DJプレイ時、マスターボリュームを触ってはいけない理由
最近よくSNSで
「DJミキサーに貼られた音量上限を、平気でオーバーさせる人がいる。」
「DJミキサーのマスターボリュームを、触るなと書いてあったりフタがしてあるのに勝手にいじるDJがいる。」
という悲鳴が散見される。
以前、あざらしは「DJプレイ時の音量」に関する有料記事を書いた。
その中で音量調整術やサウンドチェックについて触れている。
しかし、「ワンポイントテクニック」みたいなものは有料でいいと思うが、「これはやってはいけない」ということは無料にしてもっと広く知れ渡った方がいいと思ったので、改めて記事を書く。
してはいけないこと
①マスターアウトボリュームを勝手にいじってはいけない。
②マスターアウトのランプに、クラブが「ここより上を光らせるな」と印をつけてあったら、印より上を光らせてはいけない。
なぜダメなのか?
①最悪、スピーカー本体が物理的にブッ壊れるから。
②お客さんの耳にダメージを与えるから。
解説① クラブの機材はDJ機材だけではない
同じDJミキサーが置いてあるのに、クラブによって
「オレンジ3つまで光らせてよい」だったり、
「オレンジを一つも光らせてはいけない」だったり、
箱によって上限が違うのはなぜだろうか?
DJの現場であるクラブやDJバーでは、音を鳴らすために設置されている機材はDJ機材だけではない。
スピーカー、パワーアンプ、プリアンプ、卓ミキサーなど、多くの機材をつないで箱の音を作っている。
そして、DJはDJ機材以外を操作できない。
この中で一番わかりやすい常設機材「パワーアンプ」が使われているとする。
パワーアンプは、DJミキサーから出た音をとにかくデカくする。
クラブにふさわしい音量にしてくれる「最後の増幅器(アンプ)」である。
もちろんパワーアンプのツマミもDJは触ってはいけない。
そしてパワーアンプは、音響を設定する人の考え方によって設定が変わる。
「パワーアンプの出力を上げて、DJミキサーの出力を下げる」箱と
「パワーアンプの出力を弱めて、DJミキサーの出力を限界まで出す」箱が
あったりする。
これは同じ機材でも、どっちを強くどっちを弱くするかによって多少の音質の変化はあり、箱は最終的に「理想とする音」が出るように絶妙なバランスを作っているのだ。
だから、クラブによって「光らせてはいけないランプ」の位置が違う。
その音量で鳴らすと「その箱が最も良い音が出る」、逆に言えば
「これ以上音量を出すと音が割れる」ということだ。
解説② スピーカーの突然死
スピーカーは、電気の流れによってユニットを物理的に振るわせて音を出す機械だ。
ユニットは機械である以上、大きさによって動ける範囲に限界がある。
そのユニットが動ける限界よりデカい音を入力しようとすれば、スピーカーはムチャな動きをし始める。
この時に音質が汚くなることを音が割れていると言う。
音が割れ始めたら、それ以上音量は大きくならない。どんどん汚く耳障りなガピガピ音が目立っていくだけだ。
変な方向に力を入れまくれば、どんな機械でも壊れやすくなる。
スピーカーも同じようにムチャな動きをさせ続け、ガピガピな音を鳴らし続けたり、許容量を超えるバカでかい音量を一気に入れたら、ある日突然ブッ壊れて、急に音が鳴らなくなる。
極端な話をしているわけではない。実際に先日どこぞの箱のスピーカーが、ツマミのひねりすぎでブッ壊れたと聞いた。
(場所はうろ覚えだが)
物理的に壊れたら、そのスピーカーは音が鳴るように修理、または本体入替をしなきゃいけない。
その際にかかる費用は、下手したらDJM-A9より高くなることもあるだろう。
だから、音量を出しすぎてはいけないんだ。
解説③ DJはお客さんのために行うもの
音割れは、人の耳にもダメージを与える。
特に高音が割れるとかなりつらい。鼓膜の真ん中が刺されているような、痛みすら感じる音だ。
正直あざらしは、音量を守っていないDJのフロアにいると、耳が痛くてその場にいられない。
出演するDJや常連のお客さんは「クラブはそういうものだ」と思っているかもしれない。でも、初めてクラブという場所に来る新参の方など、慣れない人がその現場に遊びに来たら、間違いなく不快な気持ちになるだろう。
クラブに初めて来る人は、十中八九クラブは怖いところだと思っている。
あなたが初めてクラブに行ったときはどうだっただろうか?
そんなところに、あなたに呼ばれたから初めて入ってみました。
そうしたら、耳をつんざくような不快な音がどこへ行っても鳴っていて逃げられない。あなたとしゃべろうにも、まともに声が聴こえない。
そんな体験したその人は、今後クラブに来てくれるだろうか。
そういう初めてクラブを経験する方のためにも、耳に痛くない音を出せるDJであってほしいと思う。
もし音が割れるという感覚がわからないDJは「どんな音が割れた音なのか」を現場で学んでほしいと思う。
今日の自分、DJプレイが完璧だ!と思ったのにブース前にお客さんが少ない。何故だろう?と思ったら、音がキツ過ぎた可能性も考えてみるといいかもしれない。
サウンドチェックについて
上記のような状況を回避するためにサウンドチェックがある。
サウンドチェックは、その箱の音量設定を自分の耳で確認することが一番の目的だ。
これ以上の音量を出したら音が割れるとか、そもそも音量の上限を守っているけど特定の音域だけ割れるとか、そういう音の出を確認するところだ。
つまり、サウンドチェックはやってくるお客さんのために音をチェックする時間なのであり、お客さんが立つはずのフロアに降りて出音を確認しないようでは、サウンドチェックの意味がない。
間違っても、ブースに知り合い同士で集まって好きな曲をかけて遊ぶ時間ではない。DJ練習をする時間でもリハーサルをする時間でもない。
そういう人たちは他のDJが現れても気づかないし、どいてくれない。
サウンドチェックのために入場したら、ブース上で知らないDJ何人かがゲラゲラ笑いながら音を出して遊んでいる。
そんなところに初めて来るDJが割り込んで「サウンドチェックさせてくれ」と言うにはかなり勇気がいることだ。
なのでサウンドチェック時、何をどのようにチェックするか決めておいて、終わったらすぐにブースを出るようにあざらしは心掛けている。
まとめ ~とりあえずこれは覚えてね~
①ボリュームをいくらひねっても、音は割れるばかりで大きくならない。
②箱側の指定した音量を超え続けると、スピーカーがブッ壊れる。
③最近来たばかりのお客さんにとって、音割れは痛いもの。
④サウンドチェックは真面目にやろう。他人の機材と耳を守るために。
これらを知ってるのに、それでも音量を守らないDJは「傷害未遂、器物破損未遂」レベルのことをしていることを肝に銘じてほしい。
関連記事
有料なので、本当に必要だと思ったら読んでみてください。