『ソアリン』が微妙だった話

※このnoteはディズニーシーのアトラクション『ソアリン』のネタバレを含みます。

GW最終日、「ディズニーシーがめちゃくちゃ空いてるらしい」という話をききつけ、急遽予定を変更して夢の国に突撃した。

入園後、真っ先に向かったのは『ソアリン』だ。2019年にオープンした比較的新しいアトラクションとあって、いつ行っても3~4時間待ちは当たり前。毎回「さすがに厳しいな」と諦めていたのだ。

その日ソアリンの待ち時間はなんと50分。(その日はそれがピークで、以降は30分待ちとかになっていた。それくらい空いていたのだ)これなら全然いけるぞということで、意気揚々乗り込んだ。

結論から言うと、このソアリンが、個人的に「非常に微妙」だったのである。

後になって振り返ると、ソアリンを微妙と感じた理由は、私個人がディズニーというテーマパークに求めている根っこの部分に関わる、けっこう重要な部分だったんじゃないかと思い至った。

せっかくなので、言語化して整理してみる。

導線と実際のギャップ

ソアリンが微妙だと感じた最も大きな理由は、「アトラクションに至るまでの導線と、実際のアトラクションの内容とのギャップ」にあると思う。

ソアリンのテーマは「人類の空への憧れ」である。参加者は「人類の飛行チャレンジの歴史」に関する展示を集めた博物館にて、「博物館の創設者が開発した、特殊な有人飛行機に乗り込んで空を旅する(空飛ぶ夢を実現する)」という概要だ。

個人的に、ディズニーの(特にシーの)ライド型アトラクションは、「背景のエピソードの作りこみが半端でないこと」が大きな魅力だと思っている。アトラクションに至るまでの長い導線の中で、さまざまな趣向を凝らした内装や展示をもって丁寧にヒントを開示し、「そのアトラクションが誕生するまでにどんな背景のストーリーがあったのか」をたっぷり想像できる楽しさがある。

ソアリンも全く同じで、舞台となる博物館がどのようにできたのか、博物館でどんな展示がなされているのか、これから乗るアトラクションがどんな性質のものなのか、をこれでもかというくらい丁寧に提示してくれている。新しいアトラクションということもあってか、導線の情報量はむしろ他のアトラクションと比べてもトップクラスだと感じた。

さらに、アトラクション内部の展示は「現実と虚構」をうまい具合に混ぜ合わせた内容になっていて、「現実をベースにしつつ、ディズニーらしいマジックを施したアトラクションなんだろうな」という期待値も高まる内容になっている。

この「現実と虚構をうまく混ぜる手腕」について、例えば『海底二万マイル』の「小型潜水艇で人類未踏の深海を探索」とか、『センター・オブ・ジ・アース』の「地底世界を爆速の地底装甲車で走り抜ける」のような「現代の技術的に不可能ではなさそうだけど、少なくとも現時点では人類の夢」というラインの攻め方が絶妙に素晴らしく、個人的にはこれがディズニーのライド型アトラクションの魅力の要だと思っている。

そしてソアリン内部の展示に潜む「虚構」も、おなじみのワクワク感を生むに十分な内容だった。

ところが、実際のアトラクションの内容は、一言で言うと「最新の映像技術を使った、世界の有名スポット巡り」にとどまっていたのだ。

映像技術は素晴らしい。空を飛んでいる感覚の再現も素晴らしい。乗っていて「おお、すげぇや」となる。でも何か決定的な欲が満たされない。なぜか。

答えは簡単で、「すでに人類があらゆる形で飛行を叶えちゃってるから」である。

ジャンボジェット、セスナ、ヘリコプター、パラグライダー、気球などなど、現実世界には規模も形もさまざまな飛行方法がある。わりと最近までできなかった「人が飛べない場所を飛ぶ」という欲求も、ドローン空撮が疑似的に叶えてしまっている。

ソアリンは「一度に世界各地の有名スポットの周りを飛ぶ」という現実にはできない疑似体験ができるものの、その個々の要素は分解すると「全部既知」であり、「おおおおそう来たか!!!!」という「未知への好奇心・感動」がどうしても薄くなっちゃうのだ。

これが今から100年前なら、間違いなく「人類の夢」だっただろう。

そう、ソアリンは誕生するのが遅すぎたのだ。

私がディズニーに一番求めているのは「実現できそうでできなさそうな『未知』の疑似体験」だったんだな、ということが分かって、ちょっとスッキリした。

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