【夢日記】椿と椅子
チェーン店なのだろうか?
喫茶店を探して入店して席を決めた。変わった内装だ。
店の中にたくさんの椿の樹があって花が咲いている。看板は『椿屋』になっている。たしかそんな名の喫茶店のチェーンがあったかと思うが、そこと関係があるんだろうか?
そんなことを考えながら席について作業を始める。喫茶店で仕事をするのは好きだ。夢の中でも同じなんだなと思ったりする。そしてたいしてはかどらなかったり、はかどったりも同じことだ。
よく見ると椿の樹はテーブルに1本ずつ溶け込むように生えていて、まるで椿の畑の中にテーブルとイスが規則を持って並んでいるかのようだ。
喫茶店で仕事をするのは家にいるより集中できるのと、近年脚が悪くなって、椅子の方が楽なことが多いからだ。
この店の椅子は小ぶりで、四角くて子供の頃の小学校の椅子のように木製だ。低い椅子は脚が楽で、テーブルと高さのバランスが取れていれば疲れない。この店のしつらえはまあまあだ。
ただ、店内にたくさんの段差があって、好みの席にたどりつくまでに膝やらが痛くなる。なんとかならないものか。段差というのはきついのだ。
クレームをつけたわけでもないのに
次に椿屋を訪ねた時、店内はがらりと変わっていた。樹はもう一本もなくて、テーブルも椅子もなくなっていた。床には丸い毛足の長いラグがいくつも配置され、それが席を示していた。あれだけ咲いていた椿の花は全部床に落ちて、カーペットの周りを囲んでいた。
店長があたしの顔を見て、いかがでしょう?みたいな表情を見せながら、近づいてきてこういった。「段差を極限までなくしてみました」
いや、そういう意味じゃない。段差が不都合なのは床だけの話だ。ここに来るのは椅子がいいからであって、床に座りたいわけではないのだ。
あたしはそう頭の中で叫ぶが、あまりのことに言葉が出ない。だって、店長に何か話をしたわけでもないのに。
椿の花は確かに美しいまま地面に落ちる。そんなことも考える。どの席にも椿は色鮮やかなまま置かれてはいる。
でももう椿屋で仕事をすることはできない。