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森のケーキ屋さん【ヘーゼル】



オレンジ色の光が窓から差し込み、テーブルが影を作った。空になったグラスとお皿を引き上げ、こぼれていたカスを拭き取る。ティータイムが過ぎると、店内はがら空きになった。


ようやく一息つける。と、ミルクティーを入れていると、ドアのベルが鳴った。


「いらっしゃいませー。あ、ヘーゼル」

「こんにちは〜、あ、もうこんばんは  かな?」


きょろきょろしながら入ってきたのは、リスのヘーゼルだった。誰もいないことを確認したのか、ドアを開けっ放しにして一度外に出た。


「わっ、ずいぶんな大荷物だね」

「これ、全部、くるみなの!」


生成り色の大きな袋を一生懸命引っ張りながら、そう言った。ため息とともに手を離すと、袋の中からくるみが一つ転がってきた。床にぺたんと座り込んだ彼女は、また大きな息を吐いた。


「無心でいたら、つい、こんなに集めちゃった。こんな量うちには入らないし、あなたなら使ってくれるかなって思って持ってきたんだけど」

「うん、助かるよ。ありがとう」

「それでね、ちょっと話したいことがあって…」

「ねえ」

「え?」

「ミルクティー、さっきちょうど入れたばかりなの。よかったら飲みながら話してよ」


くるみ程の大きさのカップに、ミルクティーを注いだ。テーブルに置くも、彼女は下を向いたままで気づかない。呼びかけると、ようやく顔を上げた。


「実はね…、好きなひとができたの」


小枝に腰を掛け、ミルクティーを一口飲んだあとそう話し出した。


「わぁ!本当!?でも、なんだか嬉しそうじゃないみたい」

「彼!すごくかっこいいの!明るくって、みんなの人気者で…モテるみたいだし、私…自信なくて」

「なんで?」

「なんでって…ほら、私ちょっと太ってるし、しっぽのここの毛なんてどんなに直しても跳ねちゃうし、模様だって見てよここ、少しうねってるでしょ。それに…趣味、くるみ集めよ?ダサくってそんなの言えない」


お腹を触ったり、しっぽを振りながら見せてきたり、くるくると回り出す。口を押さえると、また下を向いてしまった。


「くるみ集め、素敵だと思うけどなぁ〜」


指でくるみを転がしながらそう呟いた。


「でも、ダサいもの…!きっと彼だって、もっと木々を跳び回る女の方が魅力的に感じるに、決まってる…」

「あらぁ…」


顔に手を当て、ぽろぽろと泣き出してしまった。彼女の身体と同じ大きさ程のペーパーを差し出した。受け取ると、豪快な音を立てて鼻をかむ。


「ちょっと待っててね〜」


そうだ、とミルクティーを飲み干して立ち上がった。彼女は毛を涙で濡らしたまま、きょとんとした顔でこちらを見上げた。向かう先はキッチン。床に落ちてる生成り色の袋を拾って。


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「おまたせしました!」

「わぁっ」


あれからも泣き続けたのだろうか。丸まったペーパーは四つに増えていた。彼女は腫れた目を見開いて、歓喜の声を上げた。


「キャラメルとくるみのパウンドケーキになります。よかったらどうぞ?」

「わー!いただきます!」


ケーキは彼女の小さな口の中へとあっという間に消えていく。破裂してしまうのでは、と心配になるほどに頬は目一杯膨らんでいる。


「おいっひぃ〜幸せ〜!!」

「よかった」

「キャラメルもほろ苦くてでも甘くておいしい!くるみもいっぱい入ってるのね!すごく触感がいいし、香ばしい!あと、これは…お酒も少し入ってる?」

「ラム酒が少しね」

「そっか〜!だから甘いのに、しつこくはならないのね!」


大きな頬袋を揺らしながら興奮して話し出す。フォークも一緒に出しておいたのに、途中から手づかみで食べ出してしまった。


「それね、ヘーゼルがイメージなの」

「私!?」

「くるみみたいに、素朴で優しい味。でもキャラメルみたいに甘くって女の子らしい。少しほろ苦いところは自身がないところかな?」

「うっ」

「でも少しラム酒を入れて、大人っぽいスイーツって感じで締めてみたの。ヘーゼル、あなたは素敵な女性。自信持って大丈夫よ」


口とお皿を往復していた手が止まった。また、涙が零れ落ちる。


「くるみって、やっぱりおいしいね」

「うん」

「私、このケーキまた食べたい。それと、彼にも作ってあげたい。レシピ…教えてもらえる?」

「もちろん!」


小さくなっていた彼女はもういなかった。目はまだ腫れたままだけど、笑う彼女はとてもかわいい。


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「このケーキ作る用に、帰りまたくるみ拾って帰ろうかな」


あたりはもうすっかり暗くなっていた。ドアの上のランタンに灯をともす。渡した紙をひらひらさせながら彼女はそう言った。


「もらったくるみ、まだ残ってるけど…。そっか、いらないのね」

「うん!また拾いたくなっちゃったから!」





。*。+゜☆


ファンタジー小説もすごく楽しい!!!!

世界が広がっていく!

21時には寝ようかなって思ってたけど書き(描き)出したら止まらなかったです。

ヘーゼルはとってもかわいい女の子!

キャラメルとくるみのパウンドケーキ、食べたくなった方はコチラ☺️笑↓↓






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Synchkrie
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