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【植物と短歌】ネジバナと螺旋

ネジバナ、別名もじずり。
4~8月にかけて日本全国で花を見ることができる。


ネジバナ

螺旋状に花をつけるかわいい植物だ。
英語では「乙女の巻き毛(lady's tresse)」という異名を持つらしい。

日本の中でも花形や花色に変異が多いとのことだ。

白い花をつけるネジバナ

では、そんなネジバナが登場する短歌にはどのようなものがあるのだろうか。

今回調べてみたところ、ネジバナは古い歌から現代短歌まで広く登場していた。

まずは百人一首のなかから一首。

陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにしわれならなくに
(陸奥で織られる「しのぶもじずり」の摺り衣のように、乱れる私の心。いったい誰のせいでしょう。私のせいではないのに(あなたのせいですよ)。)

河原左大臣 

現代語訳 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし われならなくに | 小倉山荘(ブランドサイト) | 京都せんべい おかき専門店 長岡京 小倉山荘 (ogurasansou.jp.net)


また、以下の歌に登場するねつこ草は一説にはネジバナを指すと言われている(オキナグサという説もあり)。

芝付の御宇良崎なるねつこ草相見ずあれば我れ恋ひめやも
(芝付の三浦崎にあるねっこ草のように、互いに逢うことがなかったなら、私は何で今、恋に苦しむことがあるでしょうか。)

よみ人知らず
現代語訳 https://www.hama-park.or.jp/zukan/manyosyokubutsu-okinagusa.html

上記二首の共通点として、恋の苦しみを歌ったものだということが挙げられるだろう。
ねじれが苦しみと結びつくのかもしれない。


では現代の作品ではどうだろうか。

捩花のちいさな螺旋 消息をたずねてみたいおさなともだち

原田彩加 http://www.shintanka.com/shin-ei/kajin/harada-saika/1861

茜さす天の母までネジバナの螺旋を伝い届けものあり

永洋

ネジバナは母さんが好きな花だった母のない子がふとつぶやけり

鳥海昭子

先ほどと異なり3首とも恋の歌ではない。
この3首に共通することとしては、もう会うことのない人を思い出しているという点が挙げられる。
それはなぜだろうか。

以下は私の考察である。
螺旋状のものと言えば螺旋階段が思い浮かぶ。
ネジバナの螺旋から螺旋階段を想起し、そこから今自分がいる場所と違う場所を繋ぐようなイメージ(今回の歌では現在と過去)が浮かぶのではないだろうか。

いつから日本に螺旋階段があるのか調べてみたが分からなかった。しかし和歌の時代にはおそらくなかっただろう。

ネジバナから過去を想起するのは現代人ならではなのかもしれない。


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