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母親は娘の性を封印する(容姿コンプレックスOrigin15)

性を封印する存在

 友達の話です。
 彼女は小さいとき、色んな人に「かわいいお嬢さんですね」と言ってもらえたのだけれど、彼女のママはそのたびに、判で押したように同じことを繰り返したそうです。
「こんな、チビでやせっぽっちな子はどうしようもありませんよ」

 繰り返し繰り返しよその人の前で「チビでやせっぽっち」と言われ続けて、彼女はすっかり自信をなくしたのだそうです。こういうとき、小さい子ってのは「失礼しちゃう」などとは思いません。まっすぐ、傷つきます。
 褒めてくれる人があるのに、どうしてここまで繰り返しけなされるのだろう?ママは私が醜いと思っているわけ?謙遜するにしても、もう少しうれしそうにしてもよさそうなのに。鼻に皺をよせて、いかにもイヤそうに。

 彼女の妹は逆に、ママにほめてもらうこともありましたから、彼女は思いました。「妹はそんなにかわいいのだろうか?」

 実はそうじゃなかったんです。妹は人目をひかず、めったに褒められることもない。姉は際立ってかわいかったのです。そしてそのことが、彼女達のママの頭痛の種だったのです。
 姉妹の容姿の差。それが彼女が繰り返しけなさればければならない、その理由だったのでした。

 「妹はおねえちゃんと比べられ、他人に無視されてかわいそう。自信がない女になってしまうのが心配」「お姉ちゃんは妹よりも自分がかわいいからと言って、うぬぼれてしまうのが心配」で、そのママはそうした言動を取っていたらしいです。
 成人してから彼女は聞かされました。

 ママってものは思うわけです。「容姿にうぬぼれた女は鼻持ちならない」と。そんなものになって、うんと若い頃からいやらしい媚びのある子になったら困る。人を惹きつけるだけに心配だ。
 「だからって自信のないダサい女の子になったら困る。男の人に好かれない」

 どっちの場合も、ママが意識しているのは娘の性的な魅力です。異性から見た娘たちです。
 魅力がなくても困るけど、でもそんなに早くから露出されても困る。なるべく時が来るまで男の目から隠しておかなければ・・・・。

 アンビバレントな想いを本能的な行動に載せて、ママはヘンなことをいい続けます。
 娘の自信を傷つけても気にしない。
 間違った時期に男の目にさらされるよりマシ。
 かわいいからってつけ上がった嫌な女になるよりマシ。
 キレイじゃなくても、自信があればきっと少しはマシ。
 ああだけど、やっぱり間違った時期に男に渡してはいけない。
 
 この娘もこっちの娘も、時期が来るまでその魅力には封をしておきたい。できれば永遠に封をしておきたい。安全なところに囲っておきたい。

 自分がきれいだ、と知らないでいて欲しい。
 自分が醜いと、知らないでいて欲しい。
 娘って危ない。
 娘って怖い。
 それに、娘は常にママよりきれい。

 そんなわけで。彼女はコンプレックスばりばりで育っちゃってましたね。
 
 あたしは思うんです。ママってものは、あらかじめ、娘の性的な魅力を封じる装置なんだって。

 どうせ娘はママを傷つけながら成長するし、娘はママに傷つけられながら成長する運命なんだって。
 そういうことはすごく多いんだろうな、と彼女の話をきいて思いました。

つづく。

★画像は『Social Pressure』という絵です。


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「モノ書くコドモ」から「モノ書くおばちゃん」に至るまでに否応なしに書いたボーダイな駄文を、モノ書くばーちゃんが読みやすいプラットフォームに…

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