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Synchkrie
2020年4月14日 02:06
「しらうめ?何それ」「しらうめさ、ま、じゃ。白梅様。この町を守る御神木じゃ」煙を吐きながらじいちゃんは言った。「昔はわしも白梅様と話せたんじゃがのう…」「今はしらうめとお話できないの?」「まだ若かった隣のじいさんと、近所の悪ガキを川に流そうとしてサツに世話んなったり、そこらのばあさん騙して金せびろうとしたりしてたら、いつの間にか声すら聞こえんようになっとったな」かっかっ、と
2019年9月23日 22:15
足元に伸びる影を見つめた。彼女は赤い瞳でこちらを睨んでいた。彼女もまた泣いていた。額を触っても、ない。けれども影には確かにあるのだ。醜く生えた一本の角が。Synchkrie
2019年5月10日 21:06
祭りばやしで騒がしかった外も、ようやく静寂を取り戻した。夜が更ける頃、扉の向こうから数人の忍び声が聞こえた。「幼な子の肉が好物と聞いていたが、こんな肉の少ねぇガキじゃあ鬼も喜ばんじゃろう」「一人も捧げないよりはましじゃろう」大きなものを投げ捨てるような音が響く。「しかし、こんな汚ねぇガキを食うなんざ、とんだ悪食だなぁ」「ヒトを食う時点ですでに悪食じゃろうて」「おめぇ
2019年4月23日 01:25
泣き腫らして真っ赤になった目元、鏡に映った自分はまるでうさぎのようだった。近くにあったティッシュを取り、鼻をかんだ時、玄関のチャイムが鳴り響いた。「郵便でーす」こんな泣き腫らした顔では外には到底出られやしない。まあ、郵便を受け取るくらいならいいだろうと、顔を上げないようにして鍵をひねる。「えっ」扉を開けると、来訪者と目が合ってしまった。下を向いたままではあり得ないことだった。