煙は消える
喫煙所に居る。
今やめっきり減ってしまったであろう喫煙者達は、社会から押し出されるように、夏の暑い日も冬の寒い日も、屋外に設けられた小汚い灰皿の横に立ち、ため息にも似た煙を吐き続ける。
その喫煙所に備えてある灰皿はすっかりくたびれていて、今までここでため息を吐き続けた人間の残像を感じ取る事が出来た。
あるものはスマートフォンをいじくり回しながら、あるものは目の前を往来する人々を見るともなしに見ながら、あるものはただただ俯きながら。
彼らが吐いた煙は言葉も乗せずに漂って、たまたまそこを通りかかった風に融け、空に消えてゆく。
とても暑い夕方だった。
じっとしているだけで背中に流れる汗を感じる。頭皮が熱を帯びていく。舌が妙に乾いている。
もくもくと連なる入道雲を横目に見ながら、負けじと、僕も、もくもくと煙を吐き出す。
結局、夏の暑さにも入道雲にも一切敵わず、煙は僕の目の前で消えた。
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