裁判例 お医者さんになるための努力

離婚事件に関する裁判例を調べていたら、控訴人の医者になるための努力をしっかりと評価した裁判例があったので。

~以下引用~
【判例番号】L06920679      
離婚等本訴請求,同反訴請求控訴,同附帯控訴事件
【事件番号】大阪高等裁判所判決/平成25年(ネ)第349号、平成25年(ネ)第1313号
【判決日付】平成26年3月13日

「3 寄与割合について
 控訴人は,被控訴人が婚姻届出後別居時までに就労して得られたであろう収入を試算し,その金額を踏まえて被控訴人の寄与割合はせいぜい3割である旨主張する。
 しかしながら,民法768条3項は,当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与額を定めるべき旨を規定しているところ,離婚並びに婚姻に関する事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないものとされていること(憲法24条2項)に照らせば,原則として,夫婦の寄与割合は各2分の1と解するのが相当であるが,例えば,
Ⅰ 夫婦の一方が,スポーツ選手などのように,特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが,加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり,通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など,高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するような意味合いが含まれるなどの事情がある場合,
Ⅱ 高額な収入の基礎となる特殊な技能が,婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて,婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合
などには,そうした事情を考慮して寄与割合を加算することをも許容しなければ,財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたい。

 そうすると,控訴人が医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや,医師の資格を有し,婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して,控訴人の寄与割合を6割,被控訴人の寄与割合を4割とすることは合理性を有するが,被控訴人も家事や育児だけでなく診療所の経理も一部担当していたことを考えると,被控訴人の寄与割合をこれ以上減ずることは,上記の両性の本質的平等に照らして許容しがたい。
 したがって,控訴人の上記主張は,採用することができない。
 
 他方,被控訴人は,被控訴人の寄与割合が5割を下ることはない旨主張する。
 しかし,かかる主張は,控訴人が平成4年2月3日に被控訴人との婚姻届出をするまでに,医師の資格を取得し,技能を身に付けるため,大学医学部に入学するための受験勉強,入学後の勉学,昭和61年に医師資格を取得するまでの勉学及び医師資格を取得した後のいわゆるインターンとしての厳しい勤務経験などの被控訴人の協力を得ずにしてきた努力によって培われた知識,技能,及び,婚姻後に身を粉にして必死に稼働し費やしてきた多大な労力や経験が高額の収入確保に繋がっている面があることを不当に軽視するものであって,採用することができない。」

「被控訴人の協力を得ずにしてきた努力によって培われた知識,技能,及び,婚姻後に身を粉にして必死に稼働し費やしてきた多大な労力や経験が・・・」ってあたりに、裁判官の意思に対するリスペクトがうかがえる、また読み返したくなる裁判例。

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