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ある、夏の国で過ごした年越し

少し日が落ちて涼しくなった夕方のこの国は
よく瞬間的に雨が降る


『トムは真夜中の庭で』という海外の童話本を
読みたくて入ったオシャレなカフェで
一番安い6RM(約240円)のエスプレッソの香りが
鼻から抜け、息を吸うと懐かしい雨の匂いがした


「雨すぎる」とLINEが来たので「すぐ止むよ」と送る


子供の頃、雨の匂いが嫌いだった
雨の季節に生れたのにも関わらずにー
エスプレッソの良さなんてもちろん知らなかったし
知ることもないのだと思っていた
ーあれから10年、嫌いだった雨の匂いが
ノスタルジックに感じ
コーヒーの香りが何よりも好きなものに変わった

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本を読む目的で入ったカフェなのに
目を閉じて異国の雨とコーヒーの香りを感じていると
昨夜、一線を越えてしまった人がやってきた

向かいの一人掛けソファに座るや否や彼のお決まりの笑顔で
「今日も可愛いね」と私に嘘のない感情で言う
どうしても私は私の見た目に自信がないから
誉められると反応の仕方がわからなくて
客観的に不機嫌になってしまう
そんな時は「ありがとう」と
素直に肯定すればいいんだよ、と彼は教えてくれた

好みや感じ方は変わっていくのに“私の根本的なナニカは
一切変わってなかったんだ”と彼と話していて思う

「彼」とは、投資家でありブロガーである
たぶん、今流行りのアフェリエイトやネットビジネス系
本名を検索するといくつかのSNSでの活動が出てきたので
一応目を通したが、正直好きなタイプの人間とは思えなかった
ただ、マッチングアプリで知り合って否やLINEの電話で
「年末年始はマレーシアで過ごす」と話すと
「俺も行きたい!」と本当に予約を取っちゃった行動力が
私に似ていて、海外でTinderのマッチした人と過ごすのも
悪くない気がしてきたので会った

迎えに行ったKL centralで初めて実在する彼を見た瞬間
ジャニーズ系の整った顔をしている人だと思った
「人は出会って三秒で“あり”“なし”“性的にはあり”の
三択に人を選別している」と彼は言ったが
だったら間違いなく、 ”あり” だ

ただ顔が良いからと幼いころからちやほやされ
自らの美しさを自覚している男は嫌いである

また、その男も自分の顔の可愛さを知っていたし
都合のいい時だけ私にくっきり二重の奥にしまってある瞳で
「いいじゃん、楽しい事しよ?」と甘えてきた

”イケメンは目の保養だよね”って他人事のように
いっていたけれど、当事者になると違う
、、、イケメンを自覚してないイケメン”がいい
と心の底からイケメンに対しての条件が加わった

なのにどうして私は今朝も彼の背中に抱きついて
彼に触れていたいと思ってしまうのだろう
なのにどうして彼の元カノを
Instagramのストーリーで見た時に彼に
「私の事好き?」と聞いてしまいそうになったのだろう


ーきっと異国に来て、ある種のマジックにかかってるだけだ

マジックといえば、あの年越しの夜もだ

もの凄い人ごみの中で私たちはまるで恋人のように
手を繋ぎ、時に顔を寄せ合ったりした
”せっかくの年越しなんだから最高に楽しもうよ”
どちらともなくそんな思いを持ち合ったかのように





3.2.1
Happy New Year!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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あぁ2018年が終わり、2019年が始まったのだ

周りの木で完全な花火は一つとして
見ることはできなかった、けれど
何故かこの瞬間の感情を
全身に響く音を
今となりに彼がいてキスをしたことを
ぜんぶぜんぶ忘れたくないと思った
この目に焼き付けておきたいと思った
だから、フィナーレの写真は物理的に
いつでも見れるように写真に撮らないで
心に記憶しておくことにした

彼の今年の目標は「結婚」らしい
どうか叶いますように

この国での生活もまだ一週間以上ある
彼との生活もあと一週間以上あるのだ
私の今年の目標は、「今を愉しむ」だから
この魔法にかかった時間を思う存分楽しんでやろう


仮に、帰国してまた彼と再会して
まだ魔法にかかったままならそれでいいじゃないか
素直に感情で人を愛そう
傷ついてもいいじゃないか
今年は誰かを深く想ってみたい


さて、夕方に目覚める彼を誘って
ランドリーで2018年の汚れを洗い流そう

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