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龍王街の夜陰第1話 第4章:交錯する運命の刃

第4章:交錯する運命の刃

路地裏に響く微かな音が、張陽の足を止めた。夜の龍王街では小さな物音も異様に響く。張はその異変に気づき、すぐさま音のした方向へ向かって走り出した。

暗い路地の奥、そこには三浦祐介が倒れていた。体中に無数の傷を負い、地面は血にそまっている。張は慌てて膝をつき、肩を軽く揺らした。「おい、祐介!大丈夫か!」

反応は鈍い。祐介はかすかに目を開け、弱々しい声で呟いた。「……兄貴……玲香を……守れ……」

張は祐介のその言葉に歯を食いしばり、携帯電話を取り出した。「くそっ……江の野郎なんてことを・・・!」怒りと焦りを押し殺しながら、李俊傑警視に電話をかける。

「李警視、張陽です。祐介がやられました。江虎の仕業です。すでに現場にはいませんが、手配をお願いします!」張の声には、普段の冷静さが消え、緊迫感が漂っていた。

李俊傑は電話越しの張の報告を聞き終えると即座に行動に移した。「分かった、すぐ行く。場所を教えろ。」短いやり取りの後、李は部下を引き連れ、現場に向けて急行した。

ほどなくして、パトカーの赤い光が路地を染めた。李俊傑が到着すると、祐介を介抱する張の姿が目に入った。「張、状況を報告しろ。」李の声は冷静だが、その表情には緊迫感を漂わせていた。

「江虎です。祐介を襲い、やりたい放題です。」張は祐介をそっと地面に横たえながら答えた。「玲香にまで手を出そうとしているんです。」

李は黙ったまま周囲を見回し、部下たちに指示を出した。「現場を押さえろ。江虎の手下を見つけ次第、全員拘束だ。」その言葉に張は深く頷き、「ありがとうございます、李警視。すみませんが、祐介の手当も急ぎます」と丁寧に返した。

路地裏に緊張が走る中、張はもう一度祐介に目を向けた。「お前が守りたいもの、俺たちが一緒に守るさ。だから、今は無理するな。」

祐介は張の言葉に応えるように、かすかに頷いた。

その後、警察の包囲網が江虎を追い詰めていく。龍王街の影で動く江虎も、この夜の緊迫感を感じ取っていた。「たかが一人の小僧のために・・・」と唇をかみしめながら路地裏を抜け、逃げ延びようとする江虎の背後に迫る赤い光が、彼の冷静さを次第に失わせていく。

「李俊傑……!」江虎は小さく呟きながら、険しい表情で夜の街を駆け抜けた。
(第4章終わり)

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