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#69『”君に恋するただの女です ”SHISHAMO「恋じゃなかったら」を語る』
今回は2024年4月10日にリリースされた8thアルバムSHISHAMO8の13曲目に収録されている「恋じゃなかったら」について語ります。
簡単に説明すると”走り出したくなるような恋する気持ち”がテーマに描かれています。残念ながらMVはありませんがYouTubeにて音源がありますので載せておきます。
それでは語っていきます。
一番Aメロの歌詞
君が特別さ
それだけは分かる
だけど私はまだ何も分からない
自分のことさえ
まず、この曲のイントロ部分。4回繰り返すギターのメロディーが癖になります。
さて冒頭のフレーズですが、「君が特別さ それだけはわかる」とある男の人を特別に想っている主人公。「だけど私はまだ何も分からない 自分のことさえ」と、この”特別”という感情が果たして何なのか、わからないでいるという状況ですね。
そして、ここのAメロの後、イントロ部分のギターのメロディーをまた2回繰り返します。本当に頭に残るメロディーなんですよね(笑)。
一番Bメロの歌詞
伝えたい言葉の正体は
きっとありふれたものだろう
だから言いたくないんだけど
でも君を見つめてると
ふと溢れてしまいそうで
それを我慢したら
やだな、涙が溢れそうで
「伝えたい言葉の正体は きっとありふれたものだろう」とおそらくこれが”恋”っていうものなんだろうと認識し始めた主人公。
でも「だから言いたくないないんだけど」と”恋”という言葉に否定的になっているのは、誰かを好きだと認めることへの照れくささや、彼を特別に想う気持ちを、”恋”というありふれた言葉で表現したくないという心情が描かれているように思いました。
次の「でも君を見つめてると ふと溢れてしまいそうで それを我慢したら やだな、涙が溢れそうで」というフレーズ。やっぱり誰かを思う気持ちって止められないし、コントロールできるものじゃないですよね。この気持ちを我慢すると考えるだけで涙が溢れそうというのが、主人公が彼を想う気持ちの強さを表しているなと思います。
一番サビの歌詞
ああ、恋じゃなかったら
ああ、これが恋じゃなかったら
何だと言うんだろう
もう遠慮はしたくないんだ
したくないんだ
「ああ、恋じゃなかったら ああ、これが恋じゃなかったら 何だと言うんだろう」ともう、この気持ちの正体が恋なんだと自分の中でハッキリしたということがわかります。「もう遠慮はしたくないんだ したくないんだ」というのは、彼のことが好きだという自分の気持ちに素直になっていこうと決心したということですよね。
そして、このサビの後の間奏部分ですが、冒頭のイントロであるギターメロディーを今度は”フーフーフーフーフウッ フッフッー”って歌うっていう、面白い曲展開になっています(冒頭の音源1:45辺り~)。これは思わず口ずさんでしまいます(笑)。
Cメロの歌詞
よくある茶番で終わらせたくない
そこらへんに転がってる恋とは違うって
特別なんだって
宝物なんだって
ドラマみたいなの
なのに何で私
よくあるしょーもないラブソングで
君を思い出しちゃってんだろう
「よくある茶番で終わらせたくない そこらへんに転がってる恋とは違うって 特別なんだって 宝物なんだって ドラマみたいなの」と私(主人公)が彼を想う気持ちは、その他の人がしているような容易い恋なんかじゃないということですよね。
でも「なのに何で私 よくあるしょーもないラブソングで 君を思い出しちゃってんだろう」と、ふとそんなことを思う主人公。次の歌詞に続きます。
Dメロの歌詞
認めたらきっと楽になれるよね
私は今ただの女
君に恋するただの女です
私のしている恋はそこら辺に転がっている恋とは違って特別だと思っていたけれど、その私(主人公)も恋をしている大勢の女の子の一人にしか過ぎないということに気が付いたということですよね。
最後のサビの歌詞①
ああ、恋じゃなかったら
ああ、これが恋じゃなかったら
死んでやっても構わない
今はただ叫びたい気持ち
「死んでやっても構わない」って、それはちょっと言い過ぎでしょと突っ込みたくなりますが、でも「今はただ叫びたい気持ち」とそれくらい恋をすることへの素晴らしさを主人公は噛みしめているということなんだと思います。
個人的にですが、Dメロから最後のサビに続く「君に恋するただの女です」から「ああ、恋じゃなかったら」の流れが凄く感情がのった歌い方をしていて好きです(冒頭の音源3:11辺り~)。
最後のサビの歌詞②
なんて気持ちがいいんだろう
君を好きだという気持ちだけで
どこまでも走っていける
何故こんなに涙が出るの
何の役にも立たない
馬鹿なプライドはもう
ひと口大に切って焼いて塩胡椒して食べた
腹も満たせた
また走ってく
君が好きだから
「なんて気持ちがいいんだろう 君を好きだという気持ちだけで どこまでも走っていける 何故こんなに涙が出るの」というフレーズ。まさにその通りですよね。恋をしているときにしかないエネルギーみたいなものってあるなと思っていて、誰かを想うだけで凄い力を発揮できたり、何気ない日常がいつもより輝いているように感じたりと。
次の「何の役にも立たない 馬鹿なプライドはもう ひと口大に切って焼いて塩胡椒して食べた 腹も満たせた」というのは、これまでの歌詞に出てきた「伝えたい言葉の正体は きっとありふれたものだろう だから言いたくないんだけど」や「そこら辺に転がってる恋とは違うって」というくだりがあったと思いますが、そういうような意味のないプライドは恋をすることに必要ないよねという意味だと思われます。
それにしても「ひと口大に切って焼いて塩胡椒して食べた 腹も満たせた」という中々思い切った遊び心のある歌詞をぶっこんでくる辺りが、作詞をしているギターボーカルの宮崎朝子のセンスが溢れ出ていますよね。実に面白いなと思います。
また、この最後のサビ②の部分は「今はただ叫びたい気持ち」という歌詞を表現するかのように、ギターボーカルの宮崎朝子と共に、ドラムの吉川美冴貴とベースの松岡彩も一緒に歌ってるんですよね。ラストの「また走ってく 君が好きだから」というフレーズの後に”アーアーアーッ”って叫ぶんですけど、そこなんかも好きな気持ちで胸がいっぱいな感じが伝わってきて、グッとするんですよね。そこにも是非注目して聴いて欲しいなと思います(冒頭の音源3:41辺り~)。
まとめ
「恋じゃなかったら」いかがでしたでしょうか。誰かを好きなること、恋をすることっていいよねって思わせてくれる一曲だなと思いました。
恋愛の曲となると誰かを好きになった時のドキドキや楽しい瞬間や失恋をして辛くて悲しいという場面が切り取られることが多いと思うのですが、今回の曲というのがこれが恋をするということなんだ、恋をすることってこんなにも気持ちがいいことなんだと主人公が実感していくということが描かれており、新しい視点の恋愛の曲になっているのではないかと思います。
サウンド面も疾走感があっていいですよね。そして、先ほども書きましたが、イントロの部分のギターのメロディーのインパクト、”フーフーフーフーフウッ フッフッー”と歌う間奏部分、最後のサビではギターボーカルの宮崎朝子と共に、ドラムの吉川美冴貴とベースの松岡彩も一緒に歌うというパートがあったりと一曲の中にこんなにも色んな要素が入っている曲も珍しく、それがこの曲の魅力でもあるように思いました。
実はこの曲は8thアルバムSHISHAMO8のトリを飾っている曲なんですよね。この曲についてギターボーカルの宮崎朝子は「アルバム曲を意識して作ったのですが、完成に近づくにつれて、存在感が強くなっていった曲です。」と話しています。また、SHISHAMO3人で歌っている部分に対しては「意外と3人で歌う曲ってないので、新しいのになんか凄く『らしく』聴こえるなっていうのが新発見でした。」と、雑誌のインタビューで答えていました。
この曲をリリース後、ここ最近のライブでは最後にこの曲をもってくることが多く、SHISHAMOの中でもまた大事な立ち位置の一曲になっているのではないかと思います。
最後に”SHISHAMO ワンマンツアー2024初夏「退屈なハッピーエンドに迷い込んだのは君のせいだ」ダイジェスト”と題した映像がYouTubeにて公開されており、今回取り上げた「恋じゃなかったら」のライブ映像が一部観ることできますので載せておきます(下記の映像11:07辺りから)。
皆さんも是非聴いて見て下さい。