何度も郵便局に来ていたのに、もったいないことをしていたな。

郵便局を出た後はその近くにあるアイスホッケーの専門店を目指します。
実は前日夜のアイスホッケー世界選手権決勝で開催国チェコはスイスを破って優勝していたのです。
チェコでアイスホッケーはサッカーと並んで一番人気のあるスポーツだそう。チェコ国内はお祭り騒ぎです。私たちもテレビで見ていたのですが、プラハの旧市街広場ではライブビューイングもあったようで、朝のニュースでも繰り返し試合や優勝の瞬間、旧市街広場の様子などが流れていました。
（私は今までの買い付け日記で「W杯」と買いていましたが、正しくは世界選手権だったようです。前の記事も訂正しました。）

一緒に旅をしていた友人のだんな様は学生時代にアイスホッケー選手だったそうで、友人も何度か試合を見に行ったことがあるのだとか。その話を聞いた時には、日本でアイスホッケーをするなんて珍しいね、という驚きだけでしたが、私たちの滞在した約10日間が持ち回りで開かれる世界選手権のチェコ開催の日程と重なり、しかもそれが大会終盤の日程で、そして開催国チェコが優勝するという偶然というか奇跡。そしてアイスホッケーには縁もゆかりもない私の買い付けに、今回たまたま同行していた友人。それは今考えても不思議な、この旅の巡り合わせでした。
友人はだんな様へのお土産にユニフォームを頼まれているようで、売っている店を探していたのでした。

優勝した翌日はさぞ混雑しているだろう、と思っていたのですが、ショップは閑散としていました。何人かいる店員さんもレジで談笑しながら、のんびりと仕事をしています。なんか思ってたのと違う。
店に入ってすぐのスペースにはチェコ国内のクラブチームのユニフォームやタオルなどのグッズが並んでいますが、ナショナルチームのものはありません。店員さんに聞くと奥の方を案内してくれました。え、奥？
防具やスティックなどの売り場も抜けて、本当に一番奥の方に赤と白のユニフォームが掛けられていました。あんなに盛り上がっていたのに？まあ、確かに誰も買いに来てはいませんが。

日本では野球やサッカーの国際大会で日本が良い成績だったとき、その後にユニフォームやグッズがたくさん売れている映像をよく見ます。チェコではもうすでにみんなグッズは揃えて観戦に臨むのかしら。
それにしても、優勝した翌日なのだから、ユニフォームを店の前でドーンと売れば、チェコ人はともかく観光客は買いそうなのに。商売気がないな、なんて日本人的な発想をしたのでした。

さて、今年の買い付けの旅はお終いです。ヴァーツラフ・ハヴェル・プラハ国際空港から飛行機に乗って、ドーハで乗り換えて日本へ。
プラハから発送した本たちは、行方不明になることもなく、後日無事に全て私の手元に届きました。しかも１週間以内に。チェコと日本の郵便局や運送関連の方々、ありがとうございました。

来年もまたチェコに来られますように。