【補足とあとがきと謝罪】テキヤと初心会記事について
初心会研究家の初心カイです。いつも記事を読んで頂きありがとうございます。
「初心会ってヤクザなのか? → いや、そうではないのです ─テキヤと私たちの見えない関係─」を読んで頂き、ありがとうございました。正直なところ、ここまで反響がある内容とは思っておらずビックリしました。
そんな記事なのですが、とある指摘を受けました。これは実際にツイートを読んで頂いた方がわかりやすいと思うので、そのまま転載致します。
挨拶抜きで長文失礼します
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
時代背景による常識の違いについて補足させていただきます
まず日本の警察機構が十全に機能するようになったのはごく最近の事です
また定価という商習慣が根付き、玩具や道具の大量生産がなされたのも最近の事なのです
これが香具師を語る上で大きなポイントとなります
昭和とは「闇米を食わずに餓死した裁判官が語りぐさになる」時代です
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
つまり大なり小なり無法者でなければ生きていくのが難しい時代だったのです
遠くの邏卒より近くの極道
香具師は特に弱者であり顕著でありますが
暴力組織を組むか、庇護下に入らないと生きにくい時代は長かったのです
つまりヤクザとは「トラブルから身内を守る」互助集団のなれはてなのです
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
みかじめ料の次の金儲けの手段が博打などになります
そのため香具師(零細企業の個人商店)集団が母体だったとされるヤクザもいます
漁師、農民、商人、武家どこからでもヤクザになりうる時代がかつてあったのです
とくに個人事業主や数人規模の零細企業の集団である香具師、テキ屋は立場が弱い
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
そのため法の庇護(全国的な警察組織)が頼りにならない時代はヤクザ(地元の互助組織)の庇護が必要で、それゆえに両者の関係は長らく続くのです
さて、こうした時代背景を鑑みると文中にある「疑似家長制度」「挨拶」「命名規則」の類似性は、この二者に限った事ではないと気がつくでしょう
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
まずネーミングセンスが似てるのは「昔はこういう名前がイケてた」からです
土木、運送、漁業、昔ながらの屋号が残っているところはどこもこんなもんです
組織図の問題も時代背景によるもなです
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
公権力をあてにできない時代では個人の自由・平等は誰にも守ってもらえません
現代のようなフラットな組織にとって不利な状態なのです
したがって情で結ばれた一点集中型の疑似家族、家長制度の組織があらゆる業界で幅をきかせていたのです
そんな環境ですので、他所者と顔を合わす時、犯罪者でないぞ、盗みもかどわかしもしないぞ、とお互いに身の潔白を天地神明に誓う必要がありました
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
これが挨拶です
聞きかじりですがこれは世界各国どこでも近代化が起こるまで長く続いていた風習なのだそうです
当然、香具師に限った話ではありません
私が悪党でないことは生まれ育った〇〇村の人が保証します
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
私の所属する会社は✕✕系列ですがご存知ないでしょうか
嘘偽りでないと△△の話ができる事で信じてください
私は盗みませんし、盗まれたらみなで報復します
仮に誰かが宝を盗まれても私は潔白だと信じてください
これが挨拶の意味合いです
と、まあ、このように…
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
時代性の違いで過度に怪しくみえるだけで香具師、とくに戦後の(神農氏直系でない)テキ屋は
流通も工業も未発達、何から何まで個人で買付できるような時代の零細個人事業主だったのです
きっとユーバーイーツやITベンチャーに近い層の受け皿だったのでしょう
ゆえに「テキ屋が店を構えた」は驚くべきことではありません
— くふる (@kyhr_kyhr) June 13, 2023
小説「狼と香辛料」の主人公のように、買い付けでうまく儲けた零細企業が店舗を構え、元々ノウハウがある商売を続けているだけなのです
やがて同業者組合が出来て大手玩具メーカーと付き合いができたのは自然の成り行きだと思いませんか?
凄まじく乱暴に年表にします
— くふる (@kyhr_kyhr) June 14, 2023
1945年頃、終戦後の混乱期。個人事業主と職人華やかなりし時代。主な商材は‘大人の’高級カードゲーム
1955年頃、社内改革。職人の時代が終わり、工場労働者の時代へ
1960年頃、子供向け商材を工場で大量生産して大成功
この20年で商売の方法が全て変わったはずです
1960年付近の時代はネットもない、大規模ショッピングモールもあんまりない、コンビニもチェーンもない『おらが町の』個人商店の時代です
— くふる (@kyhr_kyhr) June 14, 2023
電気屋、玩具屋、お菓子屋、床屋、飯屋が商店街を作っていました
それらの店に収まった人、品物を卸す3次受け4次受けの小さな問屋になった人も多いと推測します
終戦のとき20歳、個人事業者として世に羽ばたき、荒波に揉まれた商人の卵は
— くふる (@kyhr_kyhr) June 14, 2023
工場も流通もすっかり成長した1965年に働き盛りの40歳を迎えるわけです
そう、この頃にはもうメインストリームは商社の時代
二次問屋、三次問屋が面白い動きをしていた時代に変化してるわけなんですね
なのでこれはあくまで個人的な推測ですが…
— くふる (@kyhr_kyhr) June 14, 2023
テキ屋と玩具職人の蜜月は、おそらく1960年頃に断絶してるのではないかと
各社が工場でガーッと作った子供向け玩具をバンバン倉庫に仕入れ、それを百貨店、全国の小さな玩具屋、文房具屋などに届ける、問屋ネットワークの方に注目すべきかと感じます。
くふるさんのツイートは他にもあるのですが、切りが無いので一応ここで転載切らせて頂きます。
指摘を受けたとおり、先の私の記事は歴史認識に甘いところがあり、考証の不備がありました。初心会のネーミングセンスに至るところや、疑似家族制へに対する指摘はまさしく私の誤解によるものです。申し訳ないです。
本来後書きで書こうと思っていたことなのですが、私は初心会を調べようと思って活動を始めました。そのとき、コンシューマーだけでいいや、日本の流通だけ調べればいいや、と思っていたのですが、次第にアタリショックもわからないといけない、北米の事情もわからないと初心会が理解できない、そしてファミコン以前の流通を理解していないといけない……まで来てしまい、テキヤと香具師を調べるまでに至りました。
ところがご指摘を受けた通り、テキヤと香具師を調べるには、まず昭和の時代全体を把握しないといけないところに到達しました。それを把握する前に書いた先の記事は、色々と不備があり片手落ちな内容であったと言わざるを得ません。
該当の記事にはいくつか修正をいれ、警告文を差し込みます(購入してしまった方に対しては返金も受け付けています)。
と、いうわけでこれから私はテキヤとおもちゃ問屋と昭和風俗についてがっつり調べていきます。時間がかかるかもしれませんが、再びその際、初心会についての記事を公開しようと思います。よろしくお願いします。