#60『”大好きな彼との別れ”SHISHAMO「ハッピーエンド」を語る』
今回は2022年7月13日に配信シングルとしてリリースされた「ハッピーエンド」について語ります。この曲は2024年4月10日にリリースされた8thアルバムSHISHAMO8の12曲目にも収録されています。
簡単に説明すると”大好きだった彼と別れた直後の女性の心情”が描かれた夏の失恋ソングとなっています。ギターボーカルの宮崎朝子はこの曲について「虫も死ぬような暑さや太陽の眩しさをバンドサウンドで表現できた」「誰かを本当に好きになったことのある人にしかわからない絶望感みたいなものを描きたかった」と話しています。YouTubeにてMVが公開されていますので載せておきます。
それでは語っていきます。
一番Aメロの歌詞①
イントロの部分から太陽がギラギラしている夏の感じが伝わってくるサウンドですよね。「馬鹿みたいな暑さ」「汗をふく間もなく」「虫も死ぬような暑さ」という歌詞から、夏の一番暑い時期が舞台だということが分かります。
そして「本日」「二人は終わりを告げました」という歌詞から、恋人と別れた直後だということが読み取れます。
一番Aメロの歌詞②
ここのフレーズは別れた彼に問いかけるような内容の歌詞になっていますね。誰かと付き合うことになったり、付き合って別れることになった時に、なんでこんな私なんかといてくれるんだろうかとか、いてくれたんだろうとか考えてしまうのはなんだか分かる気がします。そう思うのはきっと自分への自信の無さが原因なのかも知れませんが、彼が一緒にいてくれるまたはいてくれたということは、心を惹かれる何かがあったからだと思うので、そこは前向きに捉えるべきなんじゃないかなと個人的には思いました。
一番Bメロの歌詞
「生きた心地がしない」「自分がバカになっていく」っていう感覚になるって相当なことですよね。ここのフレーズは本気で誰かを好きになった人にしか分からない感情が描いているように思います。自分が自分では無くなってしまうくらい別れた彼のことが大好きだったことが伝わってきますよね。
一番サビの歌詞
「誰が何と言ったって これが二人のハッピーエンドです」と、この曲のタイトルにもなっている”ハッピーエンド”という言葉がここで登場します。そもそも、ハッピーエンドとはどういう意味なのか調べたところ”幸福な結末”という意味だそうです。では、なぜ二人は別れたのにハッピーエンドなのかということが気になりますよね。
その後の「ダメになるのが今で良かった」というフレーズからは二人がダメになる原因があったことが分かります。それは歌詞の後半部分で明らかになっていくので一旦伏せておきます。
そして「これ以上好きになったらどうなっちゃうのか 怖くて怖くてたまらなかったから」「あなたが私を撫でるたび おかしくなってしまいそうで どうしようと困っていたのだから」というフレーズが出てきます。ここのフレーズを見る限り、どうやら彼のことが好き過ぎるあまりに、一緒にいることが辛くなっていたことが分かります。その為、彼と別れることになって涙は止まらないけれど、好き過ぎて辛いという感情から解き放たれて安堵している自分がいるということですよね。好き過ぎて辛くなってしまうなんて恋愛も時に考えものだななんて思います。
二番Aメロの歌詞
ここは彼って本当に優しい人だったよなと振り返っているシーンですね。
ただ「もしかして毎朝のモーニングコール重かった? 言ってくれればいいのにな」がなんとなく、本当は彼はしんどいと思っていたんじゃないかな…でも彼は優しい人だから答えてくれたんだろうな…って振り返って反省しているようにも感じて、ちょっと胸が苦しくもなります。恋愛って、今回だったら「毎朝のモーニングコール」というようにそういう何気ないところから、お互いの認識の違いや食い違いが発生して、うまく関係がすり合わなくなっていくものなのかも知れませんよね。
その後の「本当に優しいんだね…優しいんだね。」の”だねーーえーーええええーーええええーーえーえーー⤴”と段々と音が上がっていく歌い方をしているところが凄く心を掴まれるんですよね(冒頭のMV2:25辺り~)。是非注目して聴いて欲しいポイントです。
Cメロの歌詞
夏といえば蝉ですよね。暑くなってくると元気に泣きだす蝉。歌詞を見てわかるように、彼女の方は泣きじゃくる蝉に対してただただ「うるさい 耳障りでしょうがない」と思う人で、彼の方は「7日間しか生きれないんだから、思う存分鳴かせてあげよう」と考える人で、決してどっちが悪いとか優れているという話ではないけれど、そういうところにお互いの価値観のズレみたいなものが描かれているシーンとなっています。
その後の歌詞が「私本当はそんな風に思わなかったのよ バレてたのかなあ」となっているのが、きっと彼女は彼に本音を言うと嫌われてしまうと考えて、その場しのぎで彼に合わせて「確かにそうだね」というような返事をしたんじゃないかと推測されます。ただ、嘘というのはその時の表情だったり、話し方でバレてしまうものだと思うので、彼は彼女の本音を見透かしていたのかも知れません。
また、二番のAメロの終わりからCメロにかけての演奏部分なんですけど、小刻みに奏でられているギターの音色がCメロの歌詞に合わせて、まるで蝉が泣きじゃくっている音を表現しているかのように聴こえるので、そこにも是非注目して欲しいなと思います(冒頭のMV2:42辺り~)。
最後のサビの歌詞①
「あなたのその黒い髪の毛が 虹色に光っては流れるのを見るのが好きだった」というフレーズ。この歌詞については、SHISHAMOのXにて作詞を担当したギターボーカルの宮崎朝子自身が弁明をしており、
『人混みの中で好きな人だけ輝いて見えたり、後ろ姿ですぐ分かったり、騒がしい場所で小さな声でも分かったり、待ち合わせですぐに見つけられたり。恋をすると魔法みたいなフィルターを手に入れることができますよね。虹色の黒髪は、それらとおんなじようなものです。「現実では起こり得ないことが起こるほどに彼のことが好きで、この主人公の女の子の目には彼はこんなにも美しく映っている」ということを表現したくて書いた歌詞です。』
と答えています。めちゃくちゃ素敵な歌詞ですよね。
最後のサビの歌詞②
結局二人がダメになった原因は毎朝のモーニングコールのくだりや、蝉のくだりでお互いに齟齬(そご)が感じられたように、根本から合わない部分が二人にはあったということなんだと思われます。
失恋したら普通は悲しいですよね。それでも、これまでの歌詞を見て分かるように、異常なほどにその彼のことが大好きだったため、彼女は「ダメになるのが今で良かった」なんて思えたんだろうなと思います。傍から見たら失恋でも、こんなにも好きになる人に出会えて、同じ時間を過ごせたことが奇跡のようで、もうそれだけで彼女にとっては「ハッピーエンド」だったということなんじゃないかなと思いました。
「だけどもうこれで本当に本当におしまい」というフレーズもまた、彼とはもう会えないんだよなと振り返りつつ、自分の心の中からも彼とお別れしようとしている感じがして、グッときてしまいます。
そして最後に「蝉の声がうるさい」と彼には言えなかった彼女の本音で終わるのが圧巻ですよね。この歌詞の展開には、見事過ぎて言葉が見つかりませんでした。
まとめ
彼が死ぬほど大好きだった主人公が描かれていましたね。本気で誰かを好きになった人にしかわからない感情みたいなものがこの曲にはギュッと詰まっているように思いました。また、この曲で登場する彼女と彼の価値観にズレがあるということを描くために、夏というテーマと絡めて蝉を歌詞に入れてきたところが、これまたギターボーカルの宮崎朝子のセンスが光っているなと思いました。
そして、この曲のポイントは失恋ソングだけれど「これが二人のハッピーエンドです」と歌っているところかなと思います。「ダメになるのが今で良かった これ以上好きになったらどうなっちゃうのか」という歌詞もありましたが、好き過ぎてこれ以上一緒にいることが辛くなってしまうことも恋愛にはあって、どんなに好きで愛おしくても、離れた方がいい恋愛というのもこの世にはあるのかも知れないなと思わされた一曲でした。
サウンド面も、太陽がギラギラしている感じや夏の暑さみたいなものが伝わってくる曲になっていて、SHISHAMOの夏曲には本当に毎回驚かされます。
また、この曲は2023年11月8日にリリースされた「ACOUSTIC SHISHAMO」にも収録されており、アコースティックバージョンというまた違った形で聴くことが出来ます。こちらも完成度が高く、原曲よりもテンポがゆっくりでしっとりと聴くことが出来ます。YouTubeに音源がありますのでこちらも載せておきます。
MVもまた、ひまわり畑で歌唱しているところがこの曲とマッチしていて素敵な映像となっています。このMVの終わりには、Thanks toと表記され、実際に撮影が行われたロケ地の名称が公開されています(冒頭のMV5:25辺り〜)。聖地巡礼として実際に足を運んでみるのもいいかも知れませんね。
最後に”SHISHAMO ワンマンツアー2024初夏「退屈なハッピーエンドに迷い込んだのは君のせいだ」ダイジェスト”と題した映像がYouTubeにて公開されており、今回取り上げた「ハッピーエンド」のライブ映像が一部観ることできますので載せておきます(下記の映像10:02辺りから)。
皆さんも是非聴いて見て下さい。
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