#61『”使われなくなったギターの心情”SHISHAMO「サブギターの歌」を語る』
今回は2013年11月13日にリリースされた1stアルバムSHISHAMOの9曲目に収録されている「サブギターの歌」について語ります。
簡単に説明するとサブギターを擬人化した曲になっており”使われなくなったギターの心情”がテーマに描かれています。この曲についてギターボーカルの宮崎朝子は『自分の部屋でくつろいでいる時にサブギターと「目が合い」寂しそうだと思い、いたたまれない気持ちになり書いた』と語っています。残念ながらMVはありませんが、YouTubeにて音源がありますので、載せておきます。
それでは語っていきます。
一番Aメロの歌詞
冒頭でも書きましたが「僕はサブギター」とこの曲の主人公は人ではなく”サブギター”ということが分かります。
「いつも使ってもらえないけど大事にしてね あいつが来てから寂しい毎日さ」というフレーズ。”あいつ”とは”新しいギター”のことですよね。新しいギターが来たことで、自分(サブギター)は使ってもらえなくなってしまったということが読み取れます。
「僕のことを嫌いになったのかい? あいつのどこがいいの? 僕よりちょっと高いだけじゃない…」と嘆く主人公のサブギター。きっと持ち主はサブギターのことを嫌いになった訳ではないんですよね。でも、同じ物(今回の場合はギター)だとしても、人間の心理的に新作や高価で性能がいい物に目移りしてしまうのはよくあることですよね。新しくやってきたギターに嫉妬してしまう主人公(サブギター)の気持ちが描かれていますね。
一番Bメロの歌詞
「いつも僕を弾いてくれてたよね いつも僕を持ち歩いてくれてたよね」というフレーズ。新しいギターが来るまでは、きっと主人公(サブギター)が一番の相棒だったと思うんです。そう思うと切ないですよね。
「あいつなんかよりも僕の方が君のこともっと満足させるよ」は、本当は新しいギターには敵わないとわかっていて、それでもまだまだ自分(サブギター)だっていける、全然劣ってなんかないんだぞと新しいギターという存在を認めたくないという心理が描かれているように思います。
一番サビの歌詞
先ほど一番のBメロで「あいつなんかよりも僕の方が君のこともっと満足させるよ」と言っていましたが、ここのサビで「メインギターのあいつには一生勝てない」となっていることから、やはり主人公(サブギター)は新しいギター(メインギター)には敵わないことを認めていることが分かります。
「君を想う気持ちだけならメインギター」というフレーズ。持ち主は新しいギターに目移りしたじゃないですか。それでも、持ち主のことを想い続けるなんて健気ですよね。これまた切ない歌詞だなと思います。
二番Aメロの歌詞
「今日は楽しいライブの日だけど」というフレーズからは主人公(サブギター)がメインで持ち主の手元で輝いていた過去があったことが読み取れます。でも、新しいギターがメインになってしまったことから「僕の出番なんてあるはずない」と落ち込んでいる訳ですよね。
「あいつの弦が全部切れちまえっていつも思ってる」というフレーズ。人間界でも「あの人さえいなければ」と他人を恨んでしまうことってあるじゃないですか。なんだかその感覚に近しいのかなと思います。その前のフレーズで「僕はほんと悪い子だよなあ」と分かっている感じもまた、何とも言えない気持ちになりますよね…。
二番Bメロの歌詞
なんと、あいつの弦切れないかなと思っていたら、本当に弦が切れてしまったという驚きの展開。
「待ちに待った僕の出番 また君の腕に抱いてもらえるんだ」と久しぶりにライブで大勢の観客の前で弾いてもらえることになって喜びを隠せない感じが伝わってきますよね。
二番サビの歌詞
久しぶりに弾いてもらえた主人公(サブギター)だったけれど、「さっき出ていた音とは全然違った」「所詮サブギターなんだね」と自分(サブギター)のギターとしての質の悪さに深くへこんでしまったことが分かります。
メインギターの代わりにステージに出られたことがかえって「やっと気づいた僕には 君といる資格なんて どこにもないよ」と言っているように、自分(サブギター)はもうギターとして終わったんだなということをより認識させてしまったように思います。
Cメロの歌詞
「生活の中で君の目の届かない場所」である、押し入れや壊れたギターケース行きになったサブギター。悲しいですよね。役目を終えてしまったら、後はもう用がないなんて…。
最後のサビの歌詞
「さようなら愛おしい君よ お幸せに」というフレーズ。「愛しい君よ」になっているのが最終的には押し入れの中に追いやられてしまったけれど、僕(サブギター)を一時はいつも弾いてくれて、大切にしてくれたことを感謝しているように感じますよね。
そして「君のことをこれからも頼んだよ」と最後にはあいつ呼ばわりしていた新しいギターに想いを託しているのがグッとしてしまいます。
ラストに「僕はサブギター」と叫んだ後に、アウトロで曲のテンポが段々と速くなって、激しいギターの音で曲が終わるんですよね。そこがまた、サブギターのどうしようもなくなってしまった気持ちを表現しているような気がします。
まとめ
まず、サブギターをテーマに歌にしようと思ったところが面白いですよね。人間じゃないものを擬人化して物語を進めていくところが、なんだか絵本の世界みたいだなと思いました。
そして、歌詞ですが新しいギターには敵わない主人公(サブギター)が終始とにかく切ないですよね。押し入れ行きになっても、新しいギターに目移りした持ち主を最後まで想い続けるところなんか辛くなってしまいます。
また、持ち主に対しては「いつも使ってもらえないけど大事にしてね」「いつも僕を弾いてくれてたよね」と柔らかい言葉の使い方をしていましたが、新しいギターに対しては「あいつ」呼ばわりしたり「弦が全部切れちまえ」っていう歌詞もあったように凄く敵対心を持った言葉使いになっていて、そこら辺の差別化も表現として上手いなと思いました。
途中メインギターの弦が切れて、一瞬サブギターが日向を再び浴びかけたように思いましたが、最後無理にハッピーエンドにしないところが悲しいけれど、そこがこの曲の良さなんじゃないかなと思います。ギターボーカルの宮崎朝子らしさが歌詞に出ていて個人的に良いなと思いました。
先ほども少し触れましたが、アウトロでテンポが速くなる部分は、SHISHAMOとして初めての試みだったそうです。曲調からも歌詞の世界観を表現していますよね。初期のころのSHISHAMOは特に歌詞も曲も凄く自由な感じがして面白味があるなと思います。
どんな物もいつか壊れてしまったり、その物よりも優れた何かが発明されたりしますよね。これって人間の世界にも通ずる部分があって、現時点どんなに活躍している人でも、月日が流れると良いパフォーマンスが出来なくなってしまったり、より才能がある人が現れたりしますよね。今、身の周りにある物や人の想いみたいなものも、進化していく世の中の流れには逆らえず、時間が経つと薄れてしまうことに寂しさを感じるというか上手く言えませんが、なんだかそういうことをふと感じさせる一曲だなと思いました。
永遠のものはない、新しいものもいいけれど、今あるものを大切に。
皆さんも「サブギターの歌」是非聴いて見て下さい。
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