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改めて問う。そこに愛はあるか。
先日、note酒場で知り合った嘉晶さんとお会いしてきた。
嘉晶さんは、会場では5分ほどしかお話をしていないかただ。むしろ名刺交換しかしていないのでは?というくらいの、「内容の薄い」コミュニケーションしか取ることができなかった。
が、嘉晶さんはそんな5分話しただけのわたしをキャラクターにして、note酒場のマンガエッセイに登場させてくださったのだ。ほかのそうそうたる有名なかたがたと一緒にだ。おおう、まじか。なんだよあなた、いいひとかよ!!!
どうだ。いい男でしょう、わたし。へへっ。
あ、ついつい自慢したいだけの一文を入れてしまった。申し訳ない。
その後、noteやTwitterで交流がはじまり、すごくあたたかく、ものごとと真摯に向き合うかたなのだなぁ、という印象を抱いた。
男性があまり得意ではない、とnoteに書かれていたこともあって、お話したい気持ちはあったものの、お誘いをするのは躊躇していた。
が、ウェブメディアびっくりセールにいらしていただいたことをきっかけに、お会いするはこびとなったのだ。ありがたい。
*
長い時間が、一瞬で過ぎ去るようだった。
仕事の話やnoteの話、創作の話にすきなもの、きらいなものの話。
自分のルーツや土地の話まで、どれだけ話をしても話題が尽きなかった。
実際にお会いした嘉晶さんは、note読んで感じていたお人柄の通り、いや、それ以上に魅力的なかただった。
特に印象に残ったのは、「他人の作ったもの」への愛が、すごいことだ。
先のウェブメディアびっくりセールでは「少年Bが高校生のころ書いた黒歴史小説をまとめた本」を出した。
とんでもないところで未完になっている、そのくせ文字数だけはおおい。へたくそなファンタジー小説だ。
これは自分でも「黒歴史」として出している。作者からして、おもしろがって読んでもらうことを想定している本だが、彼女はそれをしなかった。
「この主人公は、このあとどうなってしまうんですか?」
18年前のわたしが願った、純粋な「小説」としての向き合いかたをしてくれたのだ。未完に終わった物語の続きを。この小説を通して、わたしがいったいどんなことを、どんな気持ちを描きたかったのか。
そこに焦点を当てて読んでくれたのだ。なんてあたたかい読者なのだろう。
ファンタジーの体裁を取りながらも、ほんとうは人間の持つさまざまな「コンプレックス」について書きたかったこと。
正義の反対は、またちがった別の「正義」であること。
自分ではどうしようもない「才能の限界」について。
それでも「自分の身の丈に合った」世界を救いたいということ。
「そういうことをすごく、書きたかったんだ。」
そう話すわたしはいつしか、18年前に戻っているような気がした。
そう、あの日、あの喫茶店で、話していたのはたしかに高校生のころのわたしだったのだ。
もちろん、覚えていない箇所もいくつもあったが、自分でも驚くぐらい、覚えていた。あの年に生まれた子どもはもう、大学受験に向かわなければならないというのに。そんなに前のことを、どうしてこんなに覚えているんだろう。
「もう、一生忘れられないですよね。」
そう言って彼女は笑った。
「私にも、そんな黒歴史はありますから。」
*
話は変わるが、公私ともに仲の良いライターさんの記事が先日リリースされた。ある本についての記事だった。
昨年末だったか、電話をしたときに「仕事で本を読まなくてはいけない、明日までに○冊だ」ということを言っていた。記事の内容について、おそらくあれのことだろうな、と予想がついた。
ただ、いざ記事を読んでみると、仕事で読んだとはおもえないほどの愛情の深さだった。
たしかに、ほんとうに好きで、何度も何度も読みこんだかたには負けるかもしれない。だが、そこにあったのは取材を楽しみ、本の登場人物になりきろうとする友の姿だった。
いま自分にできる、最大限の愛を表現しようとしていたのが、一見しただけのわたしにもわかった。
とても、いい記事だった。
「これさー、書いてるときぜったいたのしかったでしょ?」
「うん、めっちゃたのしかったよ」
「だよね、わかる。めっちゃ伝わってきた。」
出会いはたまたま、仕事というかたちでやってきたのかもしれない。
でもきっと、そのライターさんは遅かれ早かれ、あの本と出会って、スキになっていたような気がした。
そのひとが書いた記事の中で、もしかしたら近々あれが代表作と呼ばれるようになるかもしれない。
久々の記事でこんなにいいものを書きやがって。
さいこうじゃねぇか。ちくしょう。……くやしいぜ。
*
本の人物になろうとした友人。わたしの描きたかったものに興味を持ってくれた嘉晶さん。どちらもさいこうにリスペクトが深かった。
文章の巧拙は、ある。でも、それ以上に。
他者という存在と向き合うとき、これがいちばんたいせつなものであるとおもう。
わたしは、なにかについて書くときに、彼女らのような敬意を持って書けているだろうか。あのころのような、熱い想いを込めた文章が書けているだろうか。
だから、いま改めて自分に問う。
果たしておまえの目の前のその文章には、愛があるのかと。
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