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Synchkrie
2018年11月30日 00:04
俺が物心つくころには、父はすでに大酒飲みだった。父のお気に入りの酒は、4リットルのペットボトルに入った焼酎。それを、がばがば飲むのだ。ラベルには父の名前、“ 勝利 (まさとし) ” が印字されていた。「この間の腕相撲大会あったろ!あれで優勝した記念にって、2丁目の酒屋のじいさんが俺用に作ってくれたんだ!」ある日、そう言って嬉しそうに両脇に抱えながら帰ってきた。2丁目の酒屋のじいさ
2018年11月28日 00:40
オレンジ色の光が窓から差し込み、テーブルが影を作った。空になったグラスとお皿を引き上げ、こぼれていたカスを拭き取る。ティータイムが過ぎると、店内はがら空きになった。ようやく一息つける。と、ミルクティーを入れていると、ドアのベルが鳴った。「いらっしゃいませー。あ、ヘーゼル」「こんにちは〜、あ、もうこんばんは かな?」きょろきょろしながら入ってきたのは、リスのヘーゼルだった。誰もいな
2018年11月26日 02:00
「おばあちゃんとこ、今朝、雪降ったらしいよ」廊下とリビングを慌ただしく往復する私を余所に、母は乾ききった手にクリームを念入りに擦り込みながらそう言った。次に言う言葉はだいたい予想がつく。「だから今日は暖かくしていきなさい」「うん、でも大丈夫」「あんたまたそう言って。今は動いてるからでしょ。外出てしばらく経つ頃にはあっという間に寒くなるんだから。カイロだって貼るの嫌がるし、あんた寒が