狩猟日記
雨は容赦なく降り注ぎ、森全体を薄暗い陰影で包んでいた。北海道の広大な原野は、まるで巨人の呼吸によって生み出された水墨画のようだった。プロの狩猟者、しょうのは、この静寂を破るべく、手にした銃を握り締める。
今日の獲物は、エゾシカ。その雄大な姿は、この北の大地の象徴とも言える。しかし、同時に農作物への被害をもたらす厄介者でもある。しょうのは、この自然との共存という難しい課題を背負い、今日も狩猟へと繰り出す。
選んだ方法は、流し猟だ。風向きや獣道の痕跡を頼りに、エゾシカの気配を辿っていく。雨音が周囲の音を消し込み、集中力を高める。視界は狭く、五感を研ぎ澄ませなければならない。
獣道に入ると、土が柔らかく、つい先程まで何かが通った形跡が見て取れる。心臓が鼓動を早める。エゾシカとの遭遇は、もはや時間の問題だ。
茂みの中を進むにつれ、緊張感は高まっていく。木の葉が擦れる音、小鳥のさえずり、一つ一つの音が神経を研ぎ澄ませる。そして、ついにその気配を感じ取った。
茂みの奥から、かすかな物音が聞こえる。息を潜め、銃身をゆっくりと目標に向ける。視界が開けた瞬間、そこに現れたのは、想像をはるかに超える雄大なエゾシカの姿だった。
しょうのは、深呼吸をし、冷静さを保とうとする。しかし、興奮と緊張が入り混じり、体が震える。一瞬の躊躇は許されない。引き金を引く指に力が入る。
銃声が響き渡り、森全体が静まり返った。茂みの中を覗き込むと、エゾシカの姿はそこになかった。成功したのか、それとも失敗に終わったのか。心臓がバクバクと音を立てている。
しょうのは、ゆっくりと茂みの中へと足を踏み入れる。そして、倒れているエゾシカを発見した。達成感と安堵感が同時に押し寄せ、思わず膝をつく。
雨は止まず、エゾシカの毛皮は雨に濡れて光を放っていた。しょうのは、この命を無駄にすることなく、感謝の気持ちを込めて解体作業を始める。
今日の狩猟は、しょうのにとって忘れられない経験となった。自然の厳しさと美しさを同時に味わった。そして、この大地で生きる者としての責任を改めて感じた。
しょうのは、獲物を背負い、森を後にした。夕焼けが森を染め、美しい光景が広がっていた。明日もまた、この自然の中で生きていく。
※このnoteは事実を基にしたフィクションです
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