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プライシング(値決め)を考える

はじめに

こんにちは!
SYNCA合同会計事務所 共同代表の平川です。

長引くデフレから一転、インフレに向かいつつ日本において、皆さんの商品・サービスの価格はどのように決められていますか?

価格を変えることは非常に難しい意思決定の一つでしょう。
特に、値上げは顧客が離れるリスクが伴います。

そのため、未だに柔軟に価格へ転嫁できている企業は少なく、売価を据え置きのままの企業が多いのではないでしょうか。

しかしながら、以前、1%の粗利改善で営業利益が10%増やすことができるか、という記事を書きましたが、逆にコストが上がっているのに売価を据え置いてしまえば、1%の粗利が減り10%の営業利益が減少することにつながる恐れがあります。

この記事では、粗利を構成する売価であるプライシング(値決め)の基本について考えてみたいと思います。


◆この記事を読んでほしい人

・インフレにどう対応したらよいか悩んでいる人
・価格をどのように決めればよいか不安に思っている方
・価格を見直したいと思っている方

◆この記事を読んでわかること

・インフレに対応した値決めの考え方
・自社にあったプライシングの方法
・新たに価格を決めるときの参考

中小企業が抑えておきたい値決めとは

ビジネスを始める上で、商品やサービスの価格を決めることはとても重要です。しかし、中小企業では大企業のように複雑な価格戦略を採用するのは難しいですよね。

そこで、今回は中小企業がすぐに使えるシンプルな値決めの方法をご紹介します。

■コストプラス法(コストを中心に考える)

まずは、コストプラス法です。

この方法は、商品の製造やサービスの提供にかかるコストに一定の利益を上乗せして価格を決めるものです。

例えば、商品を作るのに1000円かかり、そこに30%の利益を加えたい場合、価格は1300円となります。

そのため、多くの企業が実際に取り組んでいる方法の一つだと思います。

【手順イメージ】

  1. 商品やサービスのコストを計算する

  2. 利益率を決める(例:30%)

  3. コストに利益率を加算して価格を設定する

メリット:

  • シンプルで分かりやすい: コストに一定の利益を加えるだけなので、計算が容易です。

  • 利益の確保がしやすい: コストを確実にカバーし、設定した利益を確保できます。

デメリット:

  • 市場ニーズの無視: 競合他社の価格や顧客の価格に対する期待を考慮しないため、価格が市場のニーズと合わない可能性があります。

  • 競争力の欠如: 競合他社が同じ商品を低価格で提供している場合、価格競争で不利になる可能性があります。

成功事例:

  • 飲食店: 小規模な飲食店などでは、食材コストに一定のマージンを追加して価格を設定するコストプラス法がよく使われます。

  • 例えば、ラーメン店では、一杯のラーメンの材料費に人件費や光熱費を加え、そこに20%〜30%の利益を乗せて価格を設定することが一般的です。この方法により、収益性を確保しつつ、提供するラーメンの価格が顧客にとっても納得できるものとなります。

この方法はシンプルで理解しやすいですが、市場価格や競合他社の価格を考慮しないので、競争力が低くなる可能性があります。


■競合他社との価格を検討(競合他社を中心に考える)

次に、競合他社の価格を参考にする方法です。

市場での価格帯を調査し、自社の製品やサービスがその中でどの位置にあるかを判断します。
競合より少し安くすることで、顧客を引き寄せる戦略もありますし、逆に高品質をアピールして高めの価格を設定することも可能です。

【手順イメージ】

  1. 市場調査を行い、競合他社の価格を確認する

  2. 自社の製品やサービスの特徴や強みを考慮する

  3. 競合の価格に基づいて、自社の価格を調整する

メリット:

  • 市場での競争力: 競合他社の価格を参考にするため、市場での価格競争力を保ちやすくなります。

  • 顧客の安心感: 競合他社と同程度の価格であれば、顧客にとって「相場通り」と感じやすく、購入のハードルが下がります。

デメリット:

  • 利益の圧迫: 価格を競合に合わせるため、利益が圧迫されることがあります。

  • 差別化の難しさ: 価格を競合と同じにすることで、自社の製品やサービスの差別化が難しくなる場合があります。

成功事例:

  • コンビニエンスストア: コンビニ業界では、競争ベースの価格設定が一般的です。各社は、飲料やお菓子などの日用品をほぼ同じ価格で販売することで、顧客がどの店舗でも同じような価格で買い物ができるという安心感を提供しています。この戦略により、店舗間の競争は主に商品の品ぞろえやサービスの質に移り、価格以外の価値で差別化を図ることが可能になります。

この方法は、市場での競争力を保つのに役立ちますが、競合に左右されやすく、自社の利益を確保しにくい場合もあります。


■バリュープライシング(価値・需要を中心に考える)

最後に、顧客が感じる価値に基づいて価格を設定する方法です。

顧客が商品やサービスに対してどれだけの価値を見出すかを考え、それに見合った価格を設定します。
たとえば、他社にはない特別な機能を持つ商品であれば、それに応じた高い価格を設定することができます。

【手順イメージ】

  1. 顧客が商品やサービスに求める価値をリサーチする

  2. 自社の製品やサービスの独自の価値を強調する

  3. 顧客がその価値に対して支払っても良いと思う価格を設定する

メリット:

  • 利益の最大化: 顧客が感じる価値に基づいて価格を設定するため、利益を最大化しやすいです。

  • 差別化: 商品やサービスの独自性を強調できるため、競合との差別化が可能です。

デメリット:

  • 価格設定の難しさ: 顧客がどれだけの価値を感じるかを正確に判断するのが難しい場合があります。

  • 価格が高くなるリスク: 顧客が価値を理解していない場合、価格が高すぎると感じられてしまうことがあります。

成功事例:

  • AppleのiPhone: Appleは、iPhoneの価格設定に価値ベースの価格設定を採用しています。iPhoneは他社のスマートフォンに比べて高価ですが、独自のデザイン、使いやすさ、ブランド力などにより、顧客はその価格に見合う価値を感じています。この戦略により、Appleはスマートフォン市場で高い利益率を維持し続けています。

この方法は利益を最大化しやすい一方で、価値を正確に判断するのが難しい場合があります。

今一番必要なこと

上記の通り、プライシングの基本として3つの視点をご紹介しました。
恐らく、多くの企業がコストプライシングと競合他社の状況を把握して価格を決めていると思います。

しかしながら、今一番必要なことはバリュープライシングの視点から物事を考えていくプロセスにあるのではないでしょうか。

なぜなら、コストプラスは自社や取引先を、競合他社は他のライバルたちをみて価格を決めているのに対し、バリュープライシングは顧客を中心に考えている視点だからです。

顧客視点に立った値決めが重要

自社の商品やサービスが、どのくらいの価値があるのか?
どのくらいの価格で受け入れられたいのか?
この価格で受け入れてくれる顧客は誰なのか?

そのために、今すぐ取り組むべきこととは?

このような問いが、経営層だけでなく、現場からも上がってくる企業は間違いなく優良企業でしょう。
そして、そのギャップを認識できれば、自然と対策を考え実行に移していけるのです。

バリュープライシングは突き詰めていくと、自社の存在意義、価値観そのものに繋がっていきます。

つまり、プライシング(値決め)はその企業の哲学そのものなのです。

おわりに

プライシング(値決め)はビジネスの成功に直結する重要な要素です。

私は、大企業のような薄利多売を行うビジネスではない中小企業こそ、「バリュープライシング」から考えていくことが重要だと考えています。

一度、色々な制約を取り払い、まっさらな状態で自社の商品・サービスについて、バリュープライシングから考えてみてはいかがでしょうか。

その上で、コストプラス法、競争ベースの価格設定なども考慮し、競争力を維持しつつ利益を確保することができます。

自社の状況や市場環境、顧客の需要を把握し、適宜見直しを計り、キャッシュリッチ経営を実現していきましょう。

SYNCA合同会計事務所では、税に関する相談、経営相談、資金調達のご支援なども行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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