日本出版美術家連盟、のことなど その5
その1から続く、フリーのイラストレーターと所属団体(JPAL/出版美/一般社団法人日本出版美術家連盟)に関する『同業者からの質問』に答えるシリーズの続きです。
よくきかれる質問は「何故フリーが団体に?」「メリットあるの?」「めんどくさくない?」の3つです。
さて、質問の3つ目。団体に所属するだなんて、めんどくさくない?という質問に非常に個人的にお答えします。「非常に個人的」、と前置きを100回ぐらいしておきたい。というのは、あたしは同連盟の役職にあり、これはその役職の立場からの発言ではないからです。そう思われたら困るので。
ええ、ええ、めんどくさいですとも(笑)。人が集まればそりゃめんどくさいことは、あるに決まってます。でもそれはその人の性格や考え方に大きく左右されるかと思います。個人の資質による、としか言えないっすね。
例えば子供のころからクラス委員とかやってきた人がいますよね。人気があるとか、縁の下の力持ち的ポジションが似合う人とか。超真面目とか、頼まれると嫌と言えないとか、目立ちたがりとか。いろんな人がおり、「めんどくさい」=「苦になる」ことはそれぞれ違うでしょう。得意不得意がそれぞれ違うのですから。
すでに述べましたがあたしは望んで団体に加入しました。まじめな方の性格だと思うけど「バカまじめ」ではないです。小中学校の頃、あんまり人気者じゃないけど、クラス委員の人材が枯渇する3学期ぐらいになると選挙で選ばれる子っていませんでしたか?あんな感じですよ(笑)。本来、進んでやってくれる人がいるんならクラス委員とかやりたくありません。でもやらなきゃならないことや引き受けたことは一通りやるし、けっこう正義感があって理詰めで行動しますから怖いとか言われてた気もします。掃除をさぼる男子を箒持って追いかけて叱り飛ばしてました。
そういう子が大人になると、こういう風に考えるんです。「団体に所属して何らかのおかげを被るなら、公の仕事を2年ぐらいはやらなくちゃならないかな」と。自然にそう思う。PTAの広報部長とかさ、誰もやりたがらない生協の委員とか、あたしは2年ぐらいやってきてます。マンションの管理組合理事は、適任者がたくさんいるんでまったくやってませんが(笑)。
やるからには徹底的、とか、全力を尽くすとか、頭角を現してやる、とか全然思いませんけど、きっとそういう人もいるんでしょうね。あたしはできる範囲でやろう、ぐらいの構えです。
でも「2年ぐらい人のためになんかやるのは当然」と思うので、なるべく逃げて楽をしようとは考えません。頼まれた時に苦にすることはないのです。
で。そういう風に考えたのが運の尽きではないですが、コミットメントができてしまって、理事の仕事は2年で終わらず、「いろいろあって」「結果」、現在に至るのです。人間ですから、関われば立場ができ、責任ができ、流れや道理に取り囲まれてゆきますから、あたしの場合は「2年ぐらい」と考えていたボランティア(団体の役職は基本はボランティアです。若干の担当費が出る作業もありますが)が長引いて10年ぐらいになってます。
えらい計算違いじゃんか!バカじゃねーの、と言われるかも。でもそんなもんです。正直な言い方をするなら、そんなもんなんだ、ということを、あたしはけっこういい年して知らなかったのですね。そりゃ、学校と違って卒業がありませんから、都合よく「何年ぐらい」とかなりませんわ(笑)。選挙が決める事ですが、本音では頃合いに解放されたいです。
JPALは2017年に一般社団法人化したばかりですから、新体制を整える仕事があります。少なくともそこまではやんなくちゃ、という気持ちはあります。あたしもいろいろ引き受けてますけど、あたしよりも、もっとがんばってやってくれている人も複数おります。面白いことも多いけど楽ではないです。
こういうのはなんか分かりやすい見返りがあってやるのでもなし、あたしの場合はすんげー野心とかがあってやるのでもなし、単に、ご縁のあることに関してできるだけ誠実にこなしてゆこうという意思だけでころがってゆきます。だから現在の状態に対して後悔とかはありません。
ほとんど成り行きだけで自分の立場が決まっているような気もする時もありますが、じゃあ人生、全部意志だけで決めてゆけるものなのかといったらそうじゃないでしょう。成り行き上等、でございますよ。
成り行きであっても、その中で親しい仲間ができて、楽しいです。現在の理事会はとても仲がよいのです。ああ、これも質問のふたつめ、メリットの一つでしょうね。親しさは、ともにくぐった苦労と比例する一面もありますよね。
理事にならなくても、現在の理事会はオープンで、中身がスケスケに見えますから、気持ちよく所属できる連盟になっていると思います。それこそ私たちが去年からずっと目指してきたことなのです。
ここで控えめに、しかし声を大にして、宣伝をしておきましょう。同業イラストレーターのかたがた、Come on, join us!
そうそう「苦労」の話。苦労は、きっと「めんどくさい」とはまたニュアンスが違うでしょうね。
このシリーズのその1に、自分が入ったとき、連盟は過渡期だった、と書きました。70年も歴史があるんですから、過渡期なんか何回あったかわかりゃしませんが、あたしが関わった僅か10年が、どんな過渡期だったかについて、これは、一般的な同業者ではなく、JPALをよく知る人たちには突っ込んで尋ねられることもあります。あたしなどより、よほど長い流れを知っていらっしゃる人が、業界には数多くいらっしゃるのです。
そのことは稿を改めて書く時があるかな。その時は仮名満載になるかも(笑)。
はい。まじめに答えてみました。ひとまず終わり。居酒屋でのおしゃべりではありませんから、例えば内部告発じみた「ぶっちゃけ」をやる気もないのです。ぶっちゃけを聞ける人は、信頼できる人に限られますが、あたしになんかおごってください(笑)。個人的にならお話します。
その場合も、言葉遣いの厳密な限定をお約束します。私はこれでもライターの端くれですから、体験した事実、感想、伝聞の別をだらしなくすることは決してしません。たとえ話はたとえ話、仮定の話は仮定の話としてわかるように、憶測は憶測と分かるように話します。
しかも下戸でお酒が一切飲めませんので、うざいほどにそのへん崩れません。崩れないそのうえで、吹き荒れる感情の体験ってものもあるわけですよ。これが、3学期にクラス委員になるような、ややうざくて怖い子供だったあたしの、個人的な回答です。