この医学書・看護書がすごい!2021【金芳堂】
トップバッターは昨年に引き続き、京都にある出版社、金芳堂さんです。
SNSでの活動がめざましく、金芳堂のアカウントでは平日はほぼ毎日、新刊、近刊、好評書案内が発信されています。その案内の合間にはさみこまれるHさんの呟きにもご注目ください。突っ込んだら負けです。
noteでも編集後記と銘打って、本の概要と見どころ、特長、裏話、制作秘話などをアップしていますのでこちらもお見逃しなく!
さて、金芳堂営業担当イチオシはこちら!
『診察室の陰性感情』
『陰性感情』って言葉、この本のタイトルで初めて知りました。
本書のはじめにはこのように書かれています。相手に対するネガティブな印象というのは、人間は誰しももつものですよね。それは見た目であったり、態度であったりと、はたからわかりやすいものである場合と、言葉では説明できない、なにも悪いことはないのに直感で「この人、苦手だな……」と第一印象で感じてしまったりすることもあるでしょう(そしてその勘が結構後々まで引きずってしまったりするのです)。
この本は医療従事者に向けた本です。厄介だ、面倒だ、苦手だと感じるのは患者に対してです。
医師なのに、看護師なのに、なにかしらの身体の不調を訴えている患者さんに対してマイナスな感情を抱くのはよくないのではという罪悪感を覚えつつも、いやそうは言ってもこれは流石に腹が立つという感情は否定できない。しかし、このままでは診療に差し障ってしまう。では、この陰性感情をどうすればいいのか。
陰性感情をただ抑え込むという力ずくの対処ではなく、果たしてその陰性感情はどうして生じているのか、俯瞰的にみることによって対処法の糸口を探る一冊です。そもそも感情とはなにかから解説されているので、とっかかりがとてもわかりやすく、加藤先生の優しい語り口でスムーズに読み進めていけます。
私は医療従事者ではないので患者目線で読みましたが、各章の章末についているコラムはところどころ「そうそう、そうなんだよなあ」と頷いてしまうところがありました。
医師と患者、お互いのわだかまりを解消するために活用できる本だと思います。
続いて、売り場担当イチオシの本はこちらです。
『Dr.ミヤタクの研修医養成ギプス
-わたしが実践してきた研修医指導内容とその方法論-』
表紙を見た途端、前奏が聞こえてきます。そして高らかに聞こえてくる歌が。
おもいこんだら〜です。とれないボールがあるものかではないです。
びっくりするくらいインパクトの強い表紙ですよね。
個人的に今年刊行の医学書の表紙デザインベストスリーは、
『器質か心因か』(中外医学社)『百症例式 早期胃癌・早期食道癌 内視鏡拾い上げ徹底トレーニング』(医学書院)、そしてこの『Dr.ミヤタクの研修医養成ギプス』でした。
某国民的野球漫画をモチーフにしたイラストでぐっと引きこんで、タイトルでとどめですよ。研修医養成ギプス!
そういえば大リーガーって言わなくなったのはいつからなんでしょうか。消える魔球がついた野球盤もありましたけど、あれは打てないのでは……?
さておき、内容です。
Dr.ミヤタクの研修医指導は、EBM(Evidence based medicine:科学的な根拠に基づいた医療)ではなく、Experience based medicine(経験に基づいた医療)に近いもの。
まずプロローグで『Experience based medicineとしてのEBMを語る覚悟』として触れています。そしてこれが一冊通してのテーマでもあるのです。
Dr.ミヤタクが長年培っていたものを30の鍛錬として紹介、解説。巻末には『つまづいた者たちへのエール』というDr.ミヤタクの優しさがついています。
そういえば、小さい頃によくお世話になった小児科の先生はトントンと背中をいつも診察の時にしてくれて、なにをしているのか不思議だったなあ、なんてことも思い出した一冊でした。
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