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「無償で頼む」ということ
残念なことに、駆け出しのクリエイターと切っても切り離せない話が「搾取」ではないでしょうか。
単価がばかみたいに安い仕事というのはいくらでもあるし、そういう場合の常套句は「実績になりますよ」だったりしますよね。
もちろん、そういった仕事は飛び込みに限りません。友人知人からの「ちょっとタダで」とか「友達価格でお願いします」みたいな話はよく聞きます。
かくいうわたしも、無償で仕事を受けたり、頼んだりしたことは何度もあります。「Bさんは友達が多いし、たくさん助けてもらえていいよね」と言われることもあるけど、実はそういったトラブルを起こさないために心がけていることがいくつもあります。
そういう場合、どうするべきか。無償や格安で仕事を頼まれた時、頼む時の心構えや注意点をまとめておきます。
人間関係の基本はギブアンドテイク
大昔に歴史の授業で習った記憶があるけど、わたしは人間関係の基本は「ギブアンドテイク」だと思っています。なんか「ギブ」って言うとベンチャーの人っぽいですよね。
一方的に与えるだけの関係なんて存在しない。これは友人関係でも、恋愛関係でもそうだと思っています。そうそう、好きなバンドの曲にこんな歌詞があるので紹介しておきます。
四六時中 想うのは 簡単なことじゃない
見返りのない愛を 貫けるほど強くないんだよ
ガラスみたいに もろくて弱いんだけど
君に愛されるなら 強くなれそうな気がするの
You Should Love Me/ときめきエキスプレス
閑話休題。
人から何かもらった場合、何かを返さなくてはいけない。これってけっこう大変なことですよね。
もちろん、それが「お金」であることがベストです。でも、どうやったって払えないような状況があるのもまた事実。
そういう時に、何を返す/返してもらうべきでしょうか。わたしは「恩」だと思っています。
わたしが無償で引き受けた仕事
わたしはクレイジースタディで記事を書き始めた当初、実は原稿料をいただいていませんでした。
そのため、「ライターになって何年ですか?」という質問にはクレイジースタディで初めて記事を書いた2018年の3月ではなく、サンポーで初めて原稿料をいただいて記事を書いた2018年8月を基準にしています。もうすぐ3年ですね。
なぜ、無償でも書いたか?というと、当時大学院生だったじきるう編集長が「おもしろライターがしっかり稼げるメディアを作りたいんです!」と熱いDMを送ってきたからです。そのあと「ボクは大学院生でお金もなく、原稿料はお支払いできないのですが……」と続いていて、思いっきりずっこけたのも今ではいい思い出です。
当時のわたしはブロガーでしたが、アフィリエイト等は貼っていませんでした。なんなら今でも貼ってないです。やりかたがよくわかんないので。
つまり、どこで書こうが収益は0円だったわけですね。媒体が個人ブログか、クレスタかというだけの違いです。「そんなことできるわけねぇだろ」と内心思いつつも、「まぁ若ぇのががんばりたいって言うなら力を貸してやるか」と、ものすごい上から目線で参加したのでした。あと、「嫌になったらいつでも抜ける」「抜けた場合は記事の全削除と個人ブログへの転載許可を求める」とか、めちゃめちゃたくさん条件を付けてました。だって怪しかったので……
無償でも、後悔はしていない
そんなこんなで書き始めたわけですが、クレスタで書いた記事がバズり、サンポーやRettyからライターとしてのお仕事が舞い込むようになりました。
わたし個人ではリーチしなかった層に記事が届いたのは、じきるうさんが全力でシェアしてくれたからだと思っています。わたしのライター活動の第一歩を踏み出せたのは、間違いなくクレスタのおかげでした。
じきるう編集長とは信頼関係も生まれ、じきるう編集長が所属する株式会社GIGのお仕事をいただいたり、メディアを紹介してもらうこともありました。結局、いまはわたしもGIGで業務委託として働いています。
わたしが無料で書いた記事以上に、彼も大きなものを返してくれたわけですよね。そりゃあ、信頼関係も生まれようというものです。
また、ほかにも無償で文章のお手伝いをしたことがあるのですが、それはわたしが相手に感謝をしていたから。
「この人のために何かしたい」と思っていれば、無償だってぜんぜん構わないんです。むしろ、自分のできることで少しでも恩を返せるなら、それってすごく嬉しいことじゃないですか。だから、わたしはなにひとつ後悔をしていません。
無償・格安で仕事を受ける基準として「後悔しないか」を基準にしておくといいでしょう。また、継続的な仕事はどこかで区切りをつけるようにしておくといいと思います。
自分が頼む場合はどうか
一方で、フリーライターという生活をしていると、人にいろいろとお願いをする場面があります。それは写真の撮影であったり、イラストであったり、インタビューの打診だったり。人によっては車の運転であったり、取材場所を借りるなんてこともあるかもしれません。
相手に十分な報酬が支払えればいいけど、場合によっては無償でお願いすることも多々。メディア側と交渉して、なんとかお金を引き出せればいいけども、残念ながらそううまくはいかないこともあります。
誰だって搾取をされたら嫌なもの。にも関わらず、自分は無償でお願いする、というのは心苦しいものがあります。そういう場合、わたしはこのようなことをしています。
・名義の露出を確認する
メディア側に、協力者の名義を入れられるよう確認を取ります。「実績になりますよ」とタダ働きさせるのと変わりませんが、お金が払えない以上、せめてそれぐらいはさせてほしいものです。
せめて、「自分の仕事」として実績を作ってもらいたい……という気持ちです。
・事前に条件を伝える
あらかじめ、打診をする際に「お金は出せないんですが……」と伝えておきます。また、相手に費用を負担させてしまうのは極力避けたいので、交通費などは自分の原稿料の中から払うようにしています。
実は、駆け出しのころは相手に金銭的負担を強いてしまうこともありましたが、その場合も包み隠さず、最初からお伝えしていました。自分のために時間とお金を使ってくれた方には、本当に今でも感謝をしていますし、いつか恩返しをしたいと思っています。
・断りやすい雰囲気を作る
その上で、「正直、条件はよくないので、ちょっとでも嫌だと思ったら遠慮せずに断ってください」と伝えるようにしています。
あくまでも無償なので、善意で協力してくれたら感謝こそすれど、本来は断られて当たり前の話です。断られて相手を恨んだり、嫌味を言うなどもってのほかですよね。
・相手に責任を持たせない
対価には責任がついて回ります。これは自論なのですが、逆に言えば、「対価がなければ責任は発生しない」ということになりませんか。
できなくても当たり前。写真がブレていようが、頼んだイラストが上がって来なかろうが、責任を取るのはすべて頼んだ自分です。「なんでちゃんとやらないんだよ!」と相手を責められるのは、対価を払った人間だけです。
なので、わたしは相手に責任を持たせません。自分が撮ってもいい場面の写真は自分でも撮っておきますし、相手に撮ってもらわなくてはいけないものはその場でちゃんと確認します。
イラストが上がってこなかった場合に備えて、代わりに差し込む素材を探す時間をあらかじめ確保しておきます。もちろんクオリティは下がるけど、最悪の場合は自分で何とかできる準備だけはしておきます。
・感謝を形で伝える
案件が終わった後、感謝するのは当たり前。ちゃんと言葉でも伝えますし、かたちに残すようにしています。
たとえば、記事の告知ツイートにリプライで「写真は誰々が撮ってくれました!」とメンションをつけて紹介し、記事で使えなかった写真を載せ、少しでも自分の周りにアピールをします。noteやブログで告知記事を書いた場合は、もうちょっと細かく紹介をしています。
もちろん、わたしにそんなに大きな影響力はないので、こういう時ばかりは「フォロワー100億人欲しい~!!!」という気持ちになりますが……
でも、頼んだ相手が見たときにどう思うでしょう。「ここまで感謝してくれたらなら、やってよかったな」と思ってくれるんじゃないでしょうか。
・いい条件の仕事を探す
悪条件で仕事をお願いした相手には、できるだけいい条件のお仕事もお願いしたいなと思っています。お手伝いはあくまでも「借り」。借りは返しておかなくては、対等な関係で友達付き合いできないじゃないですか。
もちろん、なかなかいい条件のお仕事が来ないこともあります。でも、今度いい条件のお仕事があったら、ぜひあの人に借りを返したい……わたしの頭のなかには、思い浮かぶ相手がまだ何人もいます。頼む、いい仕事来てくれ~!!!
お金を払ったほうが楽
どうでしょう、正直「お金を払ったほうが楽」だと思いませんか?
こんなことを書いているわたしだって、もしかしたらまだ借りを返せていないあの人に、いつか縁を切られてしまうかもしれません。タダより高いものはないのです。
「信頼」という通貨がなくなったとき、そこには何が残るのでしょうか。
友達でい続けるために
信頼を通貨と言いましたが、わたしは人との関係をポイント制だと思っている節があります。ほら、ギャルゲーとかであるでしょう。何かやったら好感度が上がったり下がったりするやつ。
昔の友達から、お誘いが届くことがあります。たとえば演劇だったり個展だったり、「やるから来てね」ってメッセージ、来たことありませんか?
普段から連絡していない相手からそういうメッセージが来ても、正直既読スルーしちゃいますよね。都合のいい時だけ連絡してくんじゃねぇよ!って思いません?それはもう、自分の中のポイントが減って「友達」以下になっているから。
もちろん、同窓会で合って話に花が咲いて、そこからまた付き合いが始まる……みたいなこともありますが、結局のところ友達って「普段どれだけコミュニケーションを取っているか」じゃないですか。
大切な相手とは、しっかりコミュニケーションを取っておくべきです。「あの人とは信頼関係できてるからいいや」と思ってコミュニケーションを取らずにいると、いつしかその関係は破綻しているかもしれません。
なんでそこまでやるの?
わたしが友達にこういうことをしているのは元々「友達が欲しい」と思ってSNSを始めたからです。リアルでの友達が少ないわたしは、たとえ文章を書かなくなっても、ずっと仲良くしてくれる友達が欲しいなと思って日々インターネットで生きています。
だから、友達は大切にしたいし、やってくれたことには恩を感じています。思ってるだけじゃ伝わらないので、具体的に感謝もするし、いい仕事も回したいです。
でも、そうでない人はどうでしょう。これ、めちゃめちゃ「コスト」じゃありません?人間関係を維持するためにコミュニケーションをこまめにとって、お金をかけない代わりに気を遣う。こんなの、絶対割に合わないと思います。
「友達だから」で相手に納得して動いてもらうのって、かなり大変です。溜め込んだ不満はいつか爆発します。愛や信頼度が高いほど、裏切られた場合には憎しみが強くなります。
友達を失ってしまうだけでなく、内部事情を晒されて、社会的に大ダメージを受けることもあります。安く抑えたつもりが高くつくパターンですよね。
仕事には正当な対価を
だから、覚悟や想いがない人は、「友達営業」をするべきではないと思います。わたしもそれなりに覚悟や想いを持ってるつもりですが、それだって知らないうちに相手に不満を抱かせているかもしれません。正直、そういう怖さってめちゃめちゃあります。
きちんと対価を払ってやってもらうほうが、お互いにとっていちばん幸せなかたちだと思うのです。
嫌な思いをするクリエイターが、少しでも減りますように。
#エッセイ #日記 #コミュニケーション #人間関係 #思考 #価値観
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