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速報!令和7年税制改正大綱案④法人税(中小企業・投資・リース会計など)の重要ポイントをわかりやすく解説

はじめに

 こんにちは。SYNCA合同会計事務所 税理士の細見です。
 前回の記事では、令和7年度の税制改正大綱をもとに、拠出年金制度、iDeCo(イデコ)の受け取り方に関連する退職所得控除の見直しについて解説しました。

 今回は、令和7年税制改正大綱案の法人税(中小企業・投資・リース会計など)の重要ポイントについて解説します。
※本記事の内容は2024年12月時点の情報に基づいています。

目次


◆この記事を読んでほしい人

・中小企業の経営者や経理担当者の方
・設備投資を検討している企業の担当者の方
・リース取引を行っている企業の担当者の方
・税制改正に関心のあるすべての方

◆この記事を読んでわかること

・中小企業に対する法人税の軽減税率の延長内容
・中小企業の設備投資を促進する税制の改正点
・中小企業の経営強化を支援する税制の見直し内容
・地域経済の活性化を目的とした税制の変更点
・企業版ふるさと納税の改正内容
・資源循環を促進する税制の創設内容
・新リース会計基準に対応した税制改正の内容
・リース譲渡に関する税制上の変更点


【減税・延長】中小企業者等に対する軽減税率の延長

中小企業の法人税軽減税率の特例が、2年間延長されます。

改正の概要

  • 年800万円以下の所得に対する法人税の軽減税率15%(本則税率19%)の適用期限が、2027年3月31日までに開始する事業年度まで延長されます。

  • ただし、所得金額が年10億円を超える事業年度については、軽減税率が17%に引き上げられます。グループ通算制度の適用を受けている法人は適用除外となります。

適用時期

 2025年4月1日以後に開始する事業年度から適用

実務のポイント

  • 適用対象となる中小法人に注意が必要です。中小法人とは、期末資本金の額が1億円以下の普通法人で、大法人による完全支配関係がある法人などを除きます。

  • 適用除外事業者とは、過去3年間の平均所得金額が15億円を超える法人などを指します。


【減税・延長】中小企業投資促進税制の延長

中小企業の設備投資を促進するための中小企業投資促進税制が、2年間延長されます。

改正の概要

  • 中小企業者等が、生産性向上を目的とした設備投資を行った場合に、特別償却や税額控除が適用されます。

  • 農地所有適格法人における「みなし大企業」の判定について、一定の承認会社が50%を超える株式を保有する場合、その株式が除外されます。

適用時期

2027年3月31日までの間に事業の用に供した資産に適用

実務のポイント

  • 対象となる法人や設備に注意が必要です。

  • 確定申告時に所定の明細書を添付する必要があります。

  • 対象となる設備は、機械装置(1台160万円以上)、ソフトウェア(合計70万円以上)、器具備品(1台30万円以上かつ合計120万円以上)などが該当します。

  • コインランドリー業(主要な事業であるものを除く)の用に供する機械装置で、その管理のおおむね全部を他の者に委託するものや、総トン数500トン以上の船舶で環境への負荷の低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出ていないものは対象外です。


【減税・延長】中小企業経営強化税制の見直し・延長

中小企業の経営強化を支援する中小企業経営強化税制が、一部見直しの上、2年間延長されます。

改正の概要

  • 売上高100億円超を目指す成長意欲の高い中小企業に対する拡充措置が創設されます。

  • 生産性向上設備(A類型)の経営力向上の指標が見直されます。

  • 収益力強化設備(B類型)の投資計画における年平均の投資利益率の見込みが5%以上から7%以上に引き上げられます。

  • 売上高100億円超を目指す企業には、建物も税制の対象となる拡充措置が講じられます。

  • デジタル化設備(C類型)は対象外となり、税制措置は2025年3月31日で終了します。

  • 暗号資産マイニング業の用に供する設備は対象外です。

適用時期

2027年3月31日まで

実務のポイント

  • 売上高100億円超を目指す中小企業向けの拡充措置は、一定の要件を満たす必要があります。具体的には、基準事業年度の売上高が10億円超90億円未満であること、売上高100億円超及び年平均10%以上の売上高成長率を目指す投資計画であることなどです。

  • 適用期間中は、「中小企業投資促進税制」との併用ができません。

  • 給与増加割合が2.5%未満の場合、建物及びその附属設備に関する特別償却や税額控除は適用されません。


【減税・延長】地域未来投資促進税制の見直し・延長

地域未来投資促進税制が、要件等を見直しの上、3年間延長されます。

改正の概要

  • 地域の特性を生かした事業を支援するため、設備投資に対する税制優遇措置が継続されます。

  • サプライチェーン類型が対象から除外されます。

  • 設備投資額が2,000万円以上から1億円以上に引き上げられます。

  • 上乗せ措置の要件が追加され、該当しない場合には機械装置等の特別償却の割合が35%に引き下げられます。

適用時期

2025年4月1日から2028年3月31日までの間に事業の用に供した資産に適用

実務のポイント

  • 各地方公共団体の基本計画の修正状況を確認する必要があります。

  • 上乗せ要件が業種指定されるため、各地方公共団体ごとに適用可否を判断する必要があります。

  • 設備投資額が1億円以上、かつ前事業年度の減価償却費の25%以上であることが要件となります。


【減税・延長】地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の延長

地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)が、3年間延長されます。

改正の概要

  • 地方への資金の流れを創出し、地方創生を促進するための制度です。

  • 寄附活用事業に係るチェック機能が強化され、活用状況の透明化が図られます。

  • 寄附者が特定の法人関係者のみである場合、法人名が公表されることがあります。

適用時期

2025年4月1日から2028年3月31日までに支出する特定寄附金に適用

実務のポイント

  • 認定地方公共団体から国への報告手続きが義務化されることで、寄附先が絞り込まれる可能性があります。

  • 寄附者である法人名が公表される場合があるため、注意が必要です。


【減税・新設】高度な資源循環投資促進税制の創設

高度な資源循環投資促進税制が創設されます。

改正の概要

  • 再資源化事業等高度化法の認定を受けた法人が、一定の設備を取得した場合に、特別償却が適用されます。

  • 脱炭素社会の実現に向け、資源循環を促進するための措置です。

適用時期

再資源化事業等高度化法の施行日から2028年3月31日まで

実務のポイント

  • 再資源化事業等高度化法の施行日や、計画の認定要件、申請方法を確認する必要があります。

  • 他の投資促進税制との併用可否を確認する必要があります。

  • 対象となる設備は、機械装置が1台2,000万円以上、器具備品が1台200万円以上です。


【新設】新リース会計基準に関連する税制改正

新リース会計基準に対応するための税制改正が行われます。

改正の概要

  • 税務上のリース取引の取扱いは、従来と大きな変更はありません。

  • 新リース会計基準を適用する場合には、税法上の処理との不一致について、税務申告書で調整が必要になります。

適用時期

2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用(早期適用可能)

実務のポイント

  • 新リース会計基準では、従来のオペレーティング・リース取引についても「使用権資産」と「リース負債」が計上されます。

  • 法人税法上は、オペレーティング・リース取引について従来通り「賃貸借処理」となるため、申告調整が必要となります。

  • 会計上の「使用権資産」は減価償却費により費用配分し、「リース負債」は利息相当額を利息法により配分しますが、税法上は支払賃借料を費用計上するため、申告調整が必要になります。


【増税・廃止】リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例の廃止

リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例が廃止されます。

改正の概要

  • リース資産の引渡し時に譲渡損益を一括で計上することとなります。

  • 延払基準による処理が税務上も廃止されます。

適用時期

2025年4月1日以後に終了する事業年度から適用

実務のポイント

  • 延払基準を適用している法人は、課税が生じる時期が早まることに注意が必要です。

  • 主にリース会社に影響がある改正です。

  • 経過措置として、2025年4月1日前にリース譲渡を行った法人は、2027年3月31日以前に開始する事業年度については、一定の延払基準の方法で収益を計算することができます。また、延払基準をやめた場合の繰延リース利益額は5年均等で収益計上されます。


終わりに

 令和7年度税制改正大綱案は、中小企業支援、投資促進など、多岐にわたる改正を含んでいます。各改正が企業や個人に与える影響を理解し、適切な対応策を検討することが重要です。

 SYNCA合同会計事務所では、税制改正に関するご相談や、確定申告のサポートを提供しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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