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女の子への長かった片想いとさようなら、そしておやすみ、また明日。

「好きだよ。」
そうやってあなたに言えたら良かった。
「すきだったよ。」
もう、終わりにするね。

あなたの隣りで当たり前な顔をして
その柔らかい手を握り
膨らんだ頬を抓り
少し筋肉質な肩を抱き
大きな口で笑うあなたと
当たり前に毎日を迎えたかった。

私は“あなた”だったから
だから、恋をした。

女の子の私が女の子のあなたに
長い長い片想いをしていた話。

高校に入学して間もない頃、
真新しい制服を着て、
いつも時間通りになんて来てくれやしない
バスを不安げに私たちは待っていた。

その不安からか、
私たちは会釈をするようになり
挨拶をするようになり、
いつの間にか毎日同じバスに乗って
他愛もない話をたくさんしていた。

私たちはどこにでもいる普通の女子高校生で
ジュースを片手にくだらない話を何時間もして
慣れない覚えたての化粧でプリクラを撮って
お泊まりをした夜は朝まで好きな人の話をしたね。

幼い頃から人見知りで、内気で
自分の話を誰かにすることが苦手で
他人の目ばかりを気にしていた私にとって
いつも私の手を引っ張って
いろんな所へ連れ出してくれて
私の知らない世界を教えてくれて
困った時は誰よりも先に私に相談をしてくれて
悲しい時は私の胸に飛び込んできてくれて
ああ、自分はこんなにも誰かに必要としてもらえている
そんな風に感じさせてくれたのはあなただけだった。

いつの間にか私はあなたが他の子と楽しそうに
過ごしているのを見れば見るほど
あなたがどこかへ行ってしまうんじゃないかと
私はまたひとりぼっちになってしまうんじゃないかと
不安で悲しくて怖くて胸がいっぱいになっていった。

少しでも長くあなたと同じ時間を過ごしていたくて
同じ景色を見て、2人にしか分からない話をして
私だけを特別に思っていて欲しくて

「あなたが必要としてくれるのなら
私だけがあなたの特別になれるのなら」

彼と喧嘩をしたと泣きじゃくる話を電話で聞いて
気がついたら直ぐに家を飛び出して電車に乗っていた
赤点をとって追試の試験を控えていたときは
あなたの好きなお菓子やジュースをたくさん買い込んで
朝になるまで隣りで一緒に勉強をした
思春期真っ只中のあなたにとって年上のお兄さんは魅力的で
巧みな嘘に騙されて傷ついて帰ってきた日は
何も言わずに抱きしめて
泣き疲れて眠ったあなたの頭をずっと撫でていた。

高校を卒業してからも定期的に会っては
また他愛もない話ばかりをして
慣れないお酒に溺れて街をフラフラ歩いたり
声を枯らしながら朝までカラオケで歌ったり
お互いの彼氏を紹介したり
将来の夢を話したりもしたね。

でも、なんでだろう。
あなたに会う度心が締め付けられて
帰りの電車では隣に座っている彼の話なんて
私の耳には届きもしないで
空返事をしながらあなたの事ばかり考えていた。

分かっていたの、本当は。
あなたのことを「好きになっていた」。

友達じゃなくて
親友なんかじゃなくて
人として、恋愛対象として。

“女の子に恋をしている自分”に戸惑って
“あなたを失ってしまうかもしれない”怖さに怯えて
「好き」だなんて言えなかった。

あなたが嬉しそうに話す彼との将来に
私が、私なんかが邪魔できっこない。
そんなこと、絶対にしちゃいけない。

そうやって、自分の心を押し殺して
見ないフリ、気が付かないフリをして
あなたの前では笑っていたの。

でもそんなの、続けられる訳が無い。

もう私の心は限界で
いっその事全て言ってしまおうと思った。

「あなたが好き」だと。

あなたは何て思うだろう
どんな答えを伝えてくれるのだろう
私たちの関係はどうなってしまうのだろう

それでも私は
あなたにこの気持ちを伝えたかった。

「相談がある。どうしても会って聞いて欲しい。」

そんな連絡をしたのは
出会ってから初めてだったと思う。

あなたと彼は仲直りをしたばかりで
まだぎこちない雰囲気が残る時
彼の家に行く前に
会って話を聞いてもらう約束をした。

駅で待ち合わせをして1言目にあなたは
「聞いてよ〜。仲直りはしたんだけどさあ、、、」
と話し始めた。

ねえ、今日は私の話を聞いて欲しかったんだよ
何年も何年も考えて考えて
やっと言葉にできる日が来た
今日だけは私だけの話を聞いて欲しかったんだよ

結局彼の家の前に到着して
物音に気がついたあなたの彼が外に出てきて
機嫌悪そうに
「何分ぐらいで家はいるの?」と聞いた問に
あなたは
「10分ぐらいで入るってば。」と返した。

私が今日あなたに話したかったことは
10分なんかじゃ終わらない。
終わらせてなんか欲しくないよ。

「あ、ところで話あるんだっけ?何?」
「あ、ううん。顔みたら大丈夫になった気がする。
会えてよかった。じゃあね。」

それがあなたとの
何年も片思いをしたあなたへの
さようならだった。

私が男の子だったら
あなたへなんの躊躇いもなく告白をして
当たり前の様にとなりを歩けたのかな。

もっと早く話が出来ていたら
こんな最後にはならなかったのかな。

考えても考えても後悔ばかりで
苦しくて悲しくてやるせなくて
あれからもう何年も経つのに
ふとした時に思い出しては
声を押し殺してただひたすらに震えて泣いていた。

でも、今日の私は
一生忘れることはないだろうと思っていた
あなたとの全部の思い出を
思い出しても涙が浮かばなくなった。

心に留めて忘れたくないと縋っていた気持ちに
きちんと整理をつけて
心の片隅のどこかへ放り出してしまった。

もう私の過去にも今にも
あなたを想って泣く時間は存在しなくなってしまったよ。

あのね、私
好きな人が出来たの。

だからもう、思い返して傷つくことも無くなる。
たまには思い出してしまう日もあるだろうけれど
ちゃんと前を向いて
今の彼と向き合って生きていきたいと思えたよ。

とってもとっても長かった私のあなたへの片想い。
何も言えなかったけど
何も出来なかったけど
自分と向き合うきっかけをくれて
いろんな世界を教えてくれて
私の手を握ってくれて
ありがとう。

大好きだったよ、とてもとても。

そして私の片想いとあなたへ
さようならが言えたことが
大きな1歩になった気がする。

今日は食べたいものを食べて
飲みたいものを飲んで
好きな映画を見ながら
楽しい夢を見て眠りについて
明日を迎えられますように。

おやすみ。

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