「面白い」駄文を試みる:3
●伯父のガールフレンド
例えば親子喧嘩やら夫婦喧嘩やら、通常はだいたい理由もたいしてはっきりしていないし、はっきりしないから描写しても面白くないし、愚痴として聞いてもめんどくさいだけだし、ろくな話ではないことが多いです。
だけど、ろくなもんじゃないことが、適度にヒトゴトであり、適度に当事者であり、適度に客観的に見えるところでみていると、面白かったりする。そういうことがえてしてあります。
例えば。昔のことですけれども。
あたしの伯父には、奥さんもいたけど、GFもおりました。このGFは、タチがいいというか、タチがわるいというか、伯父にお金をせびることがなく、むしろふたりの遊興費のほとんどは、彼女が払っていたのじゃあないかと思われます。しかも昨日今日という間柄ではなくて、伯父とはずいぶんと長い間の付き合いであるようでした。
いや、あたしは小さかったので、詳しいことはわかんないのです。だいたいどこのうちでも、子供にそんな話を詳しく解説する親はおりません。だけど子供はいろんなことを継ぎ合わせて、話題に上がるその女性が、どんな人なのかを想像するわけです。
●伯父は立派なろくでなしだった
伯父はどうにもこうにも世話がやける人で、憎めないかもしれないけど、間違いなくろくでなしの人でした。そのことは誰もが知っておりました。でもお顔がよくて、可愛げや明るさや細やかな優しさがあるんで、そんな女の人がいるわけです。その人はいなくならないし、奥さんもいなくならない。全く人の魅力というのはわけがわかりません。
あたしは小学校6年生かそこらだったかと思います。
ある時父が電話に出ました。
ちょっとの間、 だれやらと話をしています。ちょっと怒ったりしているときの顔です。あんまり口数も多くないです。
そして急にこう言ってばしっと電話を切りました。「そんなこと自分らでなんとかしなさい。俺は知らん」
それから電話口を離れて、母に、「全くあいつは。なんで俺に話を持ち込むんだ」
「だれですか」母がききます。
「Sだ」
「なんだって言うんですか?」
「兄貴と喧嘩をしたらしい。それでハラに据えかねてかけてきたんだろう」
母はくすくす笑っているようにあたしには見えましたが、笑い事ではないんで、こっそり笑っていただけかもしれません。
父も、本当には怒っていないのがわかりました。
あたしは「Sってだれ?」とカマトトな質問をしました。本当はうすうす知っているのです。
「おじちゃんのお友達よ」と母は言います。母は実に大勢の男性のお友達を持っていましたから、男女の友情については非常に寛大なのです。しかし「お友達」の名のもとに、けっこう大事な事に対して見て見ぬふりをするってことに、あたしは気がついておりました。
母が「おじちゃんのお友達」と言いはるこの女性が、いわゆる”問題”であるというよりも、むしろ、ろくでなしの伯父を丸く転がしてくれているのだ、ということも、うすうすわかっていたのです。
おひねりをもらって暮らす夢は遠く、自己投資という名のハイリスクローリターンの”投資”に突入。なんなんだこの浮遊感。読んでいただくことが元気の素です。よろしくお願いいたします。