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組織を育てるエコアクション21

EA21やISOなどのマネジメントシステムは、経営に役立たない、審査に手間がかかるので取り下げたい、という声はよく聞く、実際、新規登録件数よりも取り下げ件数が多く、登録件数が伸びていない。

身の丈に合わないEA21

環境省のエコアクション21(EA21)や国際規格のISO9001、ISO14001のマネジメントシステムは経営に役立たない、事務が煩雑で維持管理に苦労しているという話はよく聞く。

中小企業が取組みやすいように制度設計された環境省の環境マネジメントシステム(EMS)でさえ、制度開始8年目から登録件数が増えない状況になっている。約7,800件の登録件数があるが毎年微増減を繰り返している。

長野県の場合でも、2017年、2018年の2年間で39件の新規登録件数に対して、17件の取下げがあった。全国平均に比べ、微増しているのでよく頑張っているといえる。

個々の事情もあるが、取下げ理由は3要因がある。①メリットがない、②事務煩雑、③ISO14001への移行である。原因を一言でいえば、「身の丈に合わない」しくみをつくってしまったことによる。

導入時は、「よい会社」をつくりたいという想いで導入したが、時間の経過とともに、担当者が変わり、手間のかかるしくみに慣れ、メリットがないと経営者が感じると現場任せになり、「悪いしくみ」を作ってしまっている。

「悪いしくみ」を作ってしまった


マネジメントシステム導入時の目的を見事に忘れてしまっている。なぜ「悪いしくみ」ができるのか、「身の丈に合わない」しくみができるは、導入時のコンサルタントに起因するものと登録後の審査員に起因する場合が多い。、

コンサルタントによるもの
10人の会社と100人の会社のマネジメントの成熟度が異なるのに、その状況を考慮せず、こうあるべきだと決めつけてしくみづくりしている。

審査員によるもの
マネジメントのしくみづくり時、「会社をよくしたい」という経営者の目的や意図を聞き出しきれず、審査を行うことが目的となっている。

企業の担当者も、審査に通ることが目的となり、その結果、コンサルタントや審査員の言うがままに、不必要な記録や文書を作ったりしてしまい、「身の丈に合わない」しくみができてしまう。

新しいものを取り組むときの判断基準

これを防ぐために、もともと企業には、企業特有のマネジメントシステムが存在している。その結果、顧客の信頼を受け、事業が継続しているのである。

だから、EA21やISOのマネジメントシステムを導入するといっても、何でもかんでも新しいことを取り入れることでない。

もちろん、EA21やISOには要求事項がある。要求事項を何らかの形で満たすことが登録条件である。企業のやるべきことは、自社で要求事項はどの仕事で行われているか、よく考えることである。

自社に不足しているか、あるいは、改善した方がよい判断したら仕事の追加や見直しをすればよい。何でもかんでも、新しい手順や書式を取り組むことではない。

コスパ(掛けた手間に見合う成果が得られるか)考えて判断することである。

コンサルタント、審査員に振り回されない

審査時、審査員より、こうした方がよいといわれた場合、仕事が増えなければ、構わないが、仕事が増えると思ったら、要求事項の何項目何番目の要求かよく確かめることである。

言いなりにならず、自社の目的と照らし合わせて、納得しながら進めることがスリムなしくみをつくる。

「よいしくみ」をつくるコツは、自社が何のためにEA21を導入するのか、認証までブレない、認証後もブレないことである。

経営者自ら取り組めばブレなくてすむ。そして、コスパを意識してEA21の特徴を生かしてシステム構築をすることである。

組織を育てるエコアクション21の特徴

1)中小企業向けのマネジメントシステム
中小企業といっても製造業では、2名から300名まである。自社の立ち位置はどこか?、企業規模が違えば当然マネジメントシステムは異なる。

2)課題とチャンスによる環境経営
導入目的は、「よい会社」をつくること。まず、足元の課題を拾い出し、課題とチャンスを見極め、あるべき姿を目指すための経営戦略を決める。

そして、あるべき姿を目指して、筋の通った目標管理のしくみをつくる。

3)持続可能な社会の構築
環境マネジメントシステムの目的である持続可能な社会の構築として、低炭素社会、循環型社会、自然共生社会を目指すことである。

EA21は、これらの社会を目指すPDCAサイクルの構造を持つ改善の道具と位置付ける。

4)より進化した組織、企業価値の追求
まず、マネジメントの「型」を作り、利害関係者に「安心」と「信頼」を提供しながらスパイラルアップすることが企業価値を目指すことができる。

EA21の導入の目的を忘れないこと。「利益管理とEA21をセットにしたしくみ」、戦略的方向付けした組織目標、社員一人ひとりの能力引き出す改善活動ができるしくみとして「一人ひとり稼ぐ組織」を目指すことである。

利益管理とEA21セットのしくみ

経営的メリットがないという企業は、EA21と経営計画が遊離していた経営をしている。そのような仕組みづくりは、経営者も立ちいるスキない。「利益管理とEA21をセットにしたしくみ」をつくることである。

多くの企業では、財務会計による月次決算を重視しており、幹部で月次の評価、対応を行っている。

しかし、財務会計は、正確性が基本のため、実際上の評価するタイミングが1ヶ月から1ヶ月半くらいタイムラグがある。現場担当するものから見れば、1ヶ月以上も過ぎ去った過去の評価となる。

管理会計による利益管理

そのため、管理会計の直接原価による付加価値を管理する経営戦略会計を推奨している。経営戦略会計を採用することで、月初に評価できる。

戦略会計の利益構造は、単純構造なので理解しやすく、社員一人ひとりが、何をすれば利益に貢献できるか教えやすい。

月次で利益(付加価値/人)を計算し、期末予測をしてグラフで見える化することで、月末の計画差異が共有できる。

もし、目標達成しなければ、社員の給料(社員の努力)と会社の利益(設備投資等の将来費用)が確保できない。何とかしようと動機づけができる。

経営層は、年間の目標が達成したら、社員に給料やボーナスの他に、期末手当として還元できる。経営層と社員による改善の協働作業が「一人ひとり稼ぐ組織」となり、課題とチャンス生かした経営ができる。

事務の転記のムダの排除

「事務煩雑」に悩む企業は、パフォーマンス評価の基本データの集計が工夫がされていない。事務改善の基本の一つである転記のムダに気が付いていない。取り下げを考えている企業ではほとんど考えていない。

EA21の場合、EA21ガイドラインの環境負荷の自己チェック表(標準書式)が単年度集計になっている。企業では、一般的に3年間くらいのデータが比較できるように集計されている。

EA21ガイドラインの書式にこだわらず、現状使用のものを利用すればデータ集計がスリムになる。

企業規模に合わない文書化

マネジメントシステムの場合は、手順書で仕事をするという認識のもと、企業規模に合わない文書体系をつくり、改廃に手が舞わず、文書に振り回されているところが多い。

当たり前のことであるが、10人規模に会社と300人規模の会社では、文書化が異なる。この文書がなければ問題が起こると判断したらつくればよい。

EA21の場合、環境経営レポートの作成が要求事項である。これも業種業態、規模によって異なる。規格要求事項は何のか、今まで自社でどのようにしていたかを考えればよい。他社の真似をしないことである。

環境活動レポートは、利害関係者に自社の環境保全活動の全容と全社員が、環境経営にどのように取り組んでいるか、知ってもらうものであり、利害関係者に対して、「安心」と「信頼」を提供する道具である。

特に、小規模企業においては、自社の会社案内やカタログと位置付けて活用すると、安価で効果的な広告宣伝の道具となる。

事例 EA21導入し12年経過したが取り下げしたい

エコアクション21(EA21)を導入して、12年目になる18名の製造業の悩みである。導入後2~3年は、電力量と廃棄物を中心とした改善活動で、二酸化炭素削減、環境負荷の削減について、目に見えた成果が出た。

その後、照明のLED化、省エネ設備への入替等で二酸化炭素削減には成果が出たが、現在は改善の余地がなく、目標値を決めること自体にマンネリ感を感じている。取り下げしたい。

EA21は、取引先へ対して、営業的には必要だが、EA21担当者の退社もあり、事務負担からもEA21の返上も考えているという相談を受けた。経営者の話より2点の課題が確認できた。

①EA21は経営に役立たない 
導入時、環境負荷削減の目標達成評価のしくみを作ったが、経営計画と連携していないため、だんだんと経営とEA21が遊離していった。

当然、経営メリットは感じられない。環境関連項目だけの目標管理では、経営的評価できない、基本は、経営計画と直結だせた利益評価とCO2原単位で評価するのがよい。

②事務が煩雑である
EA21は、環境経営方針、方針を達成するための環境経営目標(過去実績及び中長期)、環境経営目標を実現するための環境経営計画(前年度の評価及び次年度実行計画)を要求している。

環境関連データの集計方法を見させていただいた。月次で目標管理していないため、単年度ごとデータを集め、転記を繰り返し、環境経営レポート用のデータを集計している。

事務の合理化の基本は、データの転記をしないことである。

EA21の再構築は、現状を捨てること

今まで見てきたように、EA21でもISOでも、身の丈に合わないしくみは、手直しでは、劇的に改善しない、経営に役立つしくみとならない。

まず、自社にとって、EA21(環境マネジメントシステム)の目的は何か、全社員でワークショップを行い共通認識を持ち、経営における「利益管理とEA21をセットとしたしくみ」に作り替えることである。

戦略的方向付けをした総合的組織目標を、①一人当たり付加価値、②CO2排出量削減の2項目で行うようにした。

組織目標達成のための改善実行計画書をチーム単位で決め、PDCAサイクルによる改善を進める。月初め、朝礼で、月末の実績予測を行った計画対実績グラフを作成し、改善活動を見直しながら進めるように。

EA21の過去のしくみを捨て、再構築は、3時間、3回の訪問で達成できた。

おわりに

EA21やISOで、経営に役立たない、煩雑をぼやくことではなく、まず、捨てる、そして、原点に戻り、何のためにという目的を社員と共通の認識にすることです。

「よい会社」つくることを目的とし、①利益の出せる会社、②この会社でよかったと感じるしくみとする

筋の通った目標管理の「型」をつくり、スパイラルアップしながら「一人ひとり稼ぐ組織」づくりを目指してほしい。

紹介した9時間の支援のしくみづくりの事例である。当面30名以下の製造業が対象とし、支援している。


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