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新入社員のたわごと


 私の職場のとなりに、未練を引きずり倒した元彼の職場がある。広い敷地に沢山のきれいで可愛いおうちが並んでいる。

 さっき、その中を直視しながら歩いていると、電柱にぶつかった。数ある家の中でも彼の会社のお家はすぐに見つかって、私は別れて2年が経とうというのにいつか見覚えのある車をまた目にすることがないかと毎日確認している。彼そのものよりまずは車を。だっていきなり彼と再開してしまったら、どうしていいのか分からないから。
 それにしても、たった3ヶ月付き合って別れただけの相手にこんなに執着したのは初めてだし、好きという類の感情ではない事も頭では知っているのに、まだ私は彼のことを好きでありたいと願っている自分がいる。
 
 私にスローバラードの良さを教えてくたのが、彼だ。

 忌野清志郎の曲ではなくて、テンポの遅い優しい曲たち。例えば大橋トリオとか。当時の私はまだ学生で、ストレスという本当のそれを知らなくて音楽を聴いて癒やされるという感覚が分からなかったけれど今はわかる。あの、優しい曲を好んで、ワーゲンのティグワンで流していた彼はきっと心が疲れていたんだろうと。
 もう学生ではなくて、社会人になって1ヶ月が過ぎた今、私は無性にYUIのLaugh awayが聴きたくなって、聴いた。10歳の頃から大好きな彼女の曲はどれも、どこかひねくれていて真っ直ぐで強いのに脆くて、とても好きだ。


見上げたら ヒコーキ雲 明日へと消えた
僕は それでもずっと 自転車を漕ぎ続けた
上り坂 駆けあがる あの空の向こう
いつか 追い越せるような そんな気がしているから
逸れそうな Get away Get away
情熱を Get away Get away
逃がさないように 手を伸ばして...
ちっぽけな事に悩んじゃって
とにかく君に会いたくなった yeah
生まれたての春の匂いに
咲き誇るサクラのはなびら
いつだって負けないように ねぇ
そう 笑って そっと 笑って Laugh away
そう 笑って いつも 笑って
丘の上 息を切らし 街を見下ろした
たぶん 君の家の 屋根くらいは見えるはず
窓のそと 海がすぐだよなんて 話してた
だから あの場所あたり? 同じ"今"感じている
溢れそうな Get away Get away
情熱を Get away Get away
こぼさないように 手を伸ばして...
ちっぽけな事に悩んじゃって
とにかく君に会いたくなった yeah
目の前に広がる景色を
忘れてはいけない気がした
いつだって 負けないように
Never mind. Never mind. 落ち込んだら
yeah yeah ここに来て 風に吹かれたい
ちいさな笑顔がみたいから
僕だって強くなれるのさ yeah
生まれたての春の匂いに
咲き誇るサクラのはなびら
いつだって 負けないように ねぇ
そう 笑って いつも 笑って

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 この曲は、なんとなく口ずさんでしまう。特に気分が落ち込む予兆のある前に。そして、また、それと同じように映画を観て、本を読んで、ゆっくり好きな香りの入浴剤の湯船に浸かり、近くの運動場でランニングをし、朝ごはん、お昼、夜ごはんをきちんと作って丁寧に毎日を過ごす。躁鬱で言うと、鬱の予感がする時には事前に自分で自分をコントロールできるようになった。大人になるってそういうことだと言うならば、私は大人になったのかもしれないけれど、まだ10代だった頃に出会った彼を私はまだ忘れられてないしあの時の感情や彼の表情を、あれから何人の男たちに抱かれたのか分からないのに、それだけは忘れられない記憶として残っている。


ー亮ちゃん、元気ですか?



 仮に再開したとしても、また付き合いたいとか、また愛してほしいとかそういうのではなくて、ただ私の中にそういう想い出として消えないでほしいと私の深い部分で思ってしまっているから、こういう気持ちになるのだろうと思う。失恋とか、悲しい恋とか、そういうものではない。


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