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KERRY
僕の名前はケリー。
K、E、R、R、Y、で、ケリー。
何でケリーっていうかって?
実は、初めてもらった名前はキティだったんだ。
K、I、T、T、Y、でキティ。
お姉ちゃんがつけてくれた。
キラキラした金色のメダルに、KITTYって彫ってくれた。
で、メダルをつけた僕は、抱っこされてお母さんのところに連れて行かれた。
「ねえ!見て!この子の名前、キティにしたの!かわいいでしょ!」
「そうね…。でもキティって子猫って意味よ。大きくなった時もキティって呼ぶの?」
お母さんが困ったようにそう言うと、世界がぐるんと回った。
穴があきそうなほどに、お姉ちゃんは僕をじっと見つめた。
しっぽが勝手に動く。
「お前…大きくなるの?…お母さん、どうしよう!首輪、キティにしちゃった!」
「そうねぇ…。うーん、じゃあ、ケリーはどう?」
「ケリー?」
「K、E、R、R、Y、でケリー。それなら直せるわ」
お母さんは僕のメダルを取って、“ ちょっと待っててね ” と言って、鼻をちょんとつついた。
お腹が空いてきたからご飯を食べてると、“ ケリー!かわいいケリーちゃん!” と、お母さんの声がした。
そうか、僕の名前か。
“ なぁに〜? ” と返事をしながら声のする方へ歩いて行った。
「できたわ。素敵よ、ケリー」
お母さんは満面の笑みで、またメダルをつけてくれた。
「お母さん、すごい!魔法使いみたい!」
お姉ちゃんは、僕をぎゅーっと締め付けた。
何で嬉しそうなのに、こんな苦しいことをするんだろう。
お姉ちゃんはたまにこういうイジワルをしてくる。
やっとの思いで、お姉ちゃんの腕から逃げた。
お姉ちゃんを見上げながら、“ お姉ちゃんのイジワル ” って言ってやった。
「ありがとうだって〜!かわいい〜!!」
またさっきの締め付けをされそうになったから、僕は急いでカーテンの裏に隠れた。
ガラスの向こうがオレンジ色の光でいっぱいになって、とても眩しい。
なんだかすごく昔の夢を見た気がする。
バタン、ガサガサ。
この音を聞くと急にお腹が空いてくる。
「ケリー、ご飯だよ」
僕を呼ぶお姉ちゃんは、夢の中よりも少し大きくなっていた。
「はぁい」
返事をしながら、いい匂いがする方に向かって歩いていく。
「お返事できるの?かわいい〜!」
今出来たてなのかな?おいしい、すごくおいしい。
メダルを何度かお皿にぶつけてしまう。
“ あら、ケリー、ご飯食べてるの? ” と、離れたところにいるはずのお母さんに何故かバレてしまう。
昔、お姉ちゃんはお母さんのことを魔法使いだと言っていた。
僕もそう思う。
僕がご飯を食べてるときも、うんちしたときもすぐにバレるから、きっとお母さんは魔法使いなんだと思う。
「おいしかったですか〜?」
せっかく毛並みを整えていたのに、お姉ちゃんは僕のお腹に手を伸ばして来て、また嫌なことをしてくる。
お姉ちゃんは大きくなっても僕にイジワルだ。
「かわいいケリー。どんどん大きくなっていいのよ」
お母さんはそう言って僕の鼻を、ちょんとつついた。
僕の名前はケリー。
K、E、R、R、Y、で、ケリー。
名字は、かわいい。
か、わ、い、い、で、かわいい。
かわいい・ケリー。
素敵な名前でしょ?
。*。・゜☆
猫好き仲間の母に贈ります( ᵘ ᵕ ᵘ )♡
そして今日はちょうど猫の日!らしいです🐱💕
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